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123. 楠本まき その3 【漫画】

以前一作ご紹介しました楠本まきさん、その際にまだ持っていない作品として挙げた「HOT HOT HOT」を入手しました。

最初の作品集「青の解放」と、代表作の一つである「KISSxxxx」の間に描かれた作品をまとめたもので、内容的にもその二つの間に位置するような三作品が収録されています。
つまり、わりとオーソドックスな少女漫画である「青の解放」より楠本まき感が強いけれど、「kissxxxx」ほどは趣味全開ではない、というような印象です。(とはいえ「kissxxxx」も初めの頃はごりごりの少女漫画だから、それに近いかも)
本人もカバーの作品解説にて「これからは、ちがう路線にも挑戦してみたい」と言っているので、ちがう路線をひた走った結果が今の作風なのでしょう。

3作すべてストーリーは高校生の恋愛もので、主人公たちは大体恋愛のことくらいしか考えていない。単純な話が、普通のコマ割りで進んでいく。そこだけ見れば王道の少女漫画ではあります。
が、大体恋愛している二人のどちらか、或いは両方がちょっとズレてて、独特なテンポの会話が繰り広げられるあたり、楠本まき的だなあと思います。
それに男の子の目の上下の睫毛がばしばしだったり、たまに耽美・退廃的なポージングのカットが入ったりと、作者の好みが窺えます。

話の中身については特に触れなくて良いかなあと思うので、各話印象的だったコマなどについて書いておきます。

・HOT HOT HOT
主役の男の子の方の、お母さんが黄味子さん、お父さんは白美さん。本人の名前は日照と、目玉焼きのイメージかしら? ヒロインの名前はてるこで、卵一家とは関係ないけれど日照とは繋がりがあるのが何だか素敵。ニッショーくんて響きもいいなと思う。で、お母さんもカッコいいけれどわたしはお父さんの性格が落ち着いていてユーモラスで好き。息子との電話で「あ いや こっちのことですよ 切るんじゃありませんよっ キミはすぐおこるから。 うちの学校で生徒がちょっとした問題をおこしましてね……なによくあることですけどね」と言うコマがあって、このテンポ感で会話する知り合いがいたらのんびりできそうだなとか思いました。

でもって、この作品で最も影があって退廃的なのは病弱な先輩、公文さん。小さい頃好きな女の子にいじわるをしちゃうタイプだったなんてとても思えない。一瞬出てくる公文さんのばあやも、2コマしかいないのに鮮烈な印象を残します。全力疾走しても、グラスに入った咳止め薬をこぼさない。

・ヴァケイション
主人公の男の子と友達が大学で二人でやっているサークルが「ミミズと親しむK大生の会」というらしい。入りたいとは思わないけど、どういう活動をしているのかは気になります。延々と土を眺めてミミズが出てくるのを待つのだろうか。

・時計じかけのレモン
実は「時計じかけのオレンジ」を観てないんです。だから本作との繋がりは分からない……(早く観なくては)。
出てくるバンドがお耽美・ゴシックなグラムロック風でカッコいい。いかにも「kissxxxx」の前身という趣である。


そんな感じ。楠本まき作品は最近次々と愛蔵版が出たり展覧会をやったりと盛り上がっていますね。今後の活動も楽しみです。

ではまた。

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