月光のオフィーリア　女性２

男0：女2
制作者：斉藤しおん

グロリア：結婚を控えた皇女様。学園では腫れもの扱いされている。
リィ：一般家庭から学力だけで名門の学園に入学した少女。目立つのが苦手

グロリア：愛してはいけなかった

リィ　　：この恋は子羊である私達にはふさわしくない

グロリア：あってはいけない

リィ　　：禁じられたものだったのだから

グロリア・リィ：（タイトルコール）月光のオフィーリア

グロリア：ねぇ、リィ。私が貴女を好きだと言ったらどうする？

リィ　　：身分違いも甚だしいと庶民の私は丁重にお断りします

グロリア：成績がいいからこの学園に入れたのでしょう？
　　　　　身分なんて関係あるかしら

リィ　　：あります。だからこそ誰にも目を付けられないようにひっそりと私はこの学園を卒業しなくてはなりません。あなたのような地位の高い皇女様のお傍に居ればなんと言われるか……

グロリア：気にしなくていいのに……貴女までみんなと同じことを言うのね

リィ　　：貴女は地位を生まれながらに持っていたから言えるのです。持たざる者は貴女のことを上から見上げるだけで恐れ多いのだから

グロリア：私の王位継承権は7位よ。誰も殺そうとはしないわ、目もくれない。だってもっと上がいるもの

リィ　　：貴女でさえ私には高い位の尊い御方なのですよ

グロリア：私達、いつも隠れてランチをして同じことばかり繰り返すのね

リィ　　：貴女様が私を好きだというからです

グロリア：名前だって一度も呼んでくれない

リィ　　：恐れ多いから

グロリア：貴族も庶民もみんな見えないものに縛られているのね。私はただ貴女と仲良くなりたいだけなのに

リィ　　：恐ろしいです

グロリア：でもランチはご一緒してくれるわよね？　ふふっ

リィ　　：隠れてなら……バレないなら……それはないのと同じことだから

グロリア：そう、やっぱり貴女は賢いわ。そういうところが好きなの

リィ　　：そうですか。でも、お気に入りになって連れ歩かれるのは御免です

グロリア：そんなことしないわ。でも、夜逢いましょう。約束よ。この鍵を渡すから学園の鐘の下にある塔に来て頂戴。お話をしましょう。もっとたくさん

リィ　　：友達が、いないのですね

グロリア：えぇ。もうすぐ結婚するの。出ていくまでの間、もうこの学園での私は透明人間そのものよ。だから誰も見向きもしないわ。貴女まで見てくれないなんてそんなの嫌よ

リィ　　：そうですか。ではその期間だけ友達になりましょう。鍵を預かります。必ず毎晩、鐘の下にある塔に伺います。

グロリア：ありがとう。嬉しいわ

リィ　　：（それから私たちは毎晩たくさんの話をしました。時折、遠くを見つめるグロリアの頬は月光に光って美しく白く輝いていました。私はそれを一生忘れることはないでしょう）

グロリア：今日で最後の日だわ

リィ　　：寒い場所に行かれるのですか

グロリア：えぇ、北へ。顔も知らない王子様と結婚するそうよ

リィ　　：寂しいです

グロリア：そう思うなら私の欲しいもの、貴女はくれる？

リィ　　：え？

リィ　　：（ぐらりと窓枠に腰かけた体が傾く、落ちる。そう思って私は尊い友人に手を伸ばしました）

リィ　　：グロリア！

リィ　　：（ガラスが割れて絡み合った手から血が伝う。あぁ、純潔同士が結び合うこんな悲しい抱擁があっただろうか）

グロリア：うふふ、ようやく呼んでくれた。ありがとう、名前を呼んでくれて。ありがとう、私のために手を伸ばしてくれて。貴女になら全てを捧げてもいいと思えるの。
　　　　　この学園でそんな人に出会えてよかった……好きよ、リィ

リィ　　：私もです、グロリア

リィ　　：（叶わない恋だと分かっていた。だけど私たちは二人抱き合い、ガラスで怪我をした指先を絡め合って、初めてのキスをした）

グロリア：（オフィーリア　処女性の喪失　喪失の狂気　そう、私はあの時狂ったのかもしれない、愛したのはあの子だけ……あの子もそうだといいのに……北の地で、ひたすらに私は願う）