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空想日記

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あなたの知る私ではない『誰か』から届くメッセージ。日記のようで、どうやら公開して欲しいみたいだったのでここで。ちっぽけな世界のちっぽけな私のここから、私の元に届く誰かからの日記。… もっと読む
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2020年11月の記事一覧

#30.ひとりで帰ろう

#30.ひとりで帰ろう

風邪をひいた。朝からなんとなく調子が悪いような、身体が重たいような、底冷えするような感じがしていたが、低血圧と寒さのせいと考え、とりあえず白湯をのんでモコモコ着込んだ。
昼ごろ、どんなに暖かい格好をしても一向に寒気がましにならないどころか、頭痛までしてくる始末だったので抵抗やむなく、体温を測ると中々な高熱が記されていた。
熱を出すて寝込むなんていつぶりだろうか。
もともと、そんなに身体が強い訳でも

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#31.記憶は、覚えた瞬間から色褪せていく。

#31.記憶は、覚えた瞬間から色褪せていく。

そういえば、先日現像に出していたフィルムが出来上がった。
この前の旅行で使ったインスタントカメラだ。
データ化してくれるのでデバイスでも見ることができる。
さっそく仕上がりをチェックする。

ネガのケースは3つ。それぞれ初日から最終日までここだ!というタイミングでシャッターを押していたら、3台もっていったインスタントカメラを全て、使い切ってしまったのだ。
まあ、これも必要なことなので問題はないが。

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#32.手紙

#32.手紙

懐かしい人から手紙が届いた。
昔の知り合いで、画家をやっている人だ。
今度個展を開くそうでお誘いの手紙と個展のDMを送ってくれた。

先生は初めて出会った時から先生だった。
出会いはとある展覧会のレセプションパーティー。
そこでたまたま同じ作品の前にとどまり、なんとなく目が合い、一言二言言葉を交わした。
その時はそれだけだった。

その二日後、仕事で出向いた先で、ふと立ち寄った古本屋で再会をした。

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#33.すっきりと青く、美しかった。

#33.すっきりと青く、美しかった。

渡りペンギンが集団飛行を開始した。
朝のニュースでそんな一報が流れていた。

そうか、もうそんな季節になったのか。

毎年、秋から冬にかけて渡りペンギンたちはここより寒い地域から飛んでくる。
ここで冬を過ごして春先になると元いたところへと帰っていく。
“アレ”を見ると毎年、冬の到来を実感する。
そういえば今年はまだだったな。

空を滑るように、あるいは泳ぐように飛ぶその姿は、颯爽としていてかっこい

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#34.色んな時間が売ってある

#34.色んな時間が売ってある

時間屋に来た。
ここには色んな時間が売ってある。
昨日、先週、去年、10年前、100年前、1万年前。
過去に限り、1秒単位から好きな時間を買い取ることができる。

様々な形を模したアイテムが取り揃えてあり、まるで雑貨屋のような雰囲気だ。
置いてある商品の横には注意書きが書いてあり、商品の詳細が記載されていた。

タイムドーム
過去に起きたシーンを5秒間繰り返し再生することができる。
持ち運び可能サ

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#35.贅沢で特別で、あたりまえ

#35.贅沢で特別で、あたりまえ

あさ、カーテンの隙間から差し込んでくる太陽の光で目が覚める。
水底から水面へふわっと浮かび上がるような何とも言えない浮遊感に、あたまも視界もぼんやりしたままだ。
残念ながら、寝起きは良い方とは言えない。
何度か寝たり起きたりを繰り返して、布団の中で暫くもぞもぞと蠢いて、起きる元気をチャージしてからでないと起き上がれない。

休みの日は枕元に置きっぱなしの本を読んだりして平気で目が覚めてから1時間以

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#36.もくもくあるく

#36.もくもくあるく

進まない。
ちっとも進まない。
これっぽっちも進んでない。

仕事が。

先日の取材旅行から帰ってきて、資料をまとめたりアイディアを整理して、しばらくはとても順調だった。
色々な刺激を受けたからか、いつもよりも全然調子が良いくらいだった。

だがしかし、勢いでばーっと進めたところを、整えて引いたり足したり推敲するところでつまずいた。
もう、全っ然だめ。
ずーっと連続で直進青信号だったのに、いきなり

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#37.めぐり、めぐらせ、ぐるぐるり

#37.めぐり、めぐらせ、ぐるぐるり

ポケットに入れたままのボイスレコーダーを発見。
そういえば、どんな音撮ってたってけな。
適当にボタンを押して遡り、スイッチをオンにする。

みーん、みんみん みんみん みんみん

夏の、アブラゼミの合唱だ。

ざわ、ざわざわ、ざーわざーわ

春の嵐、木々が風に吹かれる音。

ちょろちょろ、ちょろ、ちょろろろろ

小川が流れる音、いや、小道に見つけた用水路の音かな?

踏み切りのサイレン、カラスの鳴

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回想電車

回想電車

『3番線参ります電車は、回想電車です。当駅を通過いたしますので、黄色い線の内側に下がってお待ちください。』

日付も変わった夜の駅、ターミナルに人はまばら。
スピーカーから、アナウンスの声 響き渡る。

『本日は、当駅をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
終点、終点でございます。お忘れ物ございませんようお気をつけてお帰りください。』

ああ、今日も電車を逃してしまった。

駅員さんが

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#38. 右手にスプーン、左手には読みかけの本。

#38. 右手にスプーン、左手には読みかけの本。

本屋でなんとなく表紙が気になって買った本が面白かった。
短編集で、特に最後の電車の話が良かった。

昔から、一度読んだ本の内容は基本的に忘れないし、忘れていても表紙見れば思い出すことが出来るから、何度も同じ本を繰り返し読むよりも、沢山の本を読むことが好きだった。

次の展開に一喜一憂して、主人公のセリフにドキドキして、ページをめくるたびに早くこの先がどうなるのか気になってたまらなかった。

続きも

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#39.ふわふわとした浮遊感

#39.ふわふわとした浮遊感

あさ、いつものように起きて身支度を整えていると、玄関のチャイムがなった。

ドアを開けるとお隣さんがいた。
挨拶の言葉を声にする前に、足元をすりぬけてロロが家の中に入ってきた。

今日は週に一度、隣の家のロロを預かる日だ。
いつもはすぐに散歩に行くのだけれど、今日はあいにくの雨。うちの中で過ごしてもらう。

先日の旅先でのお土産であるぬいぐるみは、早速ロロのおもちゃとして振り回されていた。
しばら

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#40.なんの予定もない休みの日

#40.なんの予定もない休みの日

今日は休みだ。
仕事は在宅だし勤務内容も日程を細かく決めるものではないのだけど、特に打ち合わせの予定も出かける予定もなく、ちょうど色々な作業のキリも良かったので休みにしたのだ。

なんの予定もない休みの日は、なんて最高なのだろうか。
いつもよりも早くに目が覚め、わくわくした気持ちで朝日を浴びる。
普段よりも寝覚がよかったのは気のせいだろうか。

コーヒーを淹れて好きな音楽を流しながら優雅に楽しむ。

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#41.くだらない話で夜を明かす。

#41.くだらない話で夜を明かす。

友人が研究で賞を取ったそうだ。
友人はエネルギーの研究をしていて、僅かな資源から効率的にエネルギーを抽出することに成功したんだとか。
(もっと複雑怪奇で革新的な内容だった気がするがいかんせん興味の範囲外のこととなるとざっくりとした概要しか説明できないのだけれど。)
研究論文は銀河中を騒がせるほど話題になったそうで、一躍時の人である。

友人の研究内容に関して、自分は門外漢なので、賞を取った話を聞い

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#42.ノートに言葉を書き連ねる

#42.ノートに言葉を書き連ねる

パソコンが壊れた。
長年一緒に戦ってきた相棒だったのだけれど、最近調子が悪く騙し騙し使っていたが、今日ついに寿命を迎えてしまった。
煙をあげてもうにっちもさっちも動きやしない。

幸いデータはバックアップがあるし、今抱えている仕事も急を要するわけでもないので焦ることはないけれど、シンプルにショックだ。

修理できないか贔屓の電気屋に持っていって話を聞くことにした。

長年のガタが来ていると、場合に

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