見出し画像

1on1ってそもそも自社に導入できる"準備"が整っていますか? ~組織においてコーチングを広める戦略的な"仕掛け"の必要性

半期に1度くらい、かなり分厚い英語文献の本を、分担して訳し、研究者・実務家が一緒になって勉強する読書会を企画しています。

今期は、Douglas D.Riddle(2011) "The Center for Creative Leadership Handbook of Coaching in Organizations"という、組織の中でコーチングをどのように導入・実践するかという内容の書籍を扱いました。

The Center for Creative Leadershipは、アメリカの非営利団体で、リーダーシップ開発で定評があり、その一環で、コーチングの研究にも力を入れています。

本書は、600ページ超の分厚さで、"自立する書籍"ですが(笑)みんなで分担して、13章分を読み込みました。

かなりの厚さのおかげで、組織の中でコーチングを導入・実践し、文化まで昇華していく際に留意すべ点について、たくさんの示唆を得ることができました。

個人へのコーチングだけでなく、同僚同士のピア・コーチング、チームを対象にするシステムコーチングや、キャリアにより重きを置いたメンタリングといった周辺領域や、取締役チームへのコーチングなど、コーチングをシステムとして捉え、統合的に制度を整えていく重要性が強調されていました。

最近の人材開発のトレンドとしては、1on1の導入が広まっていますが、そもそも、1on1が自社のカルチャーに合っているのか?リソースで対応できるのかを検討する必要があるのだと思います。

そして、仮に、導入できるとしたら、中長期的な時間軸に立って、他のHR手法と組み合わせながら、戦略的に定着を促せていく、したたかさが必要になるのだと思います。

▽▽▽

下記、章ごといくつかポイントを記載していきたいと思います!

第1章 組織の中でコーチングを増やす
第2章 組織におけるコーチングのニーズを評価
第3章 統合的なコーチングシステムの創造
第4章 コーチングの介入評価
第6章 脱線したリーダーへのコーチング
第7章 高い潜在能力を持ったリーダーの育成
第8章 トップへのコーチング
第11章 コンテクスト(文脈・環境)におけるコーチング
第12章 リーダーシップ開発のためのメンタリング
第13章 みんなのコーチング
第16章 チームコーチング
第17章 取締役陣へのコーチング
第18章 組織変革

訳は、ご担当くださったみなさまのものを参考にさせていただきました。
ありがとうございました!

当日は、冒頭に、佐藤典子先生から、2019年にボストンで開催された、Institute Of Coachingの年次総会の中で、最先端の研究として、どの様なトピックが取り上げられているのかについて、シェアしてくださいました。

みなさま、お忙しい中でのご参加、ありがとうございました!!

▽▽▽

Institute Of Coaching年次総会のシェア

佐藤先生がInstitute Of Coaching年次総会に参加された時のボイヤッツ教授のお話しをシェアしてくださいました。

質問が肯定/否定的かで、脳内ホルモンの分泌が異なるため成果が変わってくるそうです。

例えば、

・肯定的:なりたい理想的なリーダーとは?
・否定的:なりたくない最悪のリーダーとは?

肯定的な問いかけの重要性は、コーチングの実践の中で、従来から言われていたことですが、こうした、医学的/ 生物学的な効果検証のアプローチは、今後も増えていくのだと思います。

Paul J. Zack博士も、神経経済学という領域に取り組み、血液中のホルモンの状況を見ながら、組織における信頼について研究されています(『TRUST FACTOR トラスト・ファクター~最強の組織をつくる新しいマネジメント』もおすすめ)。

画像1


▽▽▽

第1章 「組織の中でコーチングを増やす」

* 組織の中でコーチングカルチャーを形成することが重要
* リーダーに求められる能力の変化により育成のアプローチも変化させる必要がある。
* 育成を、メンバーの個々に合せてカスタマイズする必要がある。
* そのためにも、内部コーチを充実させるためのサポート/ 投資が必要となる。

▽▽▽

第2章 「組織におけるコーチングのニーズを評価」

* 組織にコーチングを導入する際は、5つのステップを通じて考えることが重要
➀組織におけるコーチング活用状況をまずは評価
②コーチングが組織にとって適切な手法かを判断
③組織にコーチングを受け入れる/ 実施するレディネスがあるかを評価・構築
④組織内で活用できるキャパを確認
⑤組織内でのコーチングに関する事例集を作成
 →過去にコーチングがうまく機能せず否定的な見方を持っている人が
  意見を変えるきっかけになる

▽▽▽

第3章 「統合的なコーチングシステムの創造」

* 組織の中で下記を統合的なコーチングシステムとして展開するのが重要
➀エグゼクティブコーチング
②メンタリング
③ピアコーチング
④HRによるコーチング
⑤マネージャーによるコーチング
⑥デジタルツールの活用
 →従業員が設定した目標についてのリマインドシステム
 →書籍や記事等の知識の今日うう
 →自分自身の行動を音声や動画で記録
⑦チームコーチング

