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宇野千代さんの りんごの白和え

宇野千代さんの著書に
私の作ったお惣菜
という料理本があります。
分量や手順が具体的に書かれていない場合が多く、実用書というよりエッセイに分類される作品かなと思いますが、実際に作らなくても、料理にまつわるエピソード一つひとつが面白く読めます。文庫版でもカラー写真がふんだんに載せられており太っ腹です。

私が初めてこの本を手に取った時分に、初めて作ってみた一品を、随分と久しぶりに作りました。それが「りんごの白和え」です。

私は心から白和えが好きで、4人前ほどの量でも一食で平らげてしまいます。和えものは時間をおくと水が出てくるので、おいしいうちに胃の腑に収めたい気持ちもあります。
宇野千代さんの本より後に、栗原はるみさんの白和えのレシピ(「ごちそうさまが、ききたくて」より「アスパラガスの白あえ」)を知って、再度りんごも・ほかの何物をも、白和えにしてきました。和える野菜は下煮せずゆでるだけで手軽だし、和え衣の配合も覚えやすくて幅広く応用がききます。手をかけようとすればいろいろ複雑化できるし、そのぶんおいしくもなると思いますが、私としては要素が増えるとハードルが上がってしまうので、近づきやすい白和えに出合ってよかったです。


さて、宇野千代さんの話に戻ります。
りんごの白和えに関する話はこんなふうです。

青森にいる或る友だちから、林檎が一箱、送られて来たのですけれど、それは、あの真っ赫な、つやつやとした、皮の薄い、紅玉と言う林檎なのです。…私のうちの者は、果物には目がありません。でも、ね、一箱の林檎となりますと、…なかなか減るものではないでしょう。それに、あんまり長い間とっておきますと、林檎がその箱の中で、ボケて了う心配があるでしょう。そこで、何か旨い食べ方はないものだろうかと考えています間に、ふと、思いついたのが、これから、あなたにお教えしたいと思う、林檎の白和えなんですよ。

ー「林檎の白和え」

今回は、りんごを白和えにするというアイデアを拝借したに留まり、りんごの品種も違いますし(紅玉がいいのですが、年が明けて残っているのは「ふじ」くらいなので、それを使用)その他いろいろ違っていて、忠実に従ってはいないです。

調和という観点からは、難ありな出来

私の普段の白和えは前述のとおり栗原はるみさんのレシピに基づいています。ただ、本来なら練りごまを使うところ、すりごまに替えて作ることが多いです。すりごまに豆腐や醤油の水分を吸収させたいのと、すりごまなら白黒ともに年中常備しているという台所事情のためです。やはり白和えの場合は白く仕上げたいので、特に理由がなければ白すりごまを用います。

ところがどっこい。前日に私は特価でピーナッツバターを買っていたので、ついそちらに手が伸びてしまったのです。
Twitterでも年末年始に別銘柄のピーナッツバターに取り組んでいる様子をアップしたので、多分、自覚する以上にピーナッツバターを慕っているのでしょう。今回はカナダ産の、添加物が少なくて身体に優しげな商品でした。やや賞味期限が近いだけで税込299円が209円になっていたので、買ったまではよかったのですが、喜びのあまり即開けたくなってしまったらしいです。
これが、余計なものが入ってないからか、かちっとしたテクスチャでなかなか豆腐と均一に混ざらない。ゆえに終始、別個の存在として自らを主張しているのでした。りんごとともに、具材のごとくキャラメル色の欠片が混ざっていますよね。
でも、おいしいことはおいしかったですよ。これは加糖のピーナッツバターで、りんごも甘いりんごなので、砂糖は入れず塩と醤油だけで調味しました。

ポイントは、盛り付け後の仕上げ段階。

この、何とも可愛らしい和え物を眺めています中に、ふと、また、私の頭に或る考えが閃いたんですけれど、…旨いものは旨い上にもっと旨く、きれいなものはきれいな上にも、もっときれいにしたくなるのです。…そこで、私はどうしたかと言いますと、パセリの微塵切りを、白和えの上に散らしたのですよ。

私の家でもパセリだけは生のを摘んですぐ使えるので、そのひと手間は惜しみませんでした。するとやはり段違いに華が加わります。赤に白に緑に、まあキャラメル色も入ってますけど、料理の色彩って大事ですね。
いつも茶色っぽいお惣菜ばかり、誰にも見せずに食べているので、たまには美しいものを作ろうと思います。

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