桜井真樹子

桜井真樹子(声明・白拍子)新作能も手掛けています。ここでは、作品制作にあたっての取り組…

桜井真樹子

桜井真樹子(声明・白拍子)新作能も手掛けています。ここでは、作品制作にあたっての取り組みや思うこと、いろいろ書いていきます。どうぞよろしくお願いします。 https://www.sakurai-makiko.com

最近の記事

ここに舞い降りしものたち~高麗探訪~

2024年3月20日、春分の日にドラムのHIKO、モデュラーの濁朗と私の3人で「最後から二番目の偽り」というタイトルのライブに誘われた。この3人は「長髄彦」で一緒になったメンバーである。我々の持ち時間は30分。 長髄彦の公演終了の打ち上げで「最後から二番目の偽り」はフィリップ・K・デイック のSF小説の「最後から二番目の真実」から来ており、これは映画の「ブレードランナー」 の元になったんだと濁朗が語る。するとHIKOが「今の東京は東京大空襲で焼け野原になったその時の惨状が東

    • 長髄彦とパレスチナ

      日本書紀「神日本磐余彦天皇(かむやまといはれびこのすめらみこと)(神武天皇)」によれば、「饒速日(にぎはやひ)のいるところに行って都を定めよう」と決めた。 和歌山から奈良を攻めた神武たちの敵は国見丘(伊勢)にいた八十梟師(やそたける)。磯城邑(しきのむら、三輪山麓西部)にいた磯城八十梟師、葛城邑(かつらぎむら、葛城山)にいた赤銅(あかがね)八十梟師。神武たちは、この三つのムラの八十羽のフクロウ。彼らを殺戮し征服した。 そして四番目が長髄彦だ。神武の兄、五瀬命(いつせのみこと

      • 2/11公演いよいよ迫る!ハイパー能「長髄彦(ながすねひこ)」~悲しき建国記念日~

        奈良の生駒を拠点として国を治め、神武最強の敵であった長髄彦(ながすねひこ)は、饒速日(にぎはやひ)の裏切りにより倒された。奈良に住む人々を倒し、「樫原に宮殿を作り天下を治めた」と神武が宣言した日、三月の辛酉(かのとり)朔(ついたち)の丁卯(ひのとう)を日本の建国として、明治6(1873)年7月20日太政官符第258号により紀元節を2月11日と決めた。その日付を踏襲し昭和41(1966)年に名称を改め「建国記念日」となった。なぜ、神武は奈良の人々を倒して国家を建国して良いのか?

        • ニューヨークの老人たち

          創作能「マンハッタン翁」を毎年新年に上演している。来年1月の公演前に、この作品について書こうと思う。  1993年アジア文化交流基金の奨学金を得て、ニューヨークに滞在し、その音楽シーンを訪ねた。ニューヨークの街並みを歩き、カフェに入り…。その中で気になる人がいる。それはこの街で齢(よわい)を重ねた人。ニューヨークの風景に彼らがぴったりとこない。日本で美しい人、というと私の風景の記憶では田畑を耕すおじいさん、おばあさん。日本の風景と彼らはしっくりと来るのだ。しっくり来るという

        ここに舞い降りしものたち~高麗探訪~

          ガザとイスラエルの一日も早い停戦を望みます ~イスラエル・パレスチナに住む子どもたちの未来に~

           2020年、2021年と上演してきたハイパー能「投石」を2年ぶりに再演いたします。  この物語は、イスラエルの少年が「エラの丘」という遺跡で、パレスチナの少年と出会います。しかし、パレスチナの少年が亡霊であることに、イスラエルの少年も、そしてパレスチナの少年自身でさえわからずに、仲良しになって遊びます。  私はイスラエルに留学して、パレスチナで合気道を教えていました。イスラエル、またはパレスチナに行けば、たとえばエルサレムの旧市街を歩いて5分もしないところに、パレスチナ

          ガザとイスラエルの一日も早い停戦を望みます ~イスラエル・パレスチナに住む子どもたちの未来に~

          「鎌倉時代の鎌倉」の秋の宴を、完全再現いたします。

          10/13に、武士の祝膳である武家膳料理と、武士の前で歌舞(うたまい)を演じる女性の芸能者,白拍子(しらびょうし)をご覧いただき、みなさまをおもてなしの一旦を担いたく思います。  武士は、文字通り戦いの末、朝廷から権力を譲り受け、武家社会を築いてゆきました。戦闘に備える者たちの日常は、武芸武術に励み、質素な衣食住生活を自らに課すものでした。しかし、いざ来賓をもてなすとなれば、通常では使わない食材を用い、また歌舞音曲を奏し、どのように振る舞うべきかも心得ていました。  同じく、

          「鎌倉時代の鎌倉」の秋の宴を、完全再現いたします。

          9/30にむけたリハーサル!

          ガムランの森に潜む人、ガムランの畑で音を摘む人。「月影之川」のリハーサル。ガムランは、村の人々の調和を図ります。紡がれる音と声、そして舞の調和をリハーサル中です。 白拍子+ジャワガムラン 「月影之川~Benewi aweayang wulan」 ■月影之川(つきかげのかわ)組曲 第一楽章 古ジャワ語 “Benawi awewayang wulan” ブナウィ アウェワヤン ウラン 第二楽章 古ジャワ(カウィ)語 その2 第三楽章 雅楽風ガムラン(龍笛・月琴+チブロン・ゴング

          9/30にむけたリハーサル!

