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振られて、振った日

私がAという男に振られた日、
Bという男は私に告白をした。
私はBを振った。

1日で、振る側と振られる側の両方を体験した。

Bを振るとき、私を振ったAに自分を重ねた。
同時に、私が振ったBに、Aに振られた自分を重ねた。

Aと私


Aは、恋愛をする気のない男だった。

Aは私に、
「恋愛はできない。でも、君のことは大切だから、違う関係でつながっていたい」
と言った。

それがとても苦しかった。
私の恋心が返ってこないのに、繋がっているということは、私を苦しめることでしかないと思った。

叶わない想いなら、いっそのこと関係ごと捨ててしまいたい。
絶縁したいとさえ思った。

「なんて酷なことを言うのだろう」と思った。

Bと私


Bは一度振られたくらいではめげない、芯の強い男だった。

私も思いを寄せられることは嬉しくて、恋愛はともかく、とてもたくさん話をしたり、色々な体験を共有した。

そして徐々にBを受け入れ、心を許していった。

なんでも話せて、全部を受け入れてくれてくれる、本当に得難い、大切な、特別な存在になった。
「好き」だとも思った。

それから、デートをしたり、ふれあったり、将来の話をしたりと、恋人同士のように過ごした。

違和感

でも、私は心のどこかで、「何かが違う」と感じていた。
その理由も、正体も、わからない。
でも、何かが違った。
それでも、あまりにBのそばが心地良くて、「何かが違う」という感覚を、封じ込めていた。

しかし、あるきっかけから、私は、「Bと離れる」と決めた

確信

離れてしばらくして、
「私はBと、恋愛関係でいたいとは思わない。
 でも、だからといって絶縁するというのは嫌だな。大切な人だ。
 恋愛ではない、新しい関係でいられないだろうか。
と思い、その気持ちを伝えた。

Bは、
「そんなにすぐには切り替えられないよ」
と言った。

私は、
「そうか。私とBの感覚は違うのか。」
と思った一方で、あることに気づいた。

私は、"あの日のAと同じことを言っている"ということだった。

私はAでB

私はAに、「恋愛は違う。でも、別の関係でつながっていたい。」
と言われて、とてもやるせない気持ちだった。

私はこんなに「好き」なのに、Aは、私の気持ちを置き去りにするような、なんて酷なことを言うのだろう。と思った。

でも、そのAと同じことを、私はBに言っていた。

「なんて酷な」と思っていた言葉は、自分の中にあって、
私はそれを、何も考えずBに言っていた。

「なんて酷な」と思ったAは、私だった。

Bは、あの日の私と同じように、気持ちを置き去りにされた悲しみを感じていたのかもしれない。

Aも、Bも、私だった。

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