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【マンガ感想文7】ゲームを通じて人生を知る「ハイスコアガール」

1990年代にストリートファイター2、いわゆるスト2が登場したとき多くの少年たちがゲームに熱狂した。本作の主人公ハルオもその一人で超ゲーマーであった。小学生だったハルオは連日ゲームセンターを練り歩き、腕を磨いていた。ある日ゲーセンで同級生の大野晶に出会う。彼女はお嬢様であり、ゲーセンには不似合いであったが、それ以上に無双のザンギエフ使いであった。

その日以来ハルオと大野の因縁が始まる。ゲームだけが取り柄のハルオからすれば、勉強もできてお金持ちの大野は鼻持ちならない存在であり、自分の得意分野で負かされることは我慢ならないことだった。しかし幾度も対戦するうちに二人は不思議な関係を築いていく。

しかし小学生の終わりに大野は突然海外に移住してしまった。中学生、高校生に成長するうちにハルオと大野はくっついたり離れたり、以前とはまた別の不思議な距離感になっていく。

小学生のときはゲーム三昧でまったく勉強をしなかったハルオだったが、高校受験のときに大野と同じ高校に行くために、ゲームを封印してもう勉強をしたり、ときおり驚異の集中力を発揮する。考えるに一芸を極めた人間は案外他の分野でも機会があれば頑張れるのじゃないかと思う。

ハルオはずっとゲームと共に成長してきた(ときおり封印したことはあったが)。しかし当時はゲームばかりしていると馬鹿になるという風潮だった。私も同じ世代なのでよくわかるが、ゲームには娯楽という一言では片付けられない哲学があるような気がする。いや、万物には極めるに至って真理が得られるという境地があるのかもしれない。千利休が茶に、宮本武蔵が剣に見出したように(オーバーすぎる?)。

本書に出てくるゲームはスト2、バーチャファイター、餓狼伝説など懐かしいものばかりである(そのせいで著作権侵害で訴えられたようだが。ちょっとゲーム会社さんたち大人気なくない?)。そんなノスタルジーと青春の青さと苦味を思い出させる作品である。

もし時代が違えば、二人はeSports選手になれたかなとも思う。


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