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【新店舗めぐり#2】b8ta 新宿、NEW STAND TOKYO。オフライン店舗のメディア化を考えてみる

前回記事で、表参道の SKINCARE LOUNGE BY ORBIS での、美容部員さんの熱量で購買してしまった体験について紹介しました。今回は、同じ日に行ったb8ta(ベータ)新宿マルイ店と、六本木のNEW STAND TOKYOについてです。

直営コンセプトストアであるORBISに比べて、この2店舗はセレクトショップの業態である小売店。同じ業態でも、両者は全く方向性が違いました。

この方向性を「店舗はメディアである」という観点で見てみると面白く、b8taはB2B収益重視、NEW STAND TOKYOは編集力によるファン獲得重視という印象。ニューリテールの波が来るにつれて、店舗のメディア化が加速、さらに紙ではなくWEBメディアレベルの高速運営が求められていきそうです。以下、勝手に店舗をメディアと捉えた場合の両者の課題あるいは強みについて考えてみたいと思います。

b8ta(ベータ):集客力を落とさないための最低限の顧客体験は必要

ORBISの表参道のあと、8月1日オープンのb8ta 新宿マルイ店に行きました。マルイのアップルストアの隣にあります。結構賑わっていました。

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もともと本国ではガジェット系アイテムが中心。有楽町にももう1店舗あり、そちらは比較的ガジェット多めらしいのですが、新宿マルイ店は客層も加味してコスメやステーショナリーも置いてありました。

商品が置いてある場所が区画に分かれており、メーカーは月額制で場所を購入し出店できます。展示や在庫管理、そして接客は全てb8ta側で一括してもらえ、さらに顧客行動などのマーケティングデータをフィードバックしてもらえるようです。立ち上げたばかりの新商品(特にD2Cブランド)向けで、テストフェーズ用のポップアップストアというイメージ。

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このRaaS(リテール・アズ・ア・サービス)というビジネスモデル自体は非常に面白く、新しいなと思います。また店員さんの人数も多く、様々なカテゴリの商品もカバーし、接客も丁寧。ただいち消費者としては、品揃えにあまりワクワクしなかったというのが感想です。次回ふらっと立ち寄るか、というとスルーしてしまいそう。

プレミアム枠と運用枠の棲み分けが重要になりそう

B2Bでの出店料モデルである以上、買いたい <<<< 買ってほしい という段階のテストマーケティング商品が多いのだと思います。B2Bからの収益重視である以上、実際に購買に繋がりにくくB2C収益が伸びないことは折込済みなのでしょう。ただし、B2C観点での魅力がなくなると集客力が落ちてくるので、最低限の商品セレクトは必要だなと思います。

b8taに出店したいメーカーの開拓を急ぎ、出品ニーズを増やしてセレクトに磨きをかけるか。あるいは出店料をディスカウントしてでも、集客の目玉になるようなプレミアムブランド(出店により、b8ta自体のブランド価値も上がるようなもの)を獲りにいくか。

(無理やり)WEBメディアの広告枠的な考え方をしてみると、
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・目玉となるブランド向けのプレミアムブースはカスタマイズでき(タイアップに近い)、月額モデルで長期契約を狙う
・その他の区画は出店料を入札モデルとし(運用型に近い)、最新の来店データに沿ってセレクトを高速で変えていく
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という棲み分けになっていくのかもしれません。

NEW STAND TOKYO:エッジのある編集力でのブランド構築に期待

この後、六本木ミッドタウンの向かい側(乃木坂が最寄り)にできたNEW STAND TOKYOへ。こちらもニューヨーク発で、海外進出の1店舗目とのこと。東北新社とWhateverが運営。

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WEBニュースでも取り上げられているように、一番の目玉はフェムテックアイテムの品揃えが多いこと。確かに店舗の半分くらいのスペースがフェムテック関連商品でした(👆の写真のエリアがほぼそう)。オフライン店舗でここまでの商品数とバリエーションが用意できているのは珍しく、強みになりそうです。

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b8taと比べて、デジタル・テクノロジー全面押しではなく、むしろ各商品に対して、1点1点、紙のPOPや関連書籍などのディスプレイでブランドの周辺情報を伝えているところが良かったです。特定のジャンルの商品ではないけれど、ある特集テーマに基づいてキュレーションされており、雑誌的な編集力を感じました。

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📱アメリカでは、専用アプリでリテール連動のメディア化しているらしい

雑誌っぽくて良いな〜✨と思っていて調べていると、アメリカでは専用アプリと購買データが連動していて、会員限定クーポン(ここまではよくある小売)、商品の予約・店頭ピックアップサービス、ニュースキュレーション、プレイリストなどのライフスタイルコンテンツを提供しているらしいです。

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(↑ブランドサイトより)
アプリのUXも面白く、スワイプ動作でコンテンツをサクサクチェックしてお気に入り登録などができるみたいです。まだ調べきれていないですが、アプリをインストールすると、Bluetoothの使用許可を求められたのでBeaconとかも使ってるのではないでしょうか。

ちょっと古いですが、このHEAPSの記事でアプリについて詳しく紹介があり、まさに店舗(リテール)のメディア化というテーマで書かれています。

アプリを使って商品を購入したり、毎日届くニュースやプレイリストをクリックるする度にポイントが貯まり、それが溜まれば貯まるほど、ニュー・スタンドにてお得な買い物ができるという仕組みになっている。(HEAPSより)

日本ではまだアプリとの連動はないみたい(たぶん)ですが、私が店舗でテクノロジーと違った新規性や編集力を感じた背景はまさに下記の部分だったのだなと思いました。Instagramのフィードに出てきそうな商品セレクトがリアル店舗でも感じられるというコンセプトがNEW STANDの強いブランド価値になり、定期的に寄りたくなりそうです。

なんだか商品名だけ聞いていると一貫性がないように思えるが、どの商品も「インスタでいま話題のもの、話題のテイストである」という点で共通する。つまりこのキオスク、情報感度の高い層にとっては「これ昨日フィードに出てきたやつ。おすすめに出てきてた〜」なモノがいち早く揃っている店、なのである。(HEAPSより)

まとめ:オフライン店舗のメディア化の鍵は、オペレーションかも?🤔

店舗でも出店料によるB2Bを中心としたモデルであるb8taと、フィードのトレンド感覚をオフラインに落とし込むNEW STAND。小売(特にセレクト)の進化形は、オフラインでもWEBメディアと同じレベルのスピード感と柔軟性を持つことでは、と思いました。

ついつい小売革命やニューリテールというと、今回紹介したような最新テクノロジーや店舗での目新しい顧客体験など表面的な部分に目が向きがちですが・・・。オフライン店舗のWEBメディア化という方向性だと、実は差別化に重要なのはスピード感・柔軟性を実現するオペレーション・ロジスティクス部分かもしれません。ファストファッションのZARAの物流モデル(週2回のスピード納品)に近い考え方かも。今後は、そのあたり掘り下げてみたいです。

おまけ
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同じくセレクトショップである小売の事例だと、アメリカのフットロッカー(Foot Locker)が参考になりそうです。NIKEなどのスニーカーブランドをセレクトしている小売店舗。ショッピングモールでのテナント店舗から「パワーストア」という自社運営の店舗に軸足を移しているとのこと。ローカルなスニーカー好きのコミュニティの場になったり、新商品のポップアップスペース的な役割を果たしているそうです。「パワーストア」という名前がナイスですよね👏

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このテーマを深堀りするのであれば、下記の本がよさそう。どちらかというと、コンセプト・哲学のある店舗作りみたいなケース紹介が多かった覚えがあります。もっかい読み直してみよう・・・










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