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不自由を継ぐから成功する事業継承

事業継承。
今、日本のさまざまな産業で問題になっているコト。
特に飲食店の跡継ぎ問題は大変です。
小さな店には小さな店の…。
何軒もお店を経営している会社には会社の問題があって、今あるお店、今ある会社が5年、10年後に今のままあり続けることができるかどうかは、誰にもわからぬコトでもある。

実際、継ぐ人がなく姿を消してしまったお店も数知れず。
「はまの屋パーラー」という人気の喫茶店も、一時期姿を消したお店のひとつでした。

東京丸の内の南の端っこ。駅で言えば有楽町駅だから気持ちは日比谷、あるいは銀座。三菱地所の古いビルの地下一階。ビルの古さにつじつま合わせの古い雰囲気。
昭和ムードが漂う店でした。
かつてはシニアな人たちだけで運営していたほのぼのとした店で、彼らの引退と同時に一旦閉店。
そのニュースに閉店前の1ヶ月ほどは、行列が絶えず閉店を惜しむ人が日本全国から集まり、にぎやかに歴史の幕をおろしたものでした。

ところがそれから1年ほどの空白を経て、若い人がお店を引き継ぎ、メニューや商品はほぼ昔のままに営業再開。
本当に昔通りになるんだろうか…、と当初は心配したけれどあっけないほど昔通りで今も営業を続けてる。
いかにも昭和喫茶的だった食器がモダンに変わったり、パンケーキをメニューに加えてみたりと若い人たちなりの工夫もあるけど、それも未来のためのことと応援したくなるような店。
暖簾を継ぐということは、「暖簾と歴史を自由にできる」ということでなく「暖簾と歴史を守る不自由を手に入れる」ということである。けれどその不自由の中で、創意工夫し新しい時代への扉を一生懸命作るというコトなんだ。
そういうことを、この店の昔と今をみるとしみじみ感じる。勉強。

ちなみに今でもシニアスタッフさんがお店にかわるがわるやってくる。若い人たちと一緒に働くためにくるのだけど、その働きがとてもいい。

「気配り」だとか「心配り」。
お客様をもてなすにおいて、とても大切なことなんだけど教えようとか教わろうとするとむつかしい。
若い人にはなかなか出来ず、それで時折、あぁ、昔に比べて冷たくなっちゃったなぁ…、って思わされることがあったりもした。
若さゆえに気づかぬこと。
でも人生経験が長いと自然に気づくこと。そのギャップを埋めるためにシニアスタッフいい仕事をしています。
今日もおちついた女性がひとり。カウンターに水滴が散って汚くなるのは、タオルを置かないからですよ…、とか、先回りして準備をしすぎる人に対して、お客様はここにゆっくりしにくるんだから、急いだってしょうがないでしょうって、のんびりとした口調で言う。

ボクの向かい側に小さな子供を連れた家族がやってきて、サンドイッチにアイスコーヒー、ホットコーヒーにアイスミルクを注文した。
アイスミルクは明らかにお子様用の注文で、おばさんがおかぁさんに近づいてきて「ミルクに氷は入れますか?」って聞く。
うちの子、氷を喜ぶんだけどあまり冷たいとお腹を壊すし、一個だけにしてくれませんかとママが答える。
こういうやりとりこそが飲食店を「人と人とがふれあい互いに幸せになる場所」にしてくれる大切なコト…、ってしみじみ思った。これも勉強。

さて、たのんだのはアイスコーヒーにサンドイッチ。
いつものようにタマゴサンドとツナサンドをそれぞれ半分で盛り合わせ。タマゴサンドは焼かないパンで、ツナサンドの方はパンを焼いてもらって一揃え。
今日はハムとツナとかって違う注文をしてみようかと喉のところでは準備して、けれど口を開くと結局同じ注文をいう。
かわらぬことがこんなにステキで心地よい。ありがたいなぁと感謝しながらふっくら、サクサク、サンドイッチを味わい食べる。それにしてもこの卵焼き。かつてのおじさんたちが焼く卵焼きよりずっと上手でおいしく感じる。そういう変化はありがたい。

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