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127. BRIAN ENO AMBIENT KYOTO 【展覧会】

先日京都に、ブライアン・イーノ展を観に(聴きに?)行ってきました。

ロキシー・ミュージックの元メンバーで、昔はポップな音も作っていたブライアン・イーノ。昨今は専らアンビエントの人、という印象で、この展覧会もアンビエント音楽と映像美術を組み合わせたメディアアートの展示です。

会場ではまず、写真を撮る際は音を出さないでください、などの注意事項を言われてから、カウンターにてチケット画面を見せます。荷物が重かったのでコインロッカーがあれば良かったのですが、カウンターでお預かりすることになりますとのことで、そこまでしてもらわなくてもいいかなと思ってやめました。(座って鑑賞できる展示ばかりだったので問題なかったです)

薄暗い空間の中階段を上って、まずは3階へ。入り口で靴を脱いで入る展示「The Ship」の部屋へ行きます。
結論から言いますと、この空間がわたしは一番気に入りました。

最初はほとんど部屋の構造も分からないほどの薄闇。何人かの人たちが椅子や床に座っているのが辛うじて分かり、わたしも手近な椅子に腰掛けました。
四方八方にスピーカーが置かれ、静かで多様な音が発されていました。しばらく目を瞑って聴いていると、曲や言葉が展開して、虚しい水のイメージが浮かんできました。
たまに目を開けると段々慣れて見えるものが増えていくのが、世界が明るくなっていくようで楽しかったです。

コンセプトの出発点は「タイタニック号の沈没」「第一次世界大戦」「傲慢さとパラノイアの間を揺れ動き続ける人間」だそうですが、わたしの聴いた部分ではとにかく水の印象が強かったです。生と死の間のような、黒い湖と鳴り響く鐘の情景が浮かんで、多分これで一つ作品を作れそう、というかいずれ書くことになるでしょう。

こんなに暗くて音に溢れた場所に長く身を置く経験はあまり体験したことがなかったですが、何とは無しに落ち着けて、居心地が良かったです。音も雰囲気も、最近ダークアンビエント系をよく聴くわたし的には馴染みやすかったです。他の人たちもそれぞれに没頭していて全然気にならなかったですし。
音が思い掛けずどんどん盛り上がってきて圧に耐えられず出てしまったけれど、もう少し静かなままだったらもっといていまったかもしれない。

次に入った部屋の「Face to Face」は、実在する人物の顔をランダムに組み合わせて、ピクセル単位で顔から顔へ変化していく様子を見せる作品。
一見して、ああ顔が別の顔に少しずつ変わっていくのね、と分かりましたが、全く違う人からちょっと前に見た同じ顔が唐突に現れたりするのは驚きでした。ある地点で顔の印象ががらっと変わるのが面白いです。


2階の展示は、「Face to Face」の顔が色に置き換わったような作品「Light Boxes」。情報量は少なくシンプルになったけれど、色の組み合わせによって光る箱の大きさや見え方が変わってこちらも面白かったです。3つ並んだ箱の厚みがそれぞれ違うのも、印象に差をつけていたように思います。

1階の「77 Million Paintings」は靴を脱ぎ、ソファに座ってゆったりと鑑賞する作品。教会のステンドグラスを思わせる、幾つかのパーツに分割された映像と、流れる音が絶え間無く変わっていく。ソファの座り心地がよくてついうとうとしてしまったり……。
映像と音はたまにおっと思う部分がある程度だったかな。会場内に二つ、謎の砂山に見立てたようなウッドチップの山があったのに、何となく心惹かれました。林的な演出もあったから恐らく森林伐採とか木にまつわるメッセージなのでしょうが、最初砂山に見えたせいで砂漠とか星かけらの砂とか、そんなイメージを膨らませて楽しんでいました。

会場を回り終わって外に出るとき、暗くて音に満ちた空間からいきなり出たら目と耳をやられるかな、と思ったんですが、朝は晴れてたのになんとどしゃ降り! 全然体に異変をきたすことなく、現実世界へ溶け込んでいけました。(あんまり雨が激しいので、現実感はなかったのですが)


「The Ship」で結構自分の世界に入ってしまって、他の展示はふわふわと地に足の着いていない状態で鑑賞していた気がします。各階に盆栽があったのですが、なにせ最初の展示でぼーっとしてしまっていたのであまりちゃんと観なかったのは勿体無かったなあ。
あと、会場には、はきはき明るく若いスタッフさんが多くてちょっとイメージが違ったかも。

何にせよ落ち着いて自分の中へ沈んでいくような、良い時間を過ごすことができました。
帰ってから、実家にブライアン・イーノのCDがわりとあると知れたのも収穫でした。

ではまた。


追記:8月5日 家に「the ship」のCDがあったのを父がかけていました。ああ、あの空間で流れていた音楽だ……と嬉しく思うと同時に、家では強制的に蝉の声とミックスされるので、あそこは贅沢な空間だったなあとしみじみ。あと、スピーカーが多方向にあるとやっぱり全然聴こえ方が違いますね。

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