秘密
黙っていようと思った言葉を、誰も見てないと信じ込んで空に吐き出す。
地面に穴を深く掘り、王様の秘密を叫んだ彼のように。私は私の心に蓋をする。
通じるだけが想いじゃないから。
宛先のないラブレター、そっと焚き火の糧にする。ぱちぱち弾けてごうごう燃える。
私の言葉は灰になる。
美しい、と私は思った。
ラブ、を込めたとびきりのレター。
恋じゃない、そういうんじゃない。
うまく言えない、言おうとも思わない。
言葉にしたらずいぶんと安っぽくなるんだもの。
風に攫われた灰は煤となって、空をほんの僅かに飾る。私の頭を撫でて笑うあなたが、少しだけ憎くて、びっくりするほど愛おしい。
もし好きに形があって、形ごとに分けられていたら、きっと私の好きはどこにも当てはまらない、規格外の“好き”だと思う。
高尚なものって言いたい訳じゃない。
ただ、好き。
それだけなのに、それ以上でもそれ以下でもないのに。既存する形に当てはめられそうになって、歪んでいく。歪ませられていく、私の、好き。
王様の耳はロバの耳!
そうやって叫べたらどれほど、どれほど良かっただろうか。
いい友達のままでいい。
面白い奴のままがいい。
それ以上はいらない。それ以上は。
あなたの長い睫毛が揺れる。
そよ風にそっと攫われる。
ほんの5分が、永遠に続いた。
そんな気がした。
秘密にしよう、秘密でいよう。
いつか暴かれるものだとしても、ただ、今この瞬間私の気持ちは、なかった事にして欲しいのだ。
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