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バンド名被りはバンギャルトークを混乱させる。

ヴィジュアル系に限らず、バンド名は重要なアイコンだ。
だからこそ、キャッチーな名前や、コンセプチュアルな名前、個性を出そうと捻った名前等、趣向を凝らしたバンド名が無数に存在している。

しかし、バンド名が被ってしまうケースも多々発生してしまう。
例えば90年代中盤では、同時期にCARESSというバンドが活動していたため、CARESS(大阪)、CARESS(北海道)など、活動拠点込みで記載するのが暗黙の了解になっていた。
現在のようにインターネットが普及されておらず、ポータルサイトなんてない時代、駆け出し中のバンド同士で名前が被ってしまっても仕方がないという部分はある。
なんなら、Xですら、海外のバンドと名前が被ったことに後から気付き、X JAPANと改名したぐらいだ。
地方によっては、先輩が過去にやっていたバンド名を譲り受ける文化があったりして、バンド名が重なることは、それ自体は悪ではない、とまず言っておく必要があるだろう。

それはそれとして、バンド名被りは、バンギャルトークをするときに非常に面倒だ、というのが今回のテーマ。
特に近年は、時代が1周も2周も回ってしまった結果、そこそこ知名度があったバンドでも、世代が異なるため認識されず、バンド名に採用されてしまうケースが頻発している気もする。
共通するのは、スペル等の表記が異なるため、文字検索上の被りではないということ。
vkdbなどでバンド名を検索、ヒットしなかったと安心したのかもしれないし、話題性を作るためにわざと被せているのかもしれないが、読みが同じバンドがいくつか登場してしまうと、紛らわしいったらありゃしない。
トークするときにきちんと区別をしておかないとアンジャッシュのコントのような状況に陥る懸念があるので、留意しなければならないのである。


ヴィヴィッド

Vivid(1999~2003)

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ViViD(2009~2015)

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バンド名被りの是非については、ViViDの登場ぐらいから活発化した気がする。
先に登場したVividはテレビ出演等の露出も多く、「SPARK!!」世代のバンギャルであれば、名前を聞いたことがあるはずだ。
被ったのが無名バンドならまだ見過ごせるが、ここと被せるのはさすがにV系ヒストリーを軽視しているのでは、という議論が巻き起こったのである。
もっともViViDは、ちゃんと実力で戦えるスキルや華があったため、メジャーデビューや武道館ライブも達成。
晴れて、バンド名被りの代表格になった。
問題なのはバンギャルトークのときで、どちらの話題をするにしても、注釈が必要になる。
スペルは一緒なのに、大文字小文字の組み合わせが異なるという口頭での表現の難しさもあって、上手い呼び分けができないか、今でも悩ましいところだ。

マスク

MASQUE(1995~2000)

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MASK(2003~2006)

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MASQUEの全盛期がインターネット黎明期で、今では知る人ぞ知るバンドとなっているため、"マスク"と言われたら未散さんのいるMASKと捉えておけば概ね問題はないだろう。
ただし、トーク相手の年齢層は見極める必要はあり。
MASQUEは哀愁系のルーツという文脈で語られる機会もあり、注意が必要かもしれない。
なお、未散さんの関連バンドといえば、その後に結成したSevenも、CROW MUSICの7 sevenと名前被りをしている。
シーンにおける主要レーベルのボスが、それぞれ別の同名バンドを組んでいるというのも、面白いものである。

レイド

LAID(1995~2002)

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Ray℃(2012~2014)

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the Raid.(2011~)

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近時に置いて、もっとも混乱を招いているのは、この"レイド"ではなかろうか。
それぞれがそれぞれの文脈でトークの対象になりやすいのである。
LAIDは、言わずと知れた関西ソフトヴィジュアル系シーンの代表格。
期間限定復活を遂げるなど、過去のバンドとは言い切れない存在感を見せている。
Ray℃は、明言されてはいないものの-真天地開闢集団-ジグザグと関係が深く、彼らの楽曲がジグザグでリメイクされたのも記憶に新しい。
現役時代はマイナーバンドの域を出なかったとはいえ、現在ブレイク中のジグザグと関連付けて語られることも増えてきた印象だ。
そして、the Raid.はメジャーデビューが決定し、コロナ禍におけるクラウドファンディングの先駆け的バンドとしても注目を浴びた。
字面だけではバンド名が被っているとの認識を持ちにくいせいか、話し手が区別をしないことも多く、トークの中に"レイド"が出てきたら、どの"レイド"かをちゃんと確認しておくと良いだろう。

ジルドレイ

Gilles de Rais(1989~1995)

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JILLED RAY(2009~2015)

