身近な宗教
自宅の近所に、とある宗教施設がある。それなりに名が知れているであろう新興宗教団体の、小さな集会所のような場所である。
ある夜の帰途、その施設からバイクに乗って出て行こうとしている人がいた。
その時思った。「ああいうところの人もバイク乗るんだ」。
そりゃ生きてるんだからバイクにも車にも乗るだろう。しかしなんとなく、そういう宗教に関わっている人がバイクに乗っていることへの違和感があった。極端なことを言えば、信者の人たちというのは本当につましく、趣味もなく、教義だけを生き甲斐に暮らしているものだとばかり思っていたのだ。ただそれはフィクションでよく描かれる、いわゆる悪の権化としてのステレオタイプな面しか目にしていなかったためだろう。記号的に描かれるその人たちの生活感などは、ほとんど目にする機会がない。
彼らも同じ時代を生きる人間なのだ。バイクに乗り、スマホでYouTubeを鑑賞し、ネットで映画の予約をし、納税し、SNSの裏垢を持っているであろう、普通の人なのだ。
幸でも不幸でもなく、僕はそういう組織の中に入ったことがないので想像することすらなかった。ただ、知らない世界だと思っていたところにも自分のよく知る文化がある。地続きなのだ。不思議だ。
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