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Guest Talk 01: 古山拓 [画家]

さまざまなクリエイターとの対話を通じて、創造することへの想いや工夫、最近の活動など、その言葉から新しい視点を学んでいいくシリーズです。

旅も、森も、出会いがあるから絵が生まれる

旅と森、一期一会の出会いが絵となり、見る人に旅路をそっと語ってくれる。古山さんの淡く儚い風景画は、まさに時間旅行の扉です。絵を描くために旅をするのか、旅をするから絵が残るのか、その創作は日々を綴った手紙のように、淡々と、でも語り尽くせないほど奥深い世界があります。古山さんの目だから見える色、その魅力についてお話ししていきます。


古山 拓さんのプロフィール
Taku Furuyama
岩手県生まれ。広告会社などを経て、水彩とイラストレーションのアトリエ「ランズエンド」を設立。広告や絵本、旅の透明水彩画の分野でご活躍されて、近年では宮城県川崎町の森にご自身のギャラリー「アトリエアルティオ」を開きながら、日々、絵と向き合っている。


2023.8.21+8.28放送

はじめはやっぱり、古山さん。

酒井:この番組にお迎えする初めてのゲストはこの方です。こんにちは。

古山:こんにちは、古山です。

酒井:すいません、急に無茶ぶりでオファーして。。。ほんと、ごめんなさい。

古山:本当に急ですよね。

酒井:そうですよね。はい急なんですよ(笑)思いつきです。すいません。
僕はこの番組をクリエイターさんとの対話を柱にしたいなと思っていて、そう考えたら、最初に話したいのは古山さんしかいない!という訳です。

古山:(笑)ありがたい。
でも僕、話が来たとき、一番最初だと思ってなかったですよ。

古山拓《ハイランド印象 アイリーンドナン》 ©Taku Furuyama

酒井:今日は仙台からですか?

古山:そうです。平日は仙台、週末は宮城県川崎町の森に移動する。そうですね、ここもう2年ぐらいはそんな感じ。今日は仙台の自宅です。

酒井:僕はまだ森のアトリエに伺った事がないのですが、古山さんのSNSで写真を見てます。すごくいい感じ。アトリエというか、どう見てもリゾートです。

古山:いやいや、森はそう甘くないっすよ。甘くない。

酒井:旅の風景や景色を描く古山さんが森にアトリエを構えるって、文脈が最高。

森の中のアトリエ(photo:Taku Furuyama)

気持ちが森に向かっていた

古山:元々は僕が森に行こうと思ったわけではなくて、うちのかみさんがいろいろ考えてたんですよ。僕は今年還暦になったのですけど、還暦以降の過ごし方みたいな事。2年前まで仙台の街の中にギャラリーを構えていましたが、今後の活動はこういうところでやったらプラスになるんじゃないかって。パソコンであちこち調べていて、はじめは何やってんのかなぁと思っていたのですが、次第に僕も気持ちが森に向かっていきました。
僕は子どものときは岩手の山奥に住んでいたので、自然には不便なことがいっぱいあるってこと、わかってるわけですよ。そんな森の中って甘くないよと思っていたけれど、なんか、そういうことになっちゃいました(笑)

酒井:縁ですねー。
絵を描きたいという気持ち以前に、窓を開けたら絵の題材があるわけじゃないですか。すごい環境ですよね。

古山:森で暮らすのは週末だけですが、ここにいると、目と耳が全開になる感じ。自分でもびっくりなんですよ。風の音とか、葉っぱの音とか、虫の羽の音とか、常にアンテナがバーンと立ってる感じになって、俺ってこんなに発見できる人間だっけ?っていう感覚になります。

酒井:感度が良くなるのですね。毎日が小さいことの発見の繰り返し。
描くときは音楽は聞かない派ですか?静かな環境で描くのですか?

古山:いいえ。
僕の場合は音楽がスイッチなのです。朝とか、ぼーっとしている時は、葉っぱの音とか聞いてますけど、「よし描くぞ!」と制作モードに入るときは音楽必須なんです。

酒井:え、そうなんですね!

古山:そうなんです。

酒井:よく聞くジャンルとかあるのですか?

古山:これがですね、僕、変なんですよ。30年間、同じミュージシャンの曲だけ。それもほぼ同じCDだけ30年。ルーティンみたいな感じで、その曲をかけると自動的にスイッチが入る感じ。でも大体50分ぐらいでスイッチ切れるんですけどね。曲が終わるとOK!みたいな話。

森の木々をドローイングしながら観察(Drawing:Taku Furuyama)

新しい古山さん

酒井:この番組は「ラジオ3と酒井で新しいことを考え始める」というコンセプトから「新しい酒井3」という番組名になったのですが、古山さんにも折角なので、新しいことを考えてもらおうと思いまして、これまた無茶ぶりで僕から事前に宿題を出しました。宿題、持ってきました?

古山:はい。うん、もー、やりましたよ。

酒井:ありがとうございます。
僕から出した宿題は何かっていうと、古山さんの魅力って僕は「色」と思っているのですが、古山さんにも「気がついたらこの色使ってなかったぁ」なとか「自分のテイストじゃないよ」っていう色があるはず。この機会に新しい絵の具を開封してもらおうと。
このような流れで「古山さんにとっての新しい色は何ですか?」という宿題にしました。ラジオで伝わりませんが、僕に見せてください。

古山さんの宿題

 →→→ 古山さんの宿題作品の詳細はメンバーシップページで紹介しています。

古山:見せますね。はい、こちらです。
グラデーション。インディゴ、オレンジ、グリーン。
インディゴって僕ほとんど使わない。強すぎるから。今回はあえてインディゴを使いました。

インディゴとオレンジって補色じゃないですか。性格反対の色なのですが、わざとに喧嘩させてグラデーションを作り、さらに下の方でもインディゴに黄色系の色を入れて、オレンジにもまた補色の色を入れて・・・。だから喧嘩ばかりさせた。一番の喧嘩するやつ。それもあんまり使ってないやつをやってみようと。

酒井:なるほど。古山さんの絵って、確かに色と色を直接ぶつけあわないイメージがあります。喧嘩してない。境界があるわけじゃないけれど、ちょうど良い距離感が境界を作っている感じ。みんな仲良し。

古山:ありがとうございます。差し色で補色を使うことはよくあるのですが、今回は本当に勝負させた感じ。だからそれはすごく新鮮で、楽しかった!

酒井:宿題は悩むことに意味があって、悩んだ分だけちょっと成長できる。ここでまた、クリエイターみなさんが新しくなれたら嬉しい。

古山:ここで生まれた色を多分僕は使っていくと思うので、作品の中に生かていこうと思います。

酒井:こういうことって、ありますよね。服買いに行って、普段は選ばない色をオススメされて、試しに着てみたら悪くない気分。後々ヘビーローテーションしちゃう。

古山:そういうことです。
やっぱり「慣れ」が出ちゃうじゃないですか。

酒井:そうですね。「慣れ」は嫌。
この「新しい酒井3」は創造の汗をかく場所なので、こんな感じで無茶ぶりしていきたいと思ってます。

古山拓《春の日》 ©Taku Furuyama

絵のない絵本書いてください

酒井:古山さんの最近のチャレンジのお話を。絵本を出版されたということで、ご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

古山:PIEインターナショナルから『1本の木がありました』という本が7月に出版されました。これ、絵本とはいっても、ドローイングだけで書いた、色が入ってない絵本なんです。言葉もほぼないです。1センテンスがところどころに差し込まれてくるだけで、ほとんど説明がない。絵だけで見せる絵本です。僕はドローイングが好きですが、作品として扱うことは少ない。でも今回は「ドローイングがいいよね」というお話をいただいたので、それでいこうと。

酒井さん、覚えてないと思うけれど、僕に「絵のない絵本を書いてください」って言ったこと、覚えてないでしょ?

酒井:覚えてません(笑)
そんな無茶振りしたんですか?すいません。。。そんなファンタジスタなことを言ったのですね。。。

古山:この本は色を使わず言葉も最小限で、見る人に託すような絵本になりました。自分でもチャレンジな絵本です。

酒井:色は見る人によって見えてくる色が違う、そういうことですよね。空の色とか虹の色が違うように。この木にはモチーフがあるのですか?

古山:モチーフはなく、自分の想像で書き上げました。それでもやっぱり自分が過去見てきた木は、やっぱり大事になってると思います。無から有は生まれないんで。

酒井:ぜひ皆さん、書店で手に取ってみてください。読み手のキャンバスを広げてくれるような絵本だと思います。よろしくお願いします。

そろそろお時間なので、お喋り終わります。古山さんは準レギュラーなので、またすぐゲストに呼びます(笑)ありがとうございました。

古山さんのドローイングが深い世界観を生む絵本

放送回はPodcastでも配信中

#03 Guest Talk 01: 古山拓 [画家]1/2
#04 Guest Talk 01: 古山拓 [画家]2/2


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