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冷凍庫の冷や飯食い

 世界中で起きた『大変異』が第何次かの世界大戦と一緒に文明まで終わらせたのが約半世紀前。人類は文明の残り香で何とか生き延びている。

 北海道。ここは年間平均気温-57℃。動物はミュータントへと変貌した試され過ぎる大地。
 ここで俺は文明遺物回収業者を営んでいる。
 前時代の工場跡地等に潜る危険な商売だ。
 主に扱うのは冷凍食品。食物が全部人工食品になったいま金持ち老人達に大人気。

 ◇◆◇

 パワーローダーのアームで雪を払い除けると「函館ハム」の社名が出てきた。食肉工場は人気の有る商品が多い。
 前を行く社員の丸二くんがローダーのパワー任せに門扉を破壊。
「警備用のドローン位しかいないだろうけど慎重に行こう」
 手持ち武器のレールガンを動作確認してから俺達は敷地に足を踏み入れた。

 ◇◆◇

 BATATATATA!!!

 工場地下に下りて最初の角を曲がったとたんに機関銃掃射のお出迎え。慌てて引っ込んで光学カメラでこっそり角の先を確認。
「ガトリングガン装備の重装甲無人機だとぉ!」
 ただの食肉工場にこんな軍用無人機が置いてあるわけがない。
「帰ろう、ここ明かに偽装軍事工場だ。俺らの手には負えない」
「あ!社長、アレを見て下さい」
 丸二くんが共有映像をポイントしてズームする。奥の製品用のコンテナに積んである…こ、これは!
「我が社の人気No.1高額商品。ハンバーグですよ!」
「行くぞ丸二くん、アレを持ち帰れたら臨時ボーナスだ」
「ボーナス!我が社の設立以来初じゃないですか!ヒャッハー!」

 丸二くん吶喊!大破!!

 ◇◆◇

 社員の身を挺した囮により、無事コンテナを地上の雪上車まで回収できた。
 問題はハンバーグに埋もれる様に突っ込まれていたコフィンポッドである。
「人肉も取り扱ってました。ってオチじゃないよな」
 中には乳牛かと思う位に胸のデカい女が入っていた。
 しかも生体反応有り。

 これが我が社の新入社員の採用経緯だ。

(続く)

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