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ジャズを聴き始めた頃 マル・ウォルドロン

初めて 生でジャズのミュージシャンを見たのが 学生の頃 梅田32番街 という高層ビルの31階(たぶん)辺りにあるトイレである
レコード屋に寄ろうと思い その前にトイレを済まそうと行くと マル・ウォルドロンがハンカチで手を拭いているところだった
あと少し早ければ マルと連れションとなるところだったのだ
その後 行こうとしていたレコード屋で サイン会が始まった
マルは 髪の毛の一部をメッシュに染め 今はもう珍しくはないが 当時では新鮮なヘアースタイル エジプトの壁画に出てくるような高貴な顔つきで 指にはでっかい指輪をはめていた
エリック・ドルフィー ブッカー・リトルのコンボのファイブ・スポットのライブに参加していたので レコードジャケットの写真で  顔は知っていた

当時は「レフト・アローン」が有名だった
ジャズのユーチューブ番組で バンドをやっていた人が若い頃 おじさんからレフト・アローンを演れと うるさく言われ うんざりしていたので 『レフト・アローン』のアルバムの中では 「レフト・アローン」より「キャット・ウォーク」という曲の方が好き と言っていたが マル・ウォルドロン自身は その数倍もの レフト・アローンを演れ演れ攻撃に晒されていたらしい
実際 もうレフト・アローンはやらない宣言をしていたような記憶がある
以前 芦屋のライブハウスに 観に行った時も 店主がマルに
『アローンやれ アローンやれ』と囁き いやいや応じて すごく崩したピアノソロ(しかし最高!)で演っていた
店の名前が『レフト・アローン』ではしょうがない

「レフト・アローン」の主役は ジャッキー・マクリーンのサックスである
昔 テレビで 美空ひばりが 「影を慕いて」を歌っていたのを 母親とその姉妹(おばちゃん方)が 
『いや ええねんけどな せやけど ちょっと 感情入れ過ぎや』
と口々に評していたし 子どもながらに わたしも同感だったのだが マクリーンの場合 その感情の入れ方が 絶妙なのだ
情に溺れず 冷たくもならず
そこが 名盤たらしめた要因だと思うが わたしとしては 「レフト・アローン」は エリック・ドルフィーがフルートで演ったのがベストだ
しかし 件のYouTuberが「キャット・ウォーク」の方が好きだったように わたし的には 『クエスト』というアルバムの「ステータス・シーキング」という曲での マルのうねりまくるソロが好きだ
そんなわけで わたしは マルのうねりまくリながら上昇下降を繰り返す演奏が好きなのだが シンプルな音数で 少しずつ盛り上がる ブラック・グローリー(黒い情念)な演奏も好きだ
この時期 マルに限らず ソニー・ロリンズなんかもなのだが 少ない音の振幅 時にはモールス信号のようなソロを多様していたように記憶する
それは アントニオ・カルロス・ジョビンの『ワンノート・サンバ』の影響を受けたのかなと 勝手に推測する
知らんけと







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