▽▽▽

第4章 「コーチングの介入評価」

* コーチングの効果検証は個別性が高く難しい。
* 評価する観点としては、
➀パフォーマンス改善
②能力開発(行動変化)
③態度変化(エンゲージメント等)
④対人関係
⑤業績指標

→成果を数字に残すのが重要
→コーチングの介入内容も併せて確認し、プログラムの軌道修正に活用していく

▽▽▽

第6章 「脱線したリーダーへのコーチング」

* 効果的でないリーダーは50%近くいる(Gentry、2010)。
* リーダーが次のレベルでも過去と同じような仕事の仕方をしようとすると、失敗する可能性が高まる。
* また、周囲のメンバーも、「彼/ 彼女なら違う仕事をしても成功するだろう」と思うバイアスがある。
* そう言った無意識のバイアスに対して、コーチングを通じて気付きを促す必要がある。

▽▽▽

第7章 「高い潜在能力を持ったリーダーの育成」

* 短期的な視野でなく、将来の組織が必要とする人材を育成指定事が重要。
* そのためにも、HRの戦略に対する理解が不可欠。
* コーチングの際はRACSRを意識
Relationship リーダーとコーチとの関係性
Assessment 状況に対しての意味づけ
Challenge チャレンジを特定し、なぜそれが重要かを理解
Support 学びのプロセスの中で支援を得て、
Result 最終的に明確な結果を得ることが可能になる。

▽▽▽

第8章 「トップへのコーチング」

* トップの行動の背景にある意図と、現場への影響にはギャップがある
⇒HRがデータで、ギャップが存在していますよ!ということを、
 見える化して気づかせる必要がある
* 成功したリーダーは、過去の強みをアンラーン(学びほぐし/ 学習棄却)することができない
* 複雑化している今日のビジネス環境においては、リーダーがすべての答えを持っていないという自己認知が必要(McGuire & Rhodes, 2009)

▽▽▽

第11章 「コンテクスト(文脈・環境)におけるコーチング」

* 組織文化の研究を行ったエドガー・シャインは、個人と組織の両方を同等に見ずに組織内の課題を語る問題を指摘している。
* トップは、自分達が埋没している文化を一歩下がって客観的に見る必要がある。
→自組織の中にいると、なかなかそれに気づくことができない。
* コーチは、企業文化からの影響とクライアント自身を見る2つのレンズが必要

▽▽▽

第12章 「リーダーシップ開発のためのメンタリング 」

* メンタリングは、コーチングよりキャリアに焦点を当て、問いかけだけでなく、アドバイスや精神支援も行う存在。
* フォーチュン500企業の70%でメンタリングの動きがある。
* 機能しないメンタリングには下記の5つの特徴がある。
➀両者の価値観の不一致
②メンターの関心の欠如
③両者がお互い学び合わない
④メンターの自己利益への誘導
⑤両者が質の高い関係性が築けない

▽▽▽

第13章 「みんなのコーチング 」

* CCLが開発した、Creative Leadership Conversationsのアプローチは、Be・Know・Doという3つの領域に働きかける

○Be:
 安全な対話空間において、他者との関係性の中で⾃⼰理解を深める

○Know:
 理論・思考法の共有

○Do:
 ➀話し始めるきっかけ作り
 ②質問での探求
 ③アクション設定

▽▽▽

第16章 「チームコーチング 」

* 業務の複雑性が増し、相互依存性が高まる中で、"チーム"として働く重要性が高まっている。
* チームコーチングは、ティーチングとタスク遂行の効率化、チームワークをの向上を意識することでシェアド・リーダーシップを開発することにも繋がる。
* チームビルディングにおいては、メンバーの役割や能力を理解する時間を初期に持つのが大切。

▽▽▽

第17章 「取締役陣へのコーチング 」

* 取締役陣へのチームコーチングに取り組む際、HRのリーダーは、重要な役割を果たす HRのリーダーが、コーチングを行うことで、取締役陣が、自分自身で抱える問題の解決に取り組めるようになる。
* そのためにも、取締役陣と密な関係性を築く必要がある。
* 取締役陣との信頼関係を超える権限を、HRのリーダーは持つわけではない。
→HR領域での高い専門性からの支援で存在感を果たす。
 (例:今後プロモーションするメンバーのキャラクターへの深い理解等)

▽▽▽

第18章 「組織変革」

* 組織変革は、組織のリーダーシップの形を変化させること。
* 従来のリーダーシップに必要なスキルの習得支援だけでは不十分である。
* 組織の変革は個人とチームが同時並行に取り組むことが必要。
   個人の準備が整うことなしに、チームが変化することはない。
* コーチングは、メンバーのお互いの認識の違いを理解する
  学習プロセスを支援する必要がある。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?