          ムーンリバーをガムランで演奏すること

          ムーンリバーの歌詞に "Oh, dream maker, you heart breaker"という部分があります。友だちは僕たちの夢を作ってくれる、そして僕の心を切り裂いてゆく。「友だちでなければ、傷つかないのに、友だちでなければ夢なんか見ないのに。」それだけ自分の人生を深くしてくれる相手だということですね。日本古語に訳すときは「夢の流れは絶えずして、心はきみに流れゆく」としました。ちょっと雰囲気が違うかもしれませんが、日本の古典の世界では、「夢を与えてくれる人こそ人生で大

          ムーンリバーをガムランで演奏すること

          美しく、尊きもの

          「ムーンリバー」、それはミシシッピー川を舞台としたハックルベリー・フィンとジムの冒険を歌ったものです。父親からの虐待とか、(犯罪ではないのに)奴隷の脱走、沈没船に乗り込んで金目のものを探そうととか、詐欺師と一緒に一儲け、とか。今の人たちには、共感するものもない下世話な物語かもしれない。それでもハックルベリー・フィンが見つけた美しいもの、絶対に失ってはならないもの、それが「友情」。その情緒に感銘を受けるアメリカの時代もあった。そして貧しい日本にもあったであろう。何を歌っているの

          美しく、尊きもの

          月の光、月の影

          ガムランは、青銅の楽器で作られたゴングの形をさまざまに変形させて、音色や音高を作り、楽曲を編み出して行きます。(周波数の)低い音は大地や空気など,物質を揺るがすように、(周波数の)高い音は、光が散ったり降り注ぐように奏でられます。月の光が川に揺らぐ様子、月の光が夜空から降り注ぐように、星が月の周りをきらめくように、夜にきらめき、ゆらぐ光をさまを表してくれます。その中で、月の光をほめ、私たちの心にも月影が映し出されることを祈ります。 桜井真樹子

          月の光、月の影

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その5)

          第五楽章 ジャワ語 “Kali lelayan bulan” カリ ルラヤン ブラン これでジャワ語の「ムーンリバー」です。  ジャワガムランのテンポは、曲によって2倍になったり1.5倍になったり1/2(半分)になったりします。テンポを握っているのは、太鼓奏者です。このシステムを採用して、1曲の中で、2倍の速さになる小節を作ったり、半分のテンポにしたりしています。そのたびに太鼓のパターンが変わるのがわかるでしょう。テンポが遅くなれるほど、太鼓の手(パターン)は細かくなりま

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その5)

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その4)

          第三楽章 雅楽風ガムラン(龍笛・月琴+チブロン・ゴング)  「ムーンリバー」だから月琴も入れてよとランバンサリの有志からのリクエストで、龍笛の旋律に月琴が楽琵琶のように主要な音を押さえて演奏します。  雅楽の鞨鼓の「来」(トレモロ奏法)と「正」(一打)をチブロン(ciblon)の太鼓で、鉦鼓(チチンと鳴る楽器)をクンプル(Kempul)で、終始音を決める親分の楽太鼓をゴング(Gong)で演奏します。  古代のベトナム宮廷音楽みたいというか、15世紀末にインドネシアに渡来

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その4)

          詩を閉じ込められる檻はない

           「カラマーゾフの兄弟」を3ヶ月かけて読み終え、その長編の深く、重く、暗く、人間の心をえぐる描写に「ロシア文学鬱」にかかった直後に、詩の本が届いた。  「詩の檻はない」。アフガニスタン政府は、検閲を強化し詩の表現活動を制限したことに抗議をする詩集を出そうとアフガニスタン出身、オランダ在住の詩人、ソマイヤ・ラミッシュは、世界中の詩人に呼びかけた。そこに100人以上の詩人たちが、詩の禁止と検閲に対する抗議の詩を集まった。日本語訳の「詩の檻はない」は、36人の日本人、20人のその

          詩を閉じ込められる檻はない

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その3)

          ガムラン組曲「月影之川」Wuilgeng (ウィルジュン) ジャワ・ガムランの古典曲。地上の平和を願う曲です。 祈祷文  2022年は谷中の天王寺というお寺の講堂で演奏しました。本尊は地蔵菩薩。「ムーンリバー」は真の友情について、マーク・トウェインが書いた物語「ハックルベリー・フィンの冒険」から生まれた歌です。そこで、私たちの友情のために祈ります。 第一楽章 古ジャワ語 “Benawi awewayang wulan” ブナウィ アウェワヤン ウラン これで「ムーン

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その3)

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その2)

           2022年に入って、カール・ストーンと即興をすることになり、では、10世紀の古英語で「ムーンリバー」をやってみようということになり、東京インプロカーニバルで、5月21日に演奏しました。  さらに、「白拍子とガムラン」という構図で「ムーンリバー」をやってみようと思い、ジャワの影絵芝居の人形遣いのローフィット・イブラヒム氏に古ジャワ(カウィ)語、ジャワ語、インドネシア語にそれぞれ、「ムーンリバー」を訳してもらいました。  ジャワの影絵芝居「ワヤン・クリ」では、神様はもちろん

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その2)

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その1)

           「ムーンリバー」を日本語に訳すと「月影之川」。水に映った月、これを日本語で特別に月影と呼びます。「ムーンリバー」に着目した点は、これまでも随所で述べてきました。  2020年4月7日にコロナ感染症の対策として緊急事態宣言が出されました。通勤、通学も一旦中断されました。そして合気道の道場も閉鎖されました。そこで私は、毎朝、近所の綾瀬川をランニングすることにしました。ホール、ライブハウスで行われる音楽、演劇の公演もほぼ完全に中止になりました。当分、音楽活動はできないのではない

          🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その1)