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まさかレジェンドバンド、Gilles de Raisと被せてくるなんて、と話題になり、ViViD同様、バンド名被りの事例としては鉄板となったJILLED RAY。
もっとも、この2バンドの活動時期は、ちょうど20年のズレがある。
レジェンドバンドぐらいは押さえておけ、という言い分もわからなくはないが、本当に知らなかったとしても無理はない世代差であろう。
バンド名の由来も、歴史上の人物から取ったものであり、偶然の一致は十分にあり得る。
最近では、ジルドレというバンドも登場し、音で聞いただけではますます混迷を極めるジルドレイ界隈。
ずっとレジェンドの一人勝ち、とはいかないのかもしれない。

ネイル

NeiL(1996~2000)

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NaiL(2009~2010)

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バンド名の文脈で"ネイル"が登場したら、十中八九、NeiLであると認識していて問題はないだろう。
KEY PARTY所属のバンド内でも硬派なスタイルで人気を博したNeiLは、メジャー進出を実現した実績がある。
方やNaiLは、1年程度の活動期間でマイナーバンドの域を出ぬまま活動終了。
えんそくのDr.SINさんが在籍していたものの、ex-Wizardのキャリアのほうが重宝されているイメージで、当時のファンでもなければ、NeiLだと思って聞いていたらNaiLだった、なんてことは起こらないだろう。
とはいえ、ここで紹介したのは、そのバンド表記方法が興味深かったから。
大文字、小文字のレイアウトまで一致しており、偶然だとして、ここまで被るか、というレベルである。
ただし、V系シーンにおいて、最後の"L"を大文字に変換するのは、もはや様式美(これはこれで別のテーマとして語れそうである)。
100%クロだと言えないのが、この世界の面白いところなのかもしれない。

カイン

kein(1997~2000)

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Kαin(2007~)

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同音異義語的なバンドの中で、あらかじめ被ることを知っていたと公言しているケースは、そんなに多くないのかもしれない。
KαinのVo.YUKIYAさんは、もともと"カイン"というバンド名を温めており、D≒SIRE解散後に始動しようと思ったら、名古屋でkeinというバンドが活動していたため、JILSを結成した旨のエピソードを語っている。
keinが解散して久しくなったことを踏まえ、2007年、Kαinは満を持してスタート。
その後、JILSが復活した際は、ex-keinのGt.aieさんがサポートで加わり、ますますややこしいことになるが、良好な関係が続いているのであれば、それに越したことはないのである。

ラミエル

Lamiel(1997~2000)

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ramiel-ラミエル-(2016~2018)

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keinがいればLamielもいる、名古屋系繋がり。
ramiel-ラミエル-は名古屋を拠点にしているShimizuyaRecordsに所属していたので、本人たちにその意図があったかはわからないものの、少なくとも事務所サイドは狙っていたものと思われる。
音楽性まで古き良き名古屋系を再興させようとするタイプのバンドだったらどうしよう、と冷や汗をかいたが、そんなことはなくて一安心。
Lamielと同じDonuts Record Westの所属バンドで言えば、1999年~2001年に活動していたVizellも、2010年にVizeLが結成され、一足先にバンド名被りの仲間入りを果たしている。

ランズ

landz.(2011~2014)

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蘭図(2019~)

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ex-AvelCainのVo.業さんが結成した蘭図も、広義の意味でバンド名が被っているとなるだろう。
日本語としての響きと、英語としての響き、ニュアンスは異なるものの、カタカナ表記をすれば、どちらも"ランズ"。
異なる言語で、同名バンドになるケースを探してみるのも、パターンとしては面白いのではなかろうか。
さすがにこれを意図的に被せてきたとは思わないが、結果として紛らわしくなってしまったことに変わりはないのである。


そういえば2014年に結成されたGossip-ゴシップ-が、後に"ゴシップ"名義に表記を変えていたけれど、2008年まで活動したgossipと表記が重なるのを避けたのかもしれないな。
2000年から活動しているピノキヲは、ex-カラットのGt.雨宮流斗さんがピノキオというソロプロジェクトをはじめたとき、何か思うことはあっただろうか。
探せばそれなりに見つかるもので、DISHや HeaRt等、被った先が他ジャンルであるケースも含めたら、キリがない。
bisとBiSがiTunesの中でごちゃごちゃになるの、本当に勘弁してもらいたいのだが。

ちなみに、この記事の中で語るべきかどうか、もっとも迷ったのは彩冷えるとAYABIEである。
意図的に被せたのは周知の事実だし、バンギャルトークは確実に混乱するのだが、なんだか趣が違う気がするので軽く触れるだけに留めておこう。


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