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みんなの怪物

 MG42機関銃が電動鋸のような発射音を放つと警備員達は無惨に死んだ。
 死体を跨いで国連本部ビルを進んで行く。ビル内の制圧は順調。
 南米にいた『最後の大隊』を連れて来たが凄く有能。吸血鬼兵の部隊だったのは予想外だが。
『私』達が帰って来た時に部隊も帰って来ていたのは幸いである。日本では槍装備のパワードスーツ部隊と合流できた。

 私が死んで世界大戦が終わっても世界は私の恐怖を忘れなかった。都合の悪いことを私に押し付け、それどころかエンタメの都合の良い悪役として私を消費すらした。

 無辜の民が産み出した『私』はその全てがこの世界へ『帰還』した。
 良かろう。世界が私達に望んだように私はこの世界を制しよう。

 見渡すと、恐竜人の私がいた。和風甲冑を操るミイラの私がいた。カンフーを使う私がいた。全て帰還した私だ。

「目当ての会見室はこっちじゃ」
 通路から『彼』が呼ぶ、同盟国の日本で出会った私と同じ帰還者。

 目の前にいるのは日本人のくせに赤髪でグラマラスな体型をした女性だ。
 目的が同じなので手を組んだ。「後世の者がワシをそうだと決めつけたのだ。ならば是非も無し」だそうだ。

『彼』の人数はなかなかに多かった。数えてみたら約700名いた。しかも半分位は美少女なのではと言う有様だ。全く日本人の考えることはわからん。明らかに人間やめてるのもいるし。
 彼いわく「信玄入道の手紙の返事に我は第六天魔王なり!とか書くんじゃなかったわい。おかげでご覧の有り様じゃ」とのこと。うっかり歴史に名を残すと恐ろしい。

「NASAで交信できた連中は間に合わんかの」
「流石に月の裏だ、後3日は掛かる」

 彼は日本だけで済んだが、私は世界中に(それこそ月にまで)逃げたことになっている。
 だから国連の放送設備を使い全世界の私に呼びかけることにした。
 マイクの前に立ち、静かになったら、口を開く。

「アドルフに告ぐ!我が闘争を始めよう」

(続く)

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