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記事一覧

夏の家族

名前をあげましょう 遠く離れても思い出せるように 口にふくんでも忘れられるように 耳を澄ま…

川㟢雄司
1年前
7

全裸でカレーを食べていたときのことです。つまり、そう、ついさっき。なに、ちょっと春めけば…

川㟢雄司
2年前
2

われ彫刻になりたや

過去や今やの別なくし 音や光の包みきたり 啞も吽も漏れぬまま われ彫刻になりたや 不動の体…

川㟢雄司
2年前
1

夢より深く醒めていて

あれから何が育っただろう 野蛮なほどに存在を 肯定するのはいつだろう 荒れ狂う赦しが 腹か…

川㟢雄司
2年前
1

わたしの小石

かなしいかなしい夜でした 涙のこぼれる夜でした どうしてかなしいのか 分からないので よけ…

川㟢雄司
2年前
4

寒暖差

朗々と鳴る緑の毛並み 苦汁に浸した灰の空 崖のような風がのたうつ つまみあげたような木々が…

川㟢雄司
3年前
1

立ちくらみ

知らないよ 違うかもしれないね 眼球てヤツはさ 都合がいいからな つまんないことばっかりだ 一瞬の繰り返しが 立ちくらみを起こしちゃう 血が薄く透けて ほら 朝がくるよ

家出

ロウヤって漢字を忘れた クッキーって漢字だとどうなるかね 楽器なんか弾ける? つまんねぇヤ…

川㟢雄司
3年前
1

容れもの

おもかげを ひとに見つけて 名を呼んで たたずんだその場が 歩めよ と

川㟢雄司
3年前

剥製

悲しみの奥底に 庇護への欲求が潜んでいる 嫌悪の裏側に 恐怖がこびりついている 優しい眼差…

川㟢雄司
3年前
1

平面

田んぼに水が張られ 苗が植えられると 水面はぐっと平面になる 急がしい曇天が 平たくひらた…

川㟢雄司
3年前
1

眩しい

露座の大仏の中で 靴の音が響く 学校帰りの中学生が 連れ立って駆けていく じれったく夏の陽…

川㟢雄司
3年前

ロマン派

ロマンチストであるからには 空想を旅するばかりで 頑として 机から離れまい 自由ということ…

川㟢雄司
3年前
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からり

老人がひとり 曇りの日に 蛾をつかまえた つられて光る夜の肌 じっとり濡れた指先が 幽玄に紛れ込み 現が抜けてとけていく 呼び覚まされたような 突きぬけた 感覚