フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 27 ゾーン・ディフェンス攻略理論 〜バスケットボール7〜

ゾーン・ディフェンス攻略理論

現代のフットボールにおいて、ゾーン3(攻撃側から見て)「ファイナルゾーンの守備」のほとんどがゾーン・ディフェンスであると推測する。そうであれば、まず最初にゾーン・ディフェンスをどのように攻撃するかを理解することが大切だ。
テックス・ウインター(1962)は、ゾーン・ディフェンスの特徴に基づいてゾーン・ディフェンスの原則を説明している:

ゾーン・ディフェンスの原則を知ることで、ゾーン・ディフェンスの弱点や攻撃方法を知ることができる。

(テックス・ウインター(1962)が提唱するゾーン・ディフェンスの原則から抜粋したものである)

ゾーン・ディフェンスの原則:

1. ディフェンスプレーヤーの注意はオフェンスプレーヤーよりもボールに向けられる。ボールと同時にオフェンスプレーヤーも視野に入れることができるようになれば、ゾーン・ディフェンスはより効果的になる。
2. ディフェンスプレーヤーは決められたエリア、またはゾーンをまもる。しかし、オフェンスが移動していくエリアが危険な状況にある場合は、自分のエリア外であってもヘルプに出る。
3. ディフェンスプレーヤーはボールの動きに合わせてシフトする。ディフェンスは、ボールとバスケットの間での決められたポジションを維持する。このポジションをキープするために、パスに合わせてシフトするのである。どのようにシフトするかは、ゾーンの種類、オフェンスのねらい、相手チームの長所と弱点によって決まってくる。
4. ディフェンスにおいては、味方同士が補い合う。すべての優れたディフェンスチームは、この原則をしっかり守っている。ディフェンスは、パスを予測し、時にはスティールのためにギャンブルすることもある。これが失敗した場合、そのチームメイトは、ギャンブルしたプレーヤーのつくった穴を補い、彼がリカバリーするまでヘルプにまわらなければならない。
5. ボールを持つオフェンスプレーヤーにプレッシャーをかける。アグレッシブな姿勢はディフェンスにとっては欠かせない要素となる。優れたディフェンスとは、相手のしたいことをさせないディフェンスである。自由にパスをまわさせないことで、相手の落ち着きとリズムを崩す。


ゾーン・ディフェンスの攻略法:

ゾーン・ディフェンスの原則や特徴を知ることで、ゾーン・ディフェンスの弱点や攻略法が見えてくると考える。テックス・ウインター(1962)は、ゾーン・ディフェンスの弱点をこのように述べている:

「ゾーンはファストブレイクに弱い」。これは、バスケットボール誕生以来ずっと変わることがない。速いテンポで攻めるチームは、ディフェンスがゾーンを組む前にショットチャンスをつくることができる。

このことを念頭に置いて、ゾーン・ディフェンスの攻略法を考えたいが、今回は「カウンターアタック」からの攻撃ではなく、ゾーン3から開始する「セットオフェンス」の方法を考えること、提案することが目的である。ここではゾーン・ディフェンスを攻略するには、「カウンターアタック」が効果的だと知っておくことに留めておきたい。

ただ、ボールを失ったチームはゾーンを組む前に「カウンタープレッシング」をするチームが最近は多くなってきている。「カウンターアタック」はゾーン・ディフェンスではなく、プレッシングで回避するという解答が1つ出ているのだ。もう1つは、絶えず攻撃しながらボールを失った場合のことを考え、ボール保持者の後ろに必ずサポートに入るプレーヤーを配置するというダイヤモンド・オフェンスの原則も「カウンターアタック」の防止と「カウンタープレッシング」を実行する際に役立つことだろう。

テックス・ウインター:4つのゾーン・ディフェンス攻撃メソッド

テックス・ウインター(1962)は、4つのゾーン・ディフェンス攻撃メソッドを提案している:

1. 原則的な攻め方
2. フリーランス・オフェンス
3. ディフェンスと同じアライメントを使ったオフェンス
4. ディフェンスと逆のアライメントを使ったオフェンス

※アライメント:オフェンスプレイヤーまたはディフェンスプレイヤーのコート上の配置。

(テックス・ウインター(1962)が提唱するゾーン・ディフェンスの攻め方から抜粋したものである)

1. 原則的な攻め方

1. 原則的な攻め方:あるエリアをオーバーロードし、その結果生まれるオープンエリアへカットすることである。ゾーン・ディフェンスとマンツーマン・ディフェンスに共通する要素があるということは攻略法にも共通する点があるということになる。

テックス・ウインターは「ゾーン・ディフェンスとマンツーマン・ディフェンスに共通する要素があるということは攻略法にも共通する点があるということになる」と述べている。マンツーマン・ディフェンスの要素を含まないゾーン・ディフェンスは効果的ではなく、ゾーン・ディフェンスの要素を含まないマンツーマン・ディフェンスも効果的ではないのだ。マンツーマン・ディフェンスであっても、ゾーン・ディフェンスのような守り方をすることもあり、ゾーン・ディフェンスであってもマンツーマン・ディフェンスのような守り方することがあるのだ。そこに攻略法の「共通する点」があると考える。

攻略法を見つけるためにオフェンスは、どこにオープンスペースができるかを注意深く観察することが大事だ。なぜなら、オープンスペースができる場所は、相手のディフェンスの仕方によって変わってくるからである。

例えば、フットボールの場合で考えてみる。グラウンド中央にいたトップが外側レーンに移動したとする。この外側レーンには通常ウイングが配置され、相手ディフェンス(通常はサイドバック)は自身のゾーンをディフェンスをしながら、ウイングを監視している状況である。このスペースに移動してきたトップが入り、2対1の数的優位(トップとウイング対サイドバック)な状況になるのだ。この外側レーンで数的優位になった攻撃側はこのスペースから攻撃をしていくことになるだろう。マンツーマン・ディフェンスであれば、トップが外側レーンに移動した場合、トップをマークしているDFも一緒に外側についていくことだろう。

ゾーン・ディフェンスはボールを中心とした守備方法であり、各プレーヤーは守るゾーンが決まっている。しかし、ゾーン・ディフェンスの原則にもオフェンスが移動していくエリアが危険な状況にある場合は、自分のエリア外であってもヘルプに出ることになっている。つまり、ここでマンツーマン・ディフェンスと共通の要素、動きが出てくるのだ。そうなると、その危険なエリアをカバーするために移動したディフェンスプレーヤーがいた場所がオープン・スペースとなる。結局、ゾーン・ディフェンスであったとしても、マンツーマン・ディフェンスのような守備方法になってしまうのだ。

攻撃側はその状況を瞬時に察知し、空いたスペースを有効利用する。その空いたスペースにプレーヤーがカットし、そこでパスを受けて得点チャンスを創り出す。

※オーバーロード:あるエリアにおいて、ディフェンスプレイヤーの人数よりも多くオフェンスプレイヤーを配置させること。


テックス・ウインター(1962)は、オープンスペースがどこにできるのかを知り、上手くディフェンスに適応することがオフェンスの鍵であると説明する:

オフェンスは、どんな種類のディフェンスにも対応できるような柔軟さを持っていなければならない。優れたオフェンスは、どんなディフェンスに対してもよい結果を出すことができる。ディフェンスがどのようなことをやってきても、それに対処する有効なオプションは自動的に決まってくる。ディフェンスに応じてそのオプションが決定されるので、あとはそれをタイミングよく確実に実行することを考えればよい。


ゾーン・ディフェンスとマンツーマン・ディフェンスでは、ディフェンスの優先順位(ゾーン・ディフェンスの優先順位:ボール、スペース、人。マンツーマン・ディフェンスの優先順位:人、ボール、スペース)の違いはあるが、最終的にゴールを守るという目的は同じである。それはゾーン・ディフェンスであっても、チームメートが相手にドリブルで抜かれて相手にシュートチャンスを与えてしまう場合は、自身のゾーンを捨てて、チームメートのカバーをしなければならない。マンツーマン・ディフェンスだったとしても、チームメートが相手との1対1に負け、相手にシュートチャンスを与えてしまう可能性がある場合は、自身のマークを捨てて、チームメートのカバーに入らなければならないのだ。ゾーン・ディフェンスとマンツーマン・ディフェンスはこのシュートチャンスを相手に与えてしまう、もしくは、危険な状況に追い込まれる可能性がある場合は、ゴールを守ることが最大の目的であるため、チームメートのカバーに入ることが「共通の要素」となる。その「共通の要素」が「相手ディフェンス攻略法の共通する点」となるのだと考える。

テックス・ウインターは、相手のディフェンスの仕方を観察し、それによって相手ディフェンスの弱点であるスペースがどこにできるのかを知り、相手ディフェンスに素早く対応することが優れたオフェンスであると説明している。それが相手のプレーを読むということであり、トレーニングや実践を通じて体得した、その状況に適したプレーオプションを素早く実践に移すこと、これが即興プレーなのであろう。その即興プレーを実践する上で役立つのがダイヤモンドの形に配置されたプレーヤーであり、ダイヤモンド・オフェンスである。


2.フリーランス・オフェンス

フリーランス・オフェンスについては、フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化22  2.3 他のチームスポーツにおけるダイヤモンド・オフェンス ~バスケットボール2〜  2.3.4 ダイヤモンド・オフェンスはフリーランスオフェンスの章で説明したのでそちらを参照してほしい。


「ディフェンスと同じアライメントを使ったオフェンス」と「ディフェンスと逆のアライメントを使ったオフェンス」については次回に説明する。



引用・参考文献:

ウインター・テックス. バスケットボール:トライアングル・オフェンス. 監訳:笈田欣治. 訳者:村上佳司, 森山恭行. 大修館. (2007). 81-87.

バスケットボール用語辞典. 監修:小野秀二、小谷究. 廣済堂出版. (2017). 16. 31.





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