見出し画像

わたし、息を吹き返す

月曜日。この街へ引っ越してからはじめて海へ行った。

空は雲が多かったが澄んでいて、気持ちの良い朝だった。海まで歩く途中、すれ違う人々の人生を想った。

とんびがピィヒョロロと軽やかに鳴くのが聞こえたら、目の前に海が広がった。海。風は優しく、もう冷たくない。春。

遠く水平線と、すぐそこの波打ち際をぼんやり交互に見つめて、家から持ってきた白湯を飲んだ。

瀕死だったこころが、少し息を吹き返した感覚があった。

これこれ。この調子。こうやって少しずつ、わたしがわたしであることを思い出していくんだ。希望だけもって、自分を信じて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?