兄妹の文化圏

 三つ下の妹がいるのだけど、僕たち兄妹の間でドラえもんの話題が出たことは一度としてないな。ということをふと思った。

 子供時代、おそらく家で一緒にドラえもんを観たことはある。特に毎週観ていたわけではなかったけれど、日本国民として当然認知はしていたし、たまたまタイミングがあって観るくらいのことは何度かあった。それでもその後、「あの時のあの話さー」とか「ひみつ道具どれがほしい?」とか、そういう類の話になったことはない。
 一緒に劇場版を観たことなんて一度もない。映画館には行っていないし、ビデオを買ったりレンタルもしていない。
 つまり我々兄妹にとって、ドラえもんは空気だった。

 別にそれは悲しいことでも何でもない。ただなんとなくこの事実が不思議だな、と思った。現代日本に生きていながら、たった三つしか年の離れていない兄妹の間で、一度もドラえもんが話題に上がらないことってあるんだなあ。という感じ。
 他の作品の話だったらよくしていた。ドラゴンボール、スラムダンク、セーラームーン、赤ずきんチャチャ、魔法陣グルグル、こどものおもちゃ、HIGH SCORE、ジブリ、ディズニーあたりが我々の共通言語。あとはKinKi Kidsとか。同世代と言っていい年齢差だが、性差があるにも関わらずこれだけたくさんの話題を共有できていることに、わずかながら嬉しさを覚える。
 そういうようなことを思わずLINEして、2,3のやりとりで終わった。まあ、適切な距離感だと思った。

 きょうだいの文化はきょうだいの数だけあるんだろうな、という当たり前の事実を噛みしめる。ドラえもんが共通言語のきょうだいなんてごまんといるだろう。
 人には人の、文化圏。

(708字)

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