見出し画像

銀座の空の下で天国の食べ物みたいなレモンケーキを食べる。

銀座で行ってみたかった店がある。

画像1

「月光荘サロン月のはなれ」というお店。
月光荘という画材屋さんがやっている。
彼は一時期、月光荘のお絵かきセットをいつも持って、いくとこいくとこで料理の絵を書いていたことがある。
家に帰ってそのスケッチをもとに絵を描き上げていくのだけれど、その絵があまりにおいしそうでお腹が空いて困っちゃうねぇ…、なんていって笑ってた。
その月光荘の別館ビルの最上階にカフェができた。
クレオール料理と音楽。
屋上テラスがあって夜は個性的なワインがたのしめる。
行ってみたいなぁ…、と思う以上に多分、彼の好きな店だろうなと思ってウェブサイトを見せたら行ってみようよってことになった。
でも行ってみたらエレベーターがない。
5階まで狭い階段を上がらなくちゃいけないってわかって、膿んだ足を引きずってでは無理と断念。そのまま行かずじまいになっちゃった。
「今日は無理だね」って言ったときの、寂しそうな表情を今でも忘れることができない。
上がってみます。よいしょ、よいしょと手すりをつたってゆっくり上がると、4階のちょっと手前に「あと23段」って書かれた張り紙。一階にはインターフォンが置かれてて空席があるかどうかを確かめることができるようになっているのがやさしい気配り。

今だったらヒョヒョイのヒョイってひとっ飛びで来られたのにネ…。

画像2

そう思いながらおじさん階段をゼイゼイしながら5階まで。
暗い階段に慣れた目に、まぶしいほどに明るい屋上。
パーッと視界が広がります。
奥に小さな小屋があり突き当りにバーカウンター。
小屋の前には小さな庭のようになってて、ガーデンテーブルと椅子がいくつか置かれてる。
銀座じゃないなぁ…、空気が軽い。
どこか高原のリゾートのテラスに座っているような気持ちがしてくる。
バーの方からロマな感じのエキゾチックな音楽が流れてきて、好きだっただろうなぁ…、この雰囲気。

画像3

アイスラテをまずもらい、お供に「月のレモンケーキ」を焼いてもらった。ウェブサイトにおいしそうな写真で紹介されていて、これを絶対食べようね…、って話をしてた人気の料理。

注文ごとに焼き上げるから時間はかかる。
のんびり待った。
テーブルの上に木の葉が影を落として涼しい。
スッキリとしたビターなエスプレッソがミルクの上に浮かんで漂う。
グラスに口つけ直接飲むと、思った以上に苦くてびっくり。
お腹の中がブルッと震えて目が覚めた。

そしたらネ…、風が吹いたよ。
木の葉を揺らしてボクの首筋をやさしく撫でる。それからずっと葉っぱが細かく揺れる様子が、枝が笑ってるみたいに見えて、つられて笑って泣いちゃった。

画像4

三日月の形のレモンケーキ。ホイップクリームにミント葉っぱ。はちみつ、それからパッションフルーツのジャムがお供についてくる。

画像5

手にしてみると案外ずっしり重たくて、まだ熱々。端っこを割るとザクッとまるでサブレが砕けたみたいな硬さを感じる。軽いクッキー生地がぽってりとしたスポンジ生地と一緒に焼けているような、不思議な食感。生地そのものはザクッとまるでポレンタのよう。
サクッとしててふっくらしてて、軽くとろけて消えていく。
ちょっと胡椒のようなスパイシーな香りがあって、何?って聞いたらレモンピールを混ぜているからその苦味と香ばしさが香りを独特にしてるんでしょう…、って。

画像6

そしておいしい。レモンの香りと酸味にほのかな甘み。特にパッションフルーツのジャムと一緒に食べるとウットリするほどシアワセな味。天国の食べ物ってこんな感じなんじゃないか…、って一口食べて涙が止まらなくなっちゃった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?