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【ADVゲームレビュー】HEAVY RAIN -心の軋むとき- / PlayStation3 (2010)

HEAVY RAIN -心の軋むとき- / PlayStation3

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フランスのクアンティック・ドリームが開発したミステリーアドベンチャー。

舞台はアメリカの小さな町。
連続誘拐殺人犯"折り紙殺人鬼"に息子のショーンを誘拐されたイーサン、私立探偵として"折り紙殺人鬼"を追う元刑事のスコット、イーサンと出会ったことから事件に興味を持ち、独自の調査をはじめる新聞記者のマディソン、特殊な装置により事件の謎に挑むFBI捜査官のノーマンの4人を中心として、事件の全貌を暴いていくことになる。
ストーリー的な主軸はイーサンに置かれており、彼が犯人から指示される"試練"を乗り越えることで、ショーンの居場所のヒントが示されていくのだが、閉じ込められた井戸に雨水が溜まって、ショーンが溺死するまでというタイムリミットが存在。
ミステリー好きには、十分に唆る内容であると言えよう。

基本的には、用意されたストーリーに沿って4人の主人公を動かしていくのだけれど、良くも悪くも自由度が高い。
ある意味、一番苦戦したのは最初のチュートリアル的なパートで、海外の家の構造に慣れていないというのもあって、シャワーの場所がわからないわ、皿のしまってある場所がわからないわ。
洗面所に辿り着いたのはいいが、当初はデュアルショック非対応のコントローラーでプレイしていたため何をやっても反応せず、満足に歯磨きも出来ないという状態。
操作に慣れるためにチュートリアルは必要だったと言える一方、事件が起こる前の段階で離脱してしまいそうになった。

とはいえ、本作のポイントは、クイックタイムイベント(QTE)によるコマンド入力要素であろう。
リアルなキャラクターを操作するだけでも没入度は高いのだが、行動のひとつひとつが簡易な選択ボタンではなく、QTEで行われることによって、余計にキャラクターに入り込んでしまう要因になっていたのかと。
歯磨きをするためにコントローラーをシャカシャカ振らなければいけないのは正直面倒だったけれど、結果的にはそれが良かった気もする。
もっとも、QTEの結果が生死を分ける場面も少なくなく、アクションゲームが苦手であれば、生存ルートでクリアできないなんてことにもなり得るため、許容度には個人差もありそうだが。

また、QTE以外にも、一般的なADVゲームのようにボタン選択で次の行動を決定する場面もある。
ただし、これもリアリティを追求しているようで、不安や緊張があると選択肢がブレて読むのが難しいうえに、一定時間が経過すると、"何もしない"を選択したことになってしまう。
この設定自体にはゲーム性として目をつぶれるのだが、そもそも選択肢の文字が小さすぎて読めないのは僕だけだろうか。
少なくとも、「〇」か「□」かの判別はかなり困難で、実質運任せで選択肢を決定しなければいけないのは、楽しみをひとつ奪われた気分。
個人的には、QTEの良し悪しよりも、こちらのほうが何とかしてほしい課題だったな、と。

ストーリー的には大味な部分はあるにせよ、10年前のゲームとは思えない現役感があり、総括としては面白かった。
没入感が物凄いだけに、リアル父親にとってはかなり胃が痛くなるゲームであるが、陰鬱な世界観と多少のグロ要素に抵抗がなければ、PS4にも移植されているので、プレイしてみるのはアリだろう。


【注意】ここから、ネタバレ強め。


何と言っても、犯人が誰か判明するシーンでの演出はたまらなかった。
事件のきっかけとなった出来事を、幼少期の犯人を操作することで追体験していく。
最後の最後に名前を呼ばれて、自分が操作していた子供が誰だったのかがわかるというギミックで、ずっとイーサンが二重人格ではないかという伏線が張られていただけに、それがひっくり返された衝撃は大きかった。
初回のプレイでノーマンパートでのQTEをミスして犯人に繋がる証拠を掴み損ねていたのもあり、演出として余計に効いた部分はあるかもしれないが、主人公のひとりが犯人だったという結末に、驚かないプレイヤーはいないだろう。

犯人は、事件を突き止めるために調査していたのではなく、事件の痕跡を握りつぶすのが目的。
これを反則だと捉える人もいそうだが、ミステリーでは常套手段である。
上手かったのは、これが叙述トリックが成熟しきった小説ではなく、没入型のゲームであること。
感情移入しながらプレイさせられたことで、"例え主観であっても意図的に隠している何かがあれば疑ってみる"というセオリーをすっかり忘れ、勝手に容疑者から外してしまっていたのだもの。
ここまで鮮やかに騙されると、むしろ気持ちが良いぐらいである。

あとは、2周目以降の操作について、スキップさえできればな。
犯人がわかったうえでの2周目は、それを意識しながらプレイすると思考に奥行きが出てくるものだが、このレベルの操作を何度も繰り返すのは、さすがにダレる。
マルチエンド方式による結末も、苦労して辿り着いたわりにはシンプルに流れていくので、全員生存ルートでクリアできれば、コンプリートにはこだわらなくても良いのかもしれないな。

ちなみに、予定されていたDLCが発売中止になったようで、未回収の伏線も多く、イーサンの溺死のイメージがつきまとう意識障害やマディソンの暴漢に襲われる悪夢など、結局何だったの?という謎がいくつか残ってしまうのは、残念としか言いようがない。
本編では、どのエンディングでもハッピーエンドにならないノーマン。
DLCがちゃんと出ていたら、ARIの副作用や、それを抑えるための薬物への依存を克服できていたのだろうか。

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