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美術展:Music of the Mind by オノ・ヨーコ @Tate Modern

夏休みでジョージア旅行にをした兼ね合いで、しばらく投稿があいてしまいましたが、少しずつもとの生活リズムに戻りつつあるので投稿を再開します。

「3分ミュージアム」と題して私が世界の美術展に行った感想をシェアする記事・4回目は前回と同じくロンドンにある美術館、テート・モダンで開催されたオノ・ヨーコさんの個展です。


2024年の3月に観に行って、9月1日に終わってしまったので少し前の記録となりますが、記憶を掘り起こして紹介させていただきます。

オノ・ヨーコと聞いて、人々が真っ先に思い浮かべる彼女のプロフィールは「ビートルズの、ジョンレノンの、妻」だと思いますが、実は彼女はジョンレノンと出会うよりずっと前から、今でいうコンテンポラリーアート(コンセプチャル・参加型アート)の先駆者として、当時NYで名を馳せていたアーティストコミュニティの中でバリバリ活躍していた方です。

そして、彼女が第二次世界大戦の前に生まれて、戦後のNYと日本ふたつの国の文化を見て育ったことや、哲学を学んだバックグラウンドから、自分自身が抱いた社会や世間への「疑問」を、彼女なりにどんどん「作品」という形に変えて投げかけていきます。


お互いのコマの色が同じチェス。どれが自分のコマか覚えきれなくなったらゲーム終了。

子供の頃はとにかく世界のあらゆる物事が不思議だったけど、大人になる過程で、多くの人は色んな疑問を「そういうもの」として受け入れ、だんだんと疑問に思う習慣そのものを手放していきますよね。

ですが、彼女(だけでなく、多くの現代美術家)は、そうやって疑問に思うことを諦めてしまった多くの大人たちの代わりに、「もっとこんなふうに現実を・社会を・変えていくチャンスがあるんじゃない?」と疑問や、新しい可能性を投げかけます。

難民のボート。ここに100人以上の人が乗るなんて、信じられない。

とくに、今から50年前の西洋+男性社会の中で、アジア人の女性というステータスはマイノリティ中のマイノリティですから、そんな彼女が社会問題について声を上げ続けて、(たとえ、ジョンレノンの妻である、ということがアートそのもの以上に彼女の有名性を助長させた結果だとしても)、存在と価値が西洋社会に認められたという事実は、私たちアジア人にとって大きな功績だと思います。私も、今イギリスで生活するアジア人の女性という立場として、エネルギーをたくさんもらいました。

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そして、少しアートからは話がそれますが、イギリスに住み始めてから、少しずつ、世界情勢について学ぶことと、世界情勢を理解するために世界史を学ぶようになりました。

私が高校生の時は、世界史は自分の暮らしから時間的にも地理的にも遠くの出来事で、私の今の暮らしや人生には全く関係ないって思って興味を持てなかったのですが、今、パレスチナ・イスラエルの戦争(紛争)や、ロシア・ウクライナの戦争など、今の世界で実際に起きている出来事が全て歴史の流れの中で起こった結果であると知り、学ばずにはいられないという状況になりました。

アートの文脈で…なぜ突然の世界史?と思われるかもしれませんが、大学でクリティカルシンキングについて学ぶ中で、個人のスケールで抱えるフラストレーションと、世界規模で起こっている軋みを切り離して考えることは出来ないと思うようになったからです。自分自身を理解することと、世界を理解することはまるで移し鏡のようで、オノ・ヨーコさんのような世界的なアーティストは皆、まるで自分のことのように、世界を見つめ続けている。変えようと努力し続けている方々だと感じています。そして、そんな素晴らしいアートとの出会いから影響を受けて、私ももっと社会のこと・世界史のことを理解したいなと思うようになりました。

オノ・ヨーコさんの影響力と比べたら、今の自分はまだまだちっぽけかもしれない。でも、彼女が世界の平和を願う気持ちと、私たち一人一人が世界の平和を願う「気持ちの大きさ」は、たぶんイコールだと思うんです。だから、私たちに出来る最初の一歩は、学ぶこと。学んだことを、人に伝えてみること。悲しみや、矛盾に満ちた社会が変わることを、諦めないことじゃないでしょうか。

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ちょっと堅苦しい文章になってしまったかもしれませんが、
彼女がLoveとPeaceを本気で願って活動し続けているエネルギッシュなアーティストだ、ってことを知るきっかけになってくれたら嬉しいです。

英語版+その他の写真はインスタグラムにアップしています。

最後まで読んでいただき有難うございました!


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