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多々反省あれど後悔なし

元の会社の同僚が、脱サラして始めて19年続けてきたお店を
たたんだ。
グルメなのは知ってたけど、
こんなに料理上手だったのは知らなかった……と
びっくりしたのも束の間。
美味しい料理と日本酒の品揃え、そして何より彼女の人柄で
大繁盛だった。

女将のトモコは、グルメでもなく、料理もうまくない私と同い年。
歌舞伎や宝塚関係のお客さんも多く、
カウンターの向こうに華やかな方々が座っていてビックリ!
なんていうこともあった。
ママの友達にだってこういうすごい人はいるのよ
と自慢できる友人でもある。(他にもすごい友達は多いけど)

とはいえ、20年、女一人で一等地でお店をまわしていくのは
決して楽ではなかっただろう。
40代でお店を開いた彼女も、60を越えた。
お店だけでなく、いろいろなことを通り抜けてきた。
お互いに。

その彼女が、来月でお店を閉じる……と連絡をくれた。
あわてて予約をとろうとするも、すでに満席。
子ども達とお店に顔だけ出して、花束を渡して、お礼を言った。
ほんとに、御世話になりました。

そして、お店が一段落した昨日、二人でご飯を食べた。
全部片づけて、一段落。
お店をやっている間、忙しくて会いに行けなかった遠方の友人を
訪ねたりしているのだという。

もう、やらないの?
と言ったら、やらない、と。
やりきった感いっぱいだから、と。
20年前、店を始めようと思ったときは、無謀だったかもしれない。
でも、最後の1ヶ月、本当にいろんな人が訪ねてきてくれて、
宝塚のフィナーレのように別れを惜しんでもらって、
自分のやってきたこと、全く後悔はないなって思った、という。
やりきった。と。
反省すべきことはたくさんあるのよ。
でも、後悔は全くない。

反省することは多くても、後悔はない。
反省と後悔は違う。
トモコは何度かそういった。

確かに……。
反省すべきことは日々ある。
その日を省みて、これとは反対の(あるいは違う)ことをした方がよかったかなと考える。
反省したら、次につなげる。
振り返りはしても、前には進み続ける。
直進できない時があったり、立ち止まることはあっても、
前を向き、進めそうなら、進む。半歩でも。

ああしなければ良かった、あれをしなければ、こんなことには
ならなかったのに、と現状を過去の過ちにかこつけて
嘆くのが後悔なら、私も後悔はないかも。
トモコも私も、現実に追われて
後悔している暇がなかったというところもあるかもしれない。
でも、それ以上に、前を向き続けてきたことへの
達成感が大きいのかもしれないなぁと、トモコの話を聞きながら考えた。

トモコは、他人と自分を比べて、人をうらやむ人は、
後悔しやすいのでは、と思っているようだった。
言い得て妙。
私は私。
そう割切ることが、後悔なき人生の第一歩かも?

彼女の話を聞きながら、死ぬときこう言いたいと思っている文を思い出した

I have fought the good fight, I have finished the race
最後まで戦い通し、ゴールにたどり着いた。

どんな戦いだったか、どんな手柄を立てたか、
どんなスピードだったかではなく、
手を抜かずに、途中で逃げずに、
最後まで戦い通し、ゴールのテープにたどり着く。
走って颯爽とでなくても、いいと思う。這ってでも。
自分のペースで、自分が課されたそして自分が選んだ道を最後まで。

反省多々あれど、後悔なし。
後半戦も、そうありたいもの。


得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)