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妄想短編:「誰が為の夜に何者かは歌を口遊む。」


※もしも自分の作詞で短編小説が出来たらと妄想して書きました。
 何となく作詞の情景が浮かんで頂ければと。



妄想短編:「誰が為の夜に何者かは歌を口遊む。」より

トラック1 月




自分は何者であるか。

何度も考えた。

ある時はアラブの石油王並のお金持ちになって、自分の思うがままの欲望を叶える成功者。
ある時はサクセスストーリーの主人公で、アオハル満載なライトノベルの壁ドン系イケメン男子。
色んな何者を考えたが、全て妄想の中の自分であって本当の自分ではない。
一番近いのはこうでありたい、こうなってみたいと請うだけのつまらない人であった。

自分は何者であるか。

おにぎりはあたためますか?

夜のコンビニでバイト中、お客さんの商品をレジ打ちしている時に思う。
バイトが終わり、特に予定が無いのでまっすぐ家路につこうと自転車に乗って漕ぎ出す時に考える。
昔、自分はこうなろうとする何者があった。情熱に近いものが突き動かす動力となっていた。

いつからだろう、自分が何者にもなれずつまらない人になったのは。
いつからだろうと考えている時に、信号機が赤信号なので止まった。
横断歩道の向こう側、待っている男女。行き交う車の騒音の中、ふと見上げた先にある月は静かに佇んでいる。




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