「竹中平蔵氏がネット批判に猛反論!病床確保の障壁は『医療ムラ』?発信の真意は」を15分で見るのをやめた理由。
見ないで何か言うのは良くないな、と思って見たが、開始15分で見るのがキツくなって止めた。
前提を勝手に作ってしまう、主張の根拠がないに等しい、と「そもそも論」から始めなければならず、内容の是非以前にその論を、議論の土俵に上げる負担が大きすぎて聞いていられない。
一文聞くごとに、
「なぜ、それがそれの根拠になるのか?」
「質問を言い換えているだけで答えていない」
「それは前提として共有していないのに、なぜ当たり前のようにそれを前提として話すのか」
「逆に、もう一年半前から言われていることを、なぜ前提に組み込まないのか」
などなど、「はてな?」と突っ込みが追いつず、聞く負担が大きすぎる。
開始10分くらいで「何がおかしいか」「どうしてこれが続くと聞く意味がないと思うのか」はすぐにわかるので、まあそういう意味では親切なのかもしれない。
まずは「重症者2000人に対して、日本には病床数が160万ある。それなのに対処できないのは、おかしいと思わないか。自分はそういうことを1年半前からずっと言っている」という問題提起から話が始まる。
しかし、「おかしいと思わないか」と言われても、
ベッド数があっても重症者対応しているベッド数はない。
仮に重症者対応のベッドが足りていたとしても、人手が足りない。重症者一人当たりにつき、何人もの医療従事者が必要だ。
ということは、それこそ一年半前から言われている。
今の時点で「医療ひっ迫することがおかしいという問題提起の根拠に、日本の総病床数を持ってくること」自体が、不誠実だと思う。
この時点(開始五分)で既に見る気が失せているのだが、まあこのあと話が軌道修正されるのかもしれないし、と我慢して見た。
しかし、話はさらにおかしくなっていく。
(6分28秒)
「とにかく病床を増やして、重症者をちゃんと守るようにしよう。(略)とにかくちゃんと安心して医療が受けれるようにしようと。だって160万もベッドがあるんですから」
太字にしていないところが尤もらしいことを言っているので、聞き逃してしまいそうになるが、太字のところだけだと明らかに矛盾している。
「病床は足りていると思っているのか、足りないと思っているのかどちらなのか?」
「総病床数は足りているが、重症者対応の病床は足りないと言いたいが、二つとも『病床』という言葉でまとめてしまった」(仮に「病床」と「ベッド」が違う意味なら、「だって」はどこにかかるんだ、という話になるため、「病床」と「ベッド」が違う意味とは考えられない)
これも番組開始当初から「病床」と言う言葉を区分けして使用している場面がないので、他人が聞いたら同じもの指す語としか認識しないのは当たり前だけど(同一律を無視している)まあそういうつもりで話しているが、言い方がそうなってしまった、と言われればリアルタイムの会話ではそういうこともあるかもしれない。
ただ仮にそうだとしても
「一年半前からずっと言われているなぜ、160万のベッドをコロナ対応、もしくは重症者対応に出来ないのかの理由」
を踏まえて論を組まなければおかしい。
その論?が小泉元首相の名言?
「出来ない理由を言うのではなく、専門家ならどうしたら出来るか案を持ってこい」
ではお話にならない。
「出来ない理由」への対応がこれでいいなら、医療だけではなくどの分野のどの課題も、議論する必要すらない。
この先もずっとこの調子なんだろうな、と思ったので見るのが馬鹿馬鹿しかったが、もしかしたらこの後は違うかもしれない、もう少し頑張って見ようと思い続けて見た。
(6分51秒)
「そこで出てくるのがいわゆる『医療ムラ』。こちらが病床を増やすことを妨げている、と。解体しないとよくならない」
これは司会の人の言葉だが、「病床が増えないことが現在の問題」ということが問題提起になっている。
この「増やすことが妨げられている病床」が「総病床数」なのか「感染症対応の病床」なのか「重症者用の病床」なのかは、この時点でも分からない。
①160万も病床があるはずなのに、何故、重症者2000人の段階で医療はひっ迫するのか。
②それは160万の病床がそもそも感染症に対応していないから。
③160万あるベッドが感染症対応に出来ない理由は、一年半前からずっと言われている。
④では、その出来ない理由を踏まえたうえでどう対策を取るか。
現在の問題提起は恐らくここまで進んでいるのは、大して知識がない自分でさえ何となくわかっている。
そういう現状に対しての最初の問題提起が、
「重症者2000人に対して、日本には病床数が160万ある。それなのに対処できないのは、おかしいと思わないか。自分はそういうことを1年半前からずっと言っている」
「そこで出てくるのがいわゆる『医療ムラ』。こちらが病床を増やすことを妨げている、と。解体しないとよくならない」
これである。
話が一年半前の状態に戻っているのだ。
さすがにそれでは拙いと思ったのか、「足りないのは重症者対応の病床数で、それがなぜ増やせないのか」という観点を番組がこのあと入れるし、「重症者用の、もしくは感染症対策のベッドがなぜ増やせないか」は一年半前から言われていたと夏野氏が突っ込みを入れている。
これでようやく議論が始まる前提が共有されて、「現状を把握した問題提起」が行われた。
この時点で11分51秒という負担がかかっている。
本来であれば議論の前提であるはずの、「現状を把握した問題提起」にたどり着くまで12分近い時間が費やされている。(しかも他人からの突っ込みが入ってやっと)
ちなみにこのやっとたどり着いた「現状を把握した問題提起」に対しての答えが小泉元首相の
「出来ない理由を言うのではなく、専門家ならどうしたら出来るか案を持ってこい」
この言葉であることが決定打となった。
ネットで話題になっている「格差を拡大した」という批判に対する反論を見ようと思ったけれど、恐らく反「論」ではないだろうとこの時点で考えたのでそれでは見ても仕方がないと思った。
余談として
10分20秒からの「保護されている人は時間がある」から始まる話は、話の組み立て方のどこがおかしいかを純粋に考えるぶんには面白い。
14分20秒くらいの、「感染症の専門家なんて、三か月や半年訓練すれば出来るはずだ」「小泉首相はよく『出来ない理由を言うのではなく、専門家ならどうしたら出来るか案を持ってこい』と言っていた」からの、
「あのその意味で言いますと(略)コロナ禍始まってからの阿倍政権、菅政権というのは、これまでの内閣に比べればですね、官僚をまあ操って、コントロールしてですね、政治主導で進めるという意味では、これまでよりは長けていた内閣だと思うんです。
ところがそれでも出来ないのは何故なのか?」
「それは、凄く抵抗勢力が強いからだということだと思うんですよね」
この流れはニヤニヤしてしまった。
そこは「出来ない理由を言うのではなく、専門家ならどうしたら出来るか案を持ってこい、とここで明言します」
ぜひこう言って欲しかった。
まあ番組としてはそれなりに公平な作りにしようとしていたのが、救いだった。
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