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「街コンって死語ですよね」── 婚活パーティープラットフォーム社長が見つけた”若者の本音”の可能性

株式会社オミカレで日本最大級の婚活パーティープラットフォーム「オミカレ」を運営する下永田真人社長に、「経営者の相棒」プログラムに参画した5日間を振り返ってお話を伺いました。
下永田さんは、株式会社リクルートでの求人広告事業、株式会社ミスミでのEC事業のDX推進、株式会社エナジードでの取締役としての経験を経て、2024年2月より現職に就任。若年層をターゲットにした事業展開を見据える中で、「経営者の相棒」に参画いただきました。
今回下永田さんに「相棒」として帯同したのは、慶應義塾大学法学部政治学科に在籍する井上颯(いのうえ たつき)くん。たまたま下永田さんも慶應義塾大学法学部政治学科のOBで、同じバックグラウンドを持つふたりがこのプログラムを通して5日間を共に過ごすことになりました。

プログラム初日朝の下永田さんと、帯同した井上くん。共に過ごす5日間のスケジュールを確認するところから初日がスタート

「経営者の相棒」に参画した理由

――お忙しい中、なぜ参画を決めてくださったのでしょうか?
若者との接点を持ちたいという思いが強かったんです。当社は中途のプロフェッショナル人材が中心で、最年少でも28歳。「オミカレ」のコアユーザーは30-40代が中心なんですが、20代のユーザーも増えているんですね。でも20代の若い人たちの出会いに対する感覚がわからない。そこに課題意識がありました。
私自身、学生時代に議員インターンや、前職である株式会社リクルートでのインターンなど複数のインターンシップを経験していて、とても楽しかった思い出があります。ある会社では神戸で3日間泊まり込みで、夜中まで議論に熱中したことを覚えています。そういう場を提供する側になれることにも魅力を感じました。
――普段から若者の声は聞かれているのではないですか?
確かに普段からユーザーヒアリングはしていますが、それはすでにサービスを利用している人たちの声なんです。本当は、私たちのターゲットでありながら、サービスの存在を知らない人たち、あるいは「街コン」などの婚活イベントに対して嫌悪感を持っているような人たちの声も聞きたかった。その生の声を聞くことで、私たちの思い込みや、普段認識していながらもオブラートに包んでしまっているような本質的な課題が明るみになるんじゃないかと考えたんです。

課題設定の背景

――今回井上くんに提示いただいた課題の紹介をお願いします。
「20代(22-27歳くらい)をメインターゲットとし、出会いとしてのマッチングイベントの認知向上、参加を促すマーケティングプランを提案せよ」というお題で、具体的に「誰に」「何を」「どのように」伝えるのかという点まで踏み込んでほしいとリクエストしました。
――なぜこのような課題提示をされたのでしょうか?
実は、これは当社の喫緊の経営課題とリンクしています。私たちのサービスは、リアルな出会いの場を提供することが価値の核です。ただ、その価値を若い世代にどう伝えるべきかという点は、社内でもあまり取り組めていませんでした。
「オミカレ」に掲載されているイベントの具体的な数字を見ると、20代の方が参加できるイベント数は、30代の方向けのイベントの1/3程度しかないんです。一方で、20代の新規会員が右肩上がりに伸びているのも事実なんですね。若い世代の出会い方としてマッチングアプリもかなり一般化してきましたが、アプリ利用と併用して「オミカレ」に登録する20代のカスタマーが増えています。それなのに参加できるイベントが少ないという課題がある。そこを何とかしたいという思いがありました。若い世代が使えないサービスに未来はありませんから。

実際受け入れをしてみて印象に残ったこと

――実際に受け入れてみていかがでしたか?
今回受け入れをさせてもらった井上くんの印象深かった点は、その行動力です。プログラム3日目の僕との壁打ちの時間に、その時点での課題の方向性を持ってきてくれたんですね。ネットで調べたりしてくれて、若者の声はある程度きれいにまとまっていました。でもこの内容なら僕たちでも時間さえあれば調べられる。もっと若い人たちのインサイトをめちゃくちゃ考え抜いてほしい、課題の深堀りに時間をかけてほしいというフィードバックをしました。その後の爆上がりがすごかったです(笑)。具体的なプロセスなどを指示したわけではないのですが、自分のゼミの友達や他のインターン先の先輩にまでインタビューを実施してくれました。その一次情報へのこだわりが、最終的なアウトプットの質を大きく高めることになり「あーそういう観点か!」という気づきをもらうことができました。
また、彼の「いい意味での強い欲」も印象的でした。話し方は穏やかで優等生的な印象なのですが、フィードバックの求め方や質問の仕方に、「こういうところを目指したい」という強い意志を感じました。そういう姿勢があったからこそ、こちらも真剣にアドバイスしたいと思えました。

井上くんが最終日に発表した課題に対するアウトプットの資料。なんとスライド60ページ分に及ぶ力作

――社内の反応はいかがでしたか?
最終日に全社集会で発表してもらったのですが、社員からも「自分たちにない視点をもらえた」という声が多く上がりました。特に印象的だったのは最終発表の中で、井上くんや彼の周囲の若者たちが実際にマッチングアプリを使った体験を踏まえてのアプリの課題であったり、あとは彼が「こんなことを言ったら失礼かもしれないけど、街コンって死語だと思ってました」と率直に言ってくれたこともいい意味で衝撃でしたね!言いにくいことも含めて、私たちが気づかなかった視点を提示してくれたことで、社内でも新たな議論のきっかけになりました。

社員総会で時間をもらって発表した時の様子。プレゼン後のQ&Aタイムでは社員の方からもたくさんの質問やフィードバックをいただいた

――ちなみに、井上くんの受け入れにあたって対応いただいたことも一定あったかと思います。その辺りの負荷は高くなかったですか?
そういう意味では負荷は高くありませんでしたよ。実質、事前準備としては課題を何にしようか検討したくらい。帯同の期間が始まってからも1日30分程度の壁打ちをする程度で、普段のミーティングスケジュールを大きく調整する必要もありませんでしたし、放置していた時間もありましたしね(笑)。こちらが放置していても、井上くんが自走して課題を進めたり自分から積極的に質問してくれたりしたのも頼もしく、何も問題なかったです。

若者から学んだこと

――今回ご参画いただいて、井上くんから受け取った学びや刺激としてどのようなことがありましたか?
日々の業務に追われていると、現状の流れに慣れてしまい、目を背けたくなるような課題はオブラートに包んでしまいがちです。しかし、先ほどのような「街コンって死語ですよね」といったことも含めて、若い視点から「これはユーザーが求めていない」という指摘を受けることで、改めて向き合うべき課題が明確になりました。それはある意味我々にとっては不都合な真実ではあります。でもそこに向き合って、変えていくべきことを変えていかないと未来はない。そんな思いを新たにしました。
また、彼のエネルギーの強さは私自身への刺激にもなりました。40代の経営者である私たちも、若い起業家に負けていられないという気持ちが湧いてきます。新鮮な視点とエネルギーをもらえる、そんな機会になりました。
僕たちの世代の経営者って、事業の未来を考える上でも、若い世代との接点を持つことが大事だと緩やかに考えている人は多いと思います。でも新卒採用をやっていない会社だと特に、強制的にそういう機会をつくらない限りは、若い世代との接点を持つ機会は限られていますよね。むしろ、普段は幹部層やステークホルダーとの会話が中心の経営者にとって、全く異なる感性を持つ若者との対話は、良い意味でのリフレッシュになると感じました。
――今後もまた別の学生さんを受け入れたいと感じますか?
はい!決算期や社内イベントがあったりすると僕自身動けないので、時期的な調整は必要ですが、今後も機会があればぜひ受け入れたいですね。特に、欲が強い学生を歓迎します。「こうなっていきたい」という強い意志を持った学生との出会いを楽しみにしています。


編集後記(運営より)

下永田さんとはほぼ面識のない状態でいきなり運営からXでDMを送り、このプログラムの趣旨をお伝えした上で打ち合わせの機会をいただくという、大変ありがたいご縁から受け入れ準備が始まりました。事前打ち合わせでお話を伺うと、下永田さん自身、学生時代は政治家を目指していらっしゃったこと。その後ビジネスで社会をよくしていきたい思いで、ファーストキャリアとして株式会社リクルートを選ばれたこと。経営者になりたいと思って歩み始めたわけではない中で、ご自身らしい思いを持ってリーダーシップを発揮してこられた下永田さんの生き様は、たくさんの若者の学びになると確信しました。
帯同期間の5日間を通して、毎日壁打ちの時間を確保して丁寧にインプットをしてくださったり、「オミカレ」ユーザーのインサイトを掴む機会を与えてくださったり、そっとしておくときはそっとしておいてくださったり・・・あの手この手、様々な関わりで井上くんの成長を助けてくださったことはこれからの井上くんの糧になるに違いないと感じます(井上くんは下永田さんに質問したことをドキュメントに蓄積していて、その量はなんとA4で25ページ分!)。
余談ですが、帯同期間の最終日、今回帯同してくれた井上くんをサシ飲みに連れて行ってくださった下永田さん。後で井上くんに聞いたら「めっちゃ楽しかったです、咲子さんには話せないこともめっちゃいろいろ話しました(笑)」と言っていました、慶應男子同士、一体何を話したんでしょうね・・・!!w


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