朝、目が覚めると蝉が鳴いている。訳もなく懐かしい。鋭い光、タンクトップの風通し、図書館の冷たさ、いつもそこにあった無常感が思い出される。この懐かしさは2時間ほど続き、私はほとんど過去にいながら朝の支度をする。
数週間前から毎朝このような調子で、どうやら夏が関係しているようだが、20回目の夏にして初めてのことだ。故郷を離れて過ごす夏は初めてだからか、あるいは、人生における季節が一つ終わり、それらはようやく過去になったからか。
特に大きな変化はない。素晴らしいばかりの日々でもない。それでも夏が来たことが嬉しい。

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