日記 7月13日(土)

丸善ジュンク堂で江國香織の「号泣する準備はできていた」を購入して、その足でバーへ入ってから2時間半ほどになる。
隣の席にいた男性2人組は距離が近く、恋人なのかもしれなかった。私の読んでいる本に興味を示し、本を読んでいることに対して素敵だと言った。
離れた席で、快活な男が快活な女を口説いていた。
「マスター俺な、みかちゃんの人生の80年のうちの1日、2時間だけでもいいから俺にくれって言ってデート誘ってん。楽しくなかったら即帰りでいいからって言って。」
終始そんな風で、女は楽しそうだったし、2回目のデートもあるだろうなと思った。それ以降は分からないけど。
一度客は私だけになってマスターと話した。大阪に出てきて半年で、妹と二人暮らしということ。歩いて20分のところに住んでるということ。などなど。
しばらくして入ってきた若い男二人のうち一人は彼女と別れたらしかった。
「俺はさきちゃんと寄り戻したいけど、無理やねん。さきちゃんは結婚とかその先のことを考えようとしなくて俺はそれが許せないのね、だって一緒にいる意味ないじゃん。別れてすぐの時にインスタの裏垢にライターの写真載せてありがとうって投稿したの。ライターって100円とかやから持ってなかったら買うし、それくらいのものやけど、これがなかったらタバコ吸えんやん、俺これ大事にできんかったら何を大事にできんねんと思ってライター1本使い切ってん。そのありがとうやねん。でもさきちゃんが勘違いして反応してきてん。ちゃうねん。ライターにやねん。」
一本のライターを使い切ることに意味を見出せて、好きな女と共に時間を過ごすことに意味を見出せないとは不思議だった。
二杯目を飲みながら本を読んでいると酔いが回ってきて文章を書きたくなった。
私はお酒を飲んでも飲まなくても好きな人のことばかり考えていてどうしようもない。会っても電話をかけても好きなことには変わりない、から、会いにも行かないし電話もかけない私はライターの彼と同じなのかもしれない。

そう思ってバーを出て電話をかけた。かけてよかった。

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