へんしゅうこわい【持ち込みこばなし】

こんにちは、花巻です。

先日、リクエストを頂いたので持ち込みの話をつらつらと書こうと思います。

みなさまは「持ち込み」と呼ばれるものを知っていますか?
マンガ家志望者が読み切りのマンガを描いて、出版社に持って行って、編集者さんに見て批評してもらう行為のことです。
作品が良ければ、あるいは一緒に仕事をしたいと思ってもらえれば、「次も連絡ください」と編集者さんから名刺を貰えます。
マンガの賞に応募するのとは異なり、編集者さんはその場で読んで、その時に思ったことを話すので、
絶対に評価してもらえる、というのが利点です。

「持ち込みって怖い」「キツいことを言われる」というマイナスのイメージを持ってる方が多いかと思いますが、
実際、キツいです。

私の経験上、余程の天才でない限りは持ち込みで褒められることは少ないです。
10箇所ダメ出しされて1箇所褒められたらそれはめちゃくちゃ良い方です。
きっと、出版社や編集者さんによっても異なってくるとは思いますが、基本は「ここを直した方がいい」というような指摘が多いです。
ただ、これを聞いて持ち込みに対してネガティブなイメージを持って欲しくはないのです。

編集者さんがマンガに対して批評するのは、それが仕事だからです。
決して中傷したいとか意地悪したいとか、そういうことではなくて、面白いマンガをマンガ家と一緒に作るのが編集者さんの仕事だからです。

近年の傾向として、「マンガに編集者ってい必要?」というような話題が度々上がりますが、
私個人の答えは「いなくてもマンガは生まれるけど、売れるマンガを生み出すには必要」です。
SNSで話題になり書籍化など展開していくものも増え、1人でプロになられる方もいますが、
商業化するとなると、時にはブレーキを、時にはアクセルを踏んでくれる編集さんはやはり必要になってくると思います。

さて、話を持ち込みに戻します。
私が1年前に持ち込みに行った、某大手週刊誌の編集部のお話です。

持ち込みは行く前に電話でアポをとり、当日出版社まで完成原稿を持っていくのが基本です。
出版社は割と近くにあるパターンが多いので、私は持ち込みに行く時は1日に何社か回ることがあります。
その日も、2社回る予定でした。

1社目は名刺は貰えなかったものの、1時間以上話をしてくださって、私の作品の足りない部分はどこか、逆に読者に刺さるポイントはどこかを丁寧にアドバイスして頂きました。
雑誌の特色がこうだから、この作品はうちの雑誌には合わないかもしれないけど、この出版社のこの雑誌だったらあうかも、などたくさんタメになる話を聞かせていただいたのですが、
私はその後にもう1社回る予定で時間が迫っていたので、「すみません、実はこの後ももう1社行く予定で…」と正直に言ったところ
「そうだよね、ごめんね!〇〇行くの?がんばって!」
と、背中を押してくれました。
私は申し訳なく思いながらもその場を出ましたが、編集さんは私がフロアから出るまで見送ってくださいました。

次の出版社には時間通り着きました。
受付を済ませ指定の場所で待っていました。
が、編集さんは一向に来ません。
いつもだったらすぐ来て下さるか、待ってても3分程度です。
5分経ち、10分経ち、15分経ち…
「あれ、私時間間違えたかな?」と手帳を確認しましたが、やっぱり時間はあっていました。
30分ほど経ったところでようやく編集さんが来ました。
「すみません。早速原稿見せてください。」
と、席につくやいなや机にあった私の原稿に目を通し始めました。

ひと通り読み終えた編集さんは口を開いたかと思うと
マシンガンの様にダメ出しが飛んできました。
どこで息継ぎをしているのか分からないほど矢継ぎ早に言われていたので、メモを取るのに必死でした。
「…てことなんですけど、質問ありますか?」
と聞かれ、とっさに私は用意してた質問とメモの内容を見返して黙ってしまいました。
「じゃ、ないならこれで、ありがとうございました。」
と言われ、編集さんはその場を去っていきました。

待った時間は30分、話した時間は5分でした。
私はこの編集さんに対して、怖いなどは思っていませんが、未だに嵐みたいな人だったなと思います。
この件があって以来、この編集部に対して若干の苦手意識がうまれました。

と、ここまでお話したように正直、編集部によっても、担当の人によっても、だいぶ違うことが分かると思います。
指摘される部分も共通のところもあれば全く違う意見のこともあります。
どこの編集部が良い悪いとかは全くないと思いますが、その人に合う合わないは大いにあると思います。
どの意見を取り入れるかは自分次第なのだな、と改めて思いました。

私はある編集さんにこんなことを言われたことがあります。
「花巻さんは、素直すぎる。編集の言葉を鵜呑みにしすぎだ。もっと自分勝手に作品を描いてほしい。」
私は今まで、編集さんに言われた意見を正しい指摘だと思って、それに従ってマンガを描いていました。そうしていけば、読者に刺さるマンガになると思っていたからです。
しかし、その方は「自分勝手に描かれたマンガをうまく読者と擦り合わせるのが編集の仕事だ」と仰っていました。
私は最初から型に収まるようにしようとしていたのが良くなかったのか、とその時気付かされました。
そういう気づきを与えてくれる存在が新人にとっての「編集さん」なんだと思います。

こんな長々と書いて最終的に「編集さんは怖くない」というのは盛大なタイトル詐欺も甚だしいとは思いますし、
「編集って怖いんだ、持ち込み行くのやめよう」と1人でもなってくれたら、
私はライバルが減って嬉しいので最後にもう一度言わせてください。

編集はこわい!!

あーあ
へんしゅうこわい。


おあとがよろしいようで。

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