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111. ヴェネツィアン・グラス(について少しだけ) 【工芸】

全然読み終わらなくてこんな時間になってしまった……。
しかもそこそこの分量があったわりにnoteでまとまった文章で書こうと思うような話題もなく(ガラス作品自体は素敵だったんですが、文章は技法についてとか所蔵している美術館の歴史などで、それを改めてここでまとめ直そうという気にはならなかった)。
今回はヴェネツィアン・グラスの展覧会図録で頭に残ったことや覚えておきたいことをちょろっとメモしておくに留めておこうと思います。


・ガラスは、金太郎飴みたいに、色々な色の棒を並べて溶かしてくっつけて後でスライスする、という技法で柄を作ることがある。(モザイク細工)

・ガラスの器は時期や地域によって流行・特徴も変わるが、過去のリバイバルも盛んで、昔作られていた型が何度も記録から掘り起こされリバイバルされる。故に年代や製造場所の特定がとても難しい。(ガラスは無機物だから年代鑑定が難しいのかな?)時代考証には当時の絵画や貿易の記録なども使われる。研究者の人はあらゆる方向にアンテナを張り巡らせなきゃいけないんですね。

・ヴェネツィアにおいて、ガラス産業は重要な産業となっていたため、13世紀末から17、8世紀まで、ヴェネツィアのガラス職人は領外に出ることを禁じられ、背けば資材だった。が、他の国ではガラス職人を厚遇してくれたため、亡命者は後を絶たなかった。

・イスラム世界で重用された薔薇水入れは、「スルタンの愛人の涙を集める器」だという伝説があってヨーロッパ大陸でもてはやされたらしい? 出典はどこだろう。

・キリスト圏では「聖遺物入れ」という器が一つのジャンルとして成立している。

・グラスの脚が何本もの管を絡み合わせてあったり、内側に用途が謎の球形の飾りがついていたりと、装飾過多なものも多い一方、左右対称で均衡のとれた優美なものも目立つ。
わたしは後者が好きだなあ。でも透明ガラスに金で模様を描いたり、足の部分が割れて別素材で作り直したり、何か装飾的なものがあるとグラスを作った人の美意識とか考え方が表れていてそれはそれで興味深い。

香油瓶や薔薇水瓶にはガラス製のものも多く、先日の香水瓶の本と内容がかぶるようなところもいくらかありました。

特に古代はガラスの発展の歴史を辿る感じで、「香水瓶」のおさらいという感じ。
でも全体で見れば圧倒的にコップやお皿の写真が多いので、全く違う分野を覗き見ている感覚でした。

技法は文章で書かれてもなかなか理解が難しいけれど、写真はぱらぱら見ているだけでも楽しいし、その都度受ける印象が違う。
同じ透明の器でもわずかな口の形の違いやゆらぎで表情ががらっと変わって、実物を前にしたらもっと面白いんだろうなと思いました。
あと、”ガラスを使いこなす”というのは大変な技術を要することだとしみじみ分かったので、(たとえ今使っている器は工業製品でも)大事に有難く使っていこう。

ではまた。


<参考文献>
栄光のヴェネチアン・グラス展 カタログ 1999 松田重昭他編

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