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ヨガと筋膜と骨盤のゆがみ


今回は臨床談です。


今回のクライアントの主訴は、全体的な身体のバランスの乱れが気になるようで、側弯になってきている気がする、腰痛がある、アーサナー(ヨガのポーズ)が快適に行えない、というものでした。


これだけ聞くと大腰筋あたりが一番初めに思い当たるのですが、検査をしてみると大腰筋に明らかな変異があるというよりも、確かにご自分で話されているような、なんともいえない身体全体のゆがみがあります。


こういう時、ここから全身のゆがみがきているかな、という箇所が(当たっているかはおいておいて)大抵あるのですが、それも見つかりません。


骨盤を見てみると多少のオシレーションもあるにはあるのですが、どういうズレかたをしているのかがイマイチ分からないような状態で、クライアント自身もそう感じているのだろうなと思いました。


今回はまず、身体の筋膜のねじれや、大きな関節、大筋群へアプローチし「雑魚を蹴散らし」ます。


その後に骨盤を再検査をすると、耳状面を考慮した「セオリーとして考えやすい」ゆがみかたになっていました