見出し画像

#26.とろ火でとろとろ、あたためる。

結局、あれから一晩中眠らずに空を見ていた。
ただただゆっくりと移り変わっていく空の彼方に、昨日までいたはずの星どころか、それらがある銀河さえ見つけることは出来なかった。

明け方、空が白んできて、鳥達が鳴き始める。
面白いことに、毎回ちょうど4時頃に鳴き声が聞こえ始めるのだ。
もうしばらくすると朝刊を配達するバイクの音や、始発で帰ってきた誰かの歌声なんかも聞こえたりする。

夏頃だとすぐに眩しくなるけど、今はまだ薄暗いまま。
なんとなく、キッチンにむかう。
空っぽの冷蔵庫には賞味期限ギリギリの牛乳。
せっかくだからホットミルクでも飲むか。

ミルクパンにコップ一杯のミルクを注ぎ、火にかける。
とろ火でとろとろ、あたためる。

棚から小瓶を二つ取り出して、それぞれひとさじずつ鍋にいれる。
ゆっくりくるくるかきまぜる。
まぜて溶かしてまたまぜる。

ぐつぐつ煮込むと薄い膜みたいなのができるので、なるべくゆっくり時間をかけてあたためる。

静かだ。

火の音以外、聞こえない。
しばらくすると表面が泡立ってくる。沸騰しきる前に火を止め、マグカップに注ぐ。

あまいホットミルク。
ちょっと子供っぽいけど、時々飲みたくなる。
なんだかほっとする味。

隠し味は、いつかの時の甘い星屑。
それと空から落ちた花びらたち。

小石大の星屑は回収したあと軽く砕いて瓶に詰めておいた。
空から降った花びらはジャムの小瓶に入れておくとマーマーレードに変わるのでそれを。
優しい甘さとはなやかな香りの特別なホットミルクができあがる。
我が家の定番レシピである。

ちびちびとあじわいながらマグで指先をあたたてる。そこで初めて自分の身体が冷えていたことに気づいた。

鍋を片付け、ホットミルクを飲み切ったらいよいよ日が出てきたので、一旦眠ることにした。
布団に潜ってアラームをかける。
午前中までには起きていたい。希望だけど。

ミルクであたたまった体は、あっという間に眠りへと誘われた。
.
.
.
結局、目が覚めたのはお昼過ぎだった。
なんとなくまだ眠たい感じがしたので熱いシャワーを浴びて目を覚ます。

コーヒーを飲みながら仕事のメールチェックをしたり、作業を進めたり、旅行中のデータをチェックしてまとめたり。
まあ仕事をした。

夕方、一旦作業を中断して外出する。
今朝方冷蔵庫を見たとき、あまりにも何もなかったので買い出しだ。

ちょっとした運動がてらに、スーパーだけでなく、商店街もちょっとまわる。

馴染みの肉屋に寄ったら、ちょうど揚げたてのコロッケがあったので買ってしまった。
唐揚げを一つオマケしてもらったので今日はご機嫌だ。

家に帰ってから、忘れていた荷ほどきの仕上げをしたり、夕飯を作ったりなんだりしていたら、あっという間に1日がおわっていた。
布団に入ってまるくなる。
めをつむったらもうすぐにねむってしまいそうだ。昨日夜更かししてしまったから。
争わずにねむることにした。

窓の外では星が光っていた。

いつも応援ありがとうございます! 頂いたお代は、公演のための制作費や、活動費、そして私が生きていくための生活費となります!! ぜひ、サポートよろしくお願い致します!