Cory Henry & The Funk Apostlesを見た 19.11.01

手練れのミュージシャンが集うコレクティヴ、スナーキー・パピーの中で、個人プレーでいち早く注目を浴びたのがコリー・ヘンリーではないだろうか。「Lingus」での超絶ソロに度肝を抜かれた人は多かったはずだ。


一時期から自らのバンド、The Funk Apostles(直訳で「ファンク使徒」という、Pファンクを彷彿とさせる名前で最高)を率いている。2年くらい前に東京ジャズのクラブ公演に出演。コリーはホール公演の「JAZZ100年プロジェクト directed by 挾間美帆」に出演し、現代ジャズのパートを担った(NHK BSでのダイジェスト放送で見たが、これも素晴らしいパフォーマンスだった)。でもこの来日時は見られなかったので、今回の来日は僕にとってはある意味リベンジである。

今回はトリオ+女性ヴォーカルの編成。Tiny Desk Concertに出演した際の、コーラスがいたりギターがいたり、というイメージがあったから、随分シンプルな編成。そして1曲目で「Oleo」ときて、名前こそファンクを冠しているが、単純にコリーのリーダーバンドという見方でいいようだ。かえってコリーの手元が見えて集中できる。中盤からはヴォーカルも入る。

それにしてもコリーのソロはものすごく饒舌で、ものすごく歌っていて、いつ聴いてもアガるし凄い。現代のハモンドオルガンの奏者としては間違いなく随一の存在だと思うが、モーグでのソロも、ローズで弾いたソロも変わらずアツい。タイプこそ違うが、僕にとってはカマシ・ワシントン、マーク・ジュリアナと並ぶくらい、その演奏に、マジックに魅了される、そんな存在である。


ハモンドオルガンでこんだけアツいプレイヤーというと、ジョーイ・デフランセスコを思い出すのだが、コリーのそれとはだいぶタイプが違うようだ。久々に聴いてみたが、ジョーイの場合はソウル・ジャズの文脈にいるオルガニストという印象。一方のコリーはそれよりも、ゴスペルのオルガニストという印象が強い。それはゴスペルという出自や、自身が歌ったり、ヴォーカル(今回はデニース・スタウダマイアーが参加、この人もパワフルだった)やコーラスを入れたりと、「歌」の存在が意識されているからかもしれない。

(↑ジョーイ・デフランセスコは80年代マイルス・バンドにも参加、後にジョン・マクラフリン、パット・マルティーノ、スティーヴ・ガッドなどのバンドに参加、共演したオルガニスト。ファンキーだし僕は好きなんだけど、コリーとは明らかにタイプが違うな、と思った。どこがどういう風に、と言うのは難しいのだが)


コリー・ヘンリーは幼い頃から教会での演奏を重ね、アカデミックな音楽教育は受けていないという。生粋のゴスペル・オルガニスト。ヴォーカルのデニース・スタウダマイアー(めっちゃパワフル)が加わり、自らもヴォーカルをとる後半からは特にゴスペルっぽさが溢れる。「NaaNaaNaa」の簡単なシンガロングで、多幸感に包まれてライブは終わった。


9月にコンテンポラリー・ゴスペルの旗手、カーク・フランクリンのライブにも行った。その時もハッピーでピースフルなライブだったが、ヴォーカルではなく演奏が主役になっていて、それでここまでハッピーなライブになるというのが信じられない。

(↑メトロポール・オルケストとの共演による「Purple Rain」のカバー。ソロも勿論アツいが、歌もめっちゃ上手いし、エンディング部もカバーしていて、美しいトリビュートである)


ここ最近、ちょっと色々なことが重なってテンションが上がらない日々だったが、コリー・ヘンリーのライブでだいぶ救われた気がした。


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