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アメリカ人と読む『NARUTO』第1巻 忍の世界は色んな意味で厳しい

ひょんなことから、アメリカはシカゴに住む友人数人と一緒に『NARUTO』を読むことになった。

洋画の影響で前から本場の読書会(ブッククラブ)に憧れてはいたが、まさかマンガを読むことになろうとは。なんとなく純文学じゃないと駄目なイメージがあったけど。

とにかく、我々のブッククラブでは週に1巻ずつ『NARUTO』を読み進め、毎週土曜日(日本時間)にグループチャット上にてディスカッションを行っている。全員過去に一度は『NARUTO』に目を通してはいるものの、改めて語り合うと色々な発見が出てくるものだ。

筆者の備忘録も兼ねて、『NARUTO』の1巻を読んだ上で話し合った内容を記しておきたい。

そういえば「禁術」だったね

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まず我々の話が及んだのが「禁術」だ。

初っ端から、"落ちこぼれ忍者" であるナルトが禁術「多重影分身の術」をマスターし、「コイツぁスゲーぞ」となるシーンがある。ここでシカゴ勢がそろって引っかかっていた。

「そいやなんで禁術なんやっけ?」

言われてみればそうだ。設定的には「チャクラをめっちゃ使うから術者が危ない」から禁術とされていたはずだが、ナルトがガンガン使いまくるせいで "禁術感" が完全に薄れている。なんなら重要な戦いで毎回使うくらい「お約束」な術になっている。毎回禁を破るってすごいな、ナルト。

と、久しぶりに1巻を読み返して「みんな普段からスゲー術使ってんだな」と感心したわけだが、禁術の設定を思い出したところでもう一つの記憶も蘇る。封印の書が保管されていた部屋だ。

そもそもナルトが多重影分身の術を覚えたのは「封印の書(=禁術が記されている巻物)」を盗んだからだ。これを横取りしようと画策するミズキ曰く「巻物の術を使えば何だって思いのまま」な代物。しかし残念ながら、封印の書や保管部屋が出てくることは二度とない(アニメ版のみ最後の方で出てきた)。

シカゴ勢としては「禁術と保管部屋をもっと使ってほしかった」との意見が多数を占めていて、確かにこの設定だけでもかなり深堀りできそうな気がする。スピンオフやってくれんかな。

イルカ先生、好きだったのにな……

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次に議論の的となったのが「イルカ先生」である。

何を隠そう、筆者は第1話のイルカ先生とナルトの「師弟であり親子のような関係」にガン泣きしたくらいイルカ先生のくだりが好きだ。親子系弱いのよ。

ただ、我々は禁術と同じくらいイルカ先生のことを忘れていた。いや、正確に言うとイルカ先生の存在は覚えていたが、「ナルトにとってイルカ先生がどれだけ大きな存在だったか」を忘れていたのだ。

まぁ、小学校の頃の担任と付き合いが続いている人なんて数少ないだろう。かつての恩師の記憶が、成長するにつれて薄れていくのは妙にリアルだ。ただ、イルカ先生とは親子みたいな関係性になってたじゃないの……。

我々がイルカ先生を忘れていってしまったのは無理もない。イルカ先生は第2~3話にも辛うじて出てきたものの、第4話では「先生ポジション」をカカシに取って代わられる。しかもカカシがめっちゃカッコいいから「ナルトの先生といえばカカシだよね」とすら思うようになっちゃう(もっと進むと自来也も出てきちゃう)。

話は逸れるがシカゴ勢から「カカシっぽい先生キャラ、ジャンプに多いよな」との意見も出た。『ヒロアカ』の相澤先生(イレイザー・ヘッド)や、『呪術廻戦』の五條先生など、「ルールとかあんまり気にしない、だらしない感じの先生」は確かにカッコいい先生キャラの鉄板な気もする。

ブッククラブで僭越ながらも日本を代表している筆者は「日本における "いい先生像" ってやっぱり『真面目でキッチリ』だから、正反対な方がキャラとして面白いんじゃないかな」と推測すると、シカゴ勢も「確かに、マンガとかアニメに出てくる "いい先生" ってそういうイメージあるな」と納得してくれた。

が、ここでふと思い当たる。イルカ先生、超真面目でキッチリ系じゃん……。いや、面白くないキャラでは決してないんだけど、やっぱりカカシや自来也のような刺激的な師がいたほうが物語的にハリが出るんだろうな……。

自分で意見を出しておきながら、自分が好きなキャラの印象が薄れてしまった物語的な理由に思い至ってしまった。ツラいな、ブッククラブ。

カカシはもっとサスケの面倒見てあげて!

もうひとつ1巻を読み返して思い出したのが、「サスケって最初から結構暗いな」ということ。

ブッククラブの面々がリアルタイムで読んでいたのが小中学生だったためか「なんかクールな奴」くらいに思っていたけど、改めて読むと背負ってる十字架がでかすぎる。スリーマンセルの顔合わせで「野望は(中略)ある男を必ず……殺すことだ」って自己紹介するくらい、このときから復讐一色なんよね……。

で、めちゃめちゃ複雑なので説明は省くけども、アメリカでは「学生の心の問題」って大きな社会問題だ。シカゴ勢的にはカカシの指導で大丈夫なのか不安が募っていた。だってサスケの野望を聞いたカカシ、「やはりな……」しか言わないんだもの。ちゃんとサスケにカウンセリングとか受けさせてあげてほしい。

でもよく考えるとナルトたちってもう「職業」として忍者をやっていくわけだから、誰かを手に掛けるのは大前提といえば大前提なのかもしれない。暗殺の仕事もあるわけだし。むしろこの年齢で「誰かを殺す覚悟」ができているのは優秀とも言える。忍の世界ってやっぱり厳しいわ……。

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『NARUTO』はマンガもアニメも知っているし、筆者が友人とマンガについてワイワイ話すポッドキャスト『マンガ760』でも何度か取り上げたことがある。それでもブッククラブで(しかも1巻の内容だけで)これだけディスカッションのネタが出てくるのだから、まだまだ語り甲斐がありそうだ。

△『NARUTO』について筆者が語っている回がこちら

今後も機会があれば、ブッククラブで話したポイントを紹介していきたい。ではまた!

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