日本酒のフルーティな風味は、果物と同じ香りの成分が日本酒造りの過程で発生するからだった!
「日本酒を、もっと身近に」という理念をかかげながら活動している日本酒メディア・コミュニティ『酒小町』。今回は「フルーティに込められた意味」についてお話していきます。
ゆるゆる日本酒教室、第99回目の今回は【フルーティに込められた意味】についてです。
日本酒やワインを飲んだ時に感想でよく使われる「フルーティ」という言葉。
しかし、日本酒はお米と米麹を中心としてできているお酒。
なぜフルーティ(果物のような風味がある)という表現に至るのでしょうか。
また、どこから果物要素がくるのでしょうか。
今回は日本酒の「フルーティ」に込められた意味について見ていきましょう!
フルーティの正体、それは香りと甘み
特に影響が大きいのは香りです。
日本酒のフルーティな香りの源になる、代表的な香気成分(香りの素となる成分)が2つあります。
それは、カプロン酸エチル・酢酸イソアミルです。
それぞれ見ていきましょう!
●カプロン酸エチル
リンゴや洋梨などに例えられる香りです。
●酢酸イソアミル
バナナやメロンなどに例えられる香りです。
新しい香気成分4MMP
●4MMP
マスカット、ライチなどに例えられる香りです。
こちらは実は、昨今の日本酒業界で注目を集めている新しい香気成分で、
正確な物質名は、4-mercapto 4-methyl-pentan 2-one(4-メルカプト4-メチル-ペンタン2-ワン)といいます。
ワインを飲む方なら、ソーヴィニヨン・ブランというブドウを使ったワイン。
ビールを飲む方なら、カスケードという品種のホップを使ったビールをイメージしていただくとどんな香りかがわかりやすいかもしれません。
4MMPそのものは元々存在していた香りではありますが、これが日本酒に活用されることで新しいステージへと進みつつあります。
実際の果物と同じ香りの成分が、日本酒造りの過程で発生するというのがフルーティな香りの正体です。
ちなみに、日本酒の香りは、単品の香気成分ではなく、様々な要素が折り重なって出来上がっているため、実は「いろいろな香りがして当然」です!
フルーティ=いい香り?甘い味わい?
さて、冒頭のフルーティという話題に戻りましょう!
フルーティな日本酒、と言った時、いい香りと共に、甘めの味わいが伴っていることが多い印象はありませんか?
確かに、実際に甘みが伴っている日本酒も多く存在します。
しかし、甘い香りがすると、それに引っ張られて「甘い味がする」と感じてしまうこともありますのでご注意ください。ある種の勘違い、先入観ですね。
では、ここでクエスチョン。
「フルーティだけど、甘くない日本酒」
「甘口だけど、フルーティでない日本酒」
というお酒はどんなものでしょうか?
フルーティだけど甘くない日本酒
飲む前に感じる香りは華やかだけど、旨味・酸味・苦味・アルコール感・温度などで甘さがマスキングされているのかもしれません。
例えば酸味が強ければ、その分軽快なニュアンスになりますね。
そのため、フルーティだけど甘くない日本酒とは、言い換えれば、いい香りはするけど、飲み口は穏やかだったり、後味のキレがいい日本酒という解釈もできそうです。
甘いけどフルーティでない日本酒
上記と比較して考えれば、甘さは感じるけど香りは穏やかな日本酒という解釈になるでしょうか。
日本酒には何かしらの香りがありますが、香りそのものがかなり穏やか・弱めな日本酒も多く存在します。
香りを感じにくいとフルーティという感想は出にくいです。
また、甘さにもいろいろな種類がありますね。
などでは、一言で「甘い」といっても甘さの種類が違うのがわかるかと思います。
上白糖や果物のようなシンプルでわかりやすい甘さではなく、炊いたご飯や甘酒のような淡くやわらかい甘さの日本酒を飲んだ時も「甘い」と感じます。
ちなみに黒糖のような甘みというのは、熟成させた日本酒で感じやすい甘みです。
・・・が、それをフルーティと表すことはあまりありません。
どちらかといえば、コクがあるとか、味に深みがあるとか、そのような言い方をします。
まとめ
フルーティという言葉の裏には、フレッシュなフルーツをイメージして、香りの新鮮さ・シャープさを大事にしている気持ちが込められています。
また、「フルーティな日本酒」と表現した時にイメージする甘さと、「甘い日本酒」と表現した時にイメージする甘さが異なっているというのも、意識したいポイントではないでしょうか!
それでは今回はここまで!
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執筆:ダイゴ|社会福祉士×唎酒師・日本酒学講師=Sake Social Worker(note)
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企画:卯月りん(X/Instagram/note)
編集:makio(X/note)
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