夢の友だち

私が眠っていたところへ、彼女が突然来た。
「おはよーー」
誰がなぜ私の部屋に入ってきたのか分からず黙っていたら、「私みさきっていうー」と名乗った。その名前は多分昔から知っていた。
「さいか!起きろ!散歩!」
初対面だったが彼女はその態度が通常運転なようで、私は不思議と心地よかった。仕事があるのになと思う反面、わがままが嬉しく、布団から出て着替えを始めた。
彼女は見かけは普通の女の子で、同い年か、少し年下くらいに見えた。
「神輿担ぎに行くぞ!」
私が外に出る準備中ずっとその調子で、私はもう彼女のことが好きだった。この子がいれば大丈夫なのかもしれない、こうして外に連れ出してくれる友だちがいれば、私はもう何も余計なことを考えなくていいのかもしれない、とさえ思っていた。
一方で、これは現実か、と疑っていた。私は幼少期に線路の向こう側からやってくる女の子と毎日遊んでいた記憶があるが、今思えばあれはイマジナリーフレンドだった。また私が空想で心の拠り所を作り出してしまったのかもしれない、と思った。
場面は変わって、私は彼女と2人、町の医者に連れて行かれた。私は片手を彼女と繋いだまま、渡された手鏡に映った自分を見つめると、曖昧にぼやけていた顔の輪郭がだんだんとはっきりしてゆき、それと同時に彼女の肌は硬く、青白くなり、透けて、最後には消えてしまった。苦しそうに私の名前を呼んでいた。
彼女がすっかり消えてしまった後では、突然部屋に入ってきた人に対してあんなにも好意的な感情を抱いたのは異常だったと理解でき、とても悲しかった。
それでも、夢から覚めた今でも、友だちを失ったことの方が悲しい。出会えたことが嬉しい。

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