17/06/2020:『What's Going On』

昨日から始めたnoteだが、こうしてテキストに書くのは今日が初となる。(昨日はつぶやきだった)

僕が住んでいる国では3ヶ月ほどの厳しい自粛期間を終えて、徐々に緩和した形で人々が、街が、国が日常を取り戻しつつある。

とは言っても、この国のほとんどは、”街”ではなく、”村・集落”なのだが、「日常を取り戻しつつある」その”日常”はあくまでも僕が住んでいるあるいは僕らが認識している範囲内での”日常”であり、遠く離れたしかしそこかしこにある当該村落部でのそれではない。彼らの日常は、今回の世界的騒ぎの中でどんな影響を受けたのだろうか。あるいは、影響そのものはあったのだろうか。

ジャレッド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』を思い出す。冒頭のパプアニューギニアでの話だった。”インテリジェンス”の相対性について。

”大都会に住む我々は、彼ら危険な世界に住み、貧しいと思うかもしれない。しかし、先住民のようにこの自然の知識がない僕は、この森の中では弱者だ。”

みたいなことが書かれていた気がする。

違う宇宙観で生きていることを僕らはエキゾチズムやノルタルジーなんかで括ろうとするが、そうではなく現在進行形で起こっていることであり、起こっていることである以前に、ずっとそこにあって、それであり続けただけなのだが。

今回の騒ぎで、世界の価値観が変わったとあるが、どこの世界の話なのだろう。

パプアニューギニアのジャングルの宇宙も変わってしまったのだろうか。

バルガス・リョサ『密林の語り部』には、

”布教と教育が先住民にまで届いた結果、彼らは「そこを出ることが進むことだ」と思ってしまう。宣教師はよりよい現代的な生活を勧め、その知識を与えるからだ。しかし、森を捨てて街へ出た後、中途半端にスペイン語を話し何も知的武器を持たない若者は、犯罪に手を染め、体を売ることでしか生きていけない。同時に森は人を、世界を失うのだ。”

みたいなことが書かれていた。

今まで僕らが得てきたことと、その脇で多くを失ってきた誰か。

そして今騒ぎで僕らが多くを失っている中で、今まで失なってきた側にいた人たちには、どんな変化があったのだろうか。いや、変化があったのだろうか。

あったとしても、それは僕らの宇宙を原因とした変化で、彼らの宇宙そもそもの変化とは何ら関わりがないものだ。


そして今日もまた、等しく夜がきた。

増え続ける車と、減り続ける宇宙観。

それでは聴いていただきましょう、今夜の一曲目、そして本番組の記念すべき一曲目は、こちら。

Mavin Gayeで、『What's Going On』です。







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