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令和新撰組最後の事件 古都銘菓騒動


「御用改である!」

 政策により建て直された古民家風の町家の玄関戸を蹴破り中に踏み込む。
 俺の着ている浅葱色をしたダンダラ羽織が翻り、高周波ブレードへと改造された日本刀が鞘走る。

「ぎゃあっ!」「ぐえええ!」

 戸の左右にいた不逞浪士風の男たちの手足をぶった切ると情けない悲鳴を上げてぶっ倒れやがった。やかましい、安物サイバネ程度で騒ぎやがって!

 イベントで黒谷に「沖田」の1番隊がいたのはラッキーだった。連絡しここに急行してもらっている。あいつなら直ぐに到着する。

 昭和より長く続いた令和も後数ヶ月で次の元号へと変わる現在。
 日本は中央の手を離れた各都道府県の自治体が、それぞれ経済政策を地域で特化したものに変化させた。
 ここ京都は観光と伝統産業を特化させた。つまりは歴史と伝統と格式を金に変えた訳だ。
 そんな京都で今、一つの騒動が起きようとしている。騒動の中心はこの俺と後輩の香子さん。

 その香子さんは現在囚われの身である。

 香子さんは麗しき黒髪の乙女であり、眼鏡と本の似合う文学系美人である。そして胸がやたらデカい。
 知的で慎ましやかな性格とは真逆に肉体の方は服の上からわかるほどに慎ましく無く、そのダイナマイトボディは多くの男を狂わせた。
 そんな彼女から慕われていると言うだけで俺のバラ色のキャンパスライフは確定したも同然。
 その才媛からのメッセージ『百万回愛してます』はここ百万遍を示している。

 騒動の原因は実家の開かずの蔵から出てきた古文書。これにある京都銘菓の起源が書かれていた。
 有名銘菓の常として、元祖だ本家だのと複数のメーカーがウチこそが開発元だと主張するのだが、この街ではそれが数百年単位で続いている。おまけにそれが利益に直結しているのである。千億単位の金が簡単に動く、少なくとも人が数人死のうが構やしないと言うのは確実だ。

 実際に古文書の解析を依頼していた教授は切り殺された。

(続く)

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