ダメなんかじゃない。

「こんばんは!チョコ、貰いに来ました!」
夜遅くにやって来て、第一声がこの図々しい一言。
しかも、制服姿。

「君の分のチョコなんて用意してません。
もう遅いんだからお子様は帰りなさい」
そう言ったらほっぺたを膨らませて、
明らかには不満がある顔をする。
図体でかいのにこういう
可愛い仕草が似合うから腹が立つ。
腹が立つけど可愛く見えるのは
惚れた弱みなのかもしれない。

彼は膨らませていたほっぺたを
しゅうっと萎ませて、
「え~、てっきりお姉さんから貰えると思って
女の子たちのチョコみんな断っちゃったのに…」
何を言っているんだろう。
そんなこと言われたら期待してしまう。
年の離れた私でも少しは望みがあるかもって
思ってしまうじゃない。

「俺、0個は嫌なんでくれますよね?もちろん」
さっきまでの図体のでかいけど、
子犬みたいに可愛い彼は何処へやら。
両手を握られ、顔を覗き込まれた。
もう逃げられない。

そして
追い討ちをかけるようにこの一言。
「ねえ、年下はダメですか?」
だめだ、降参。
彼には勝てない。
白旗を挙げたら、
あとは彼に堕ちるだけ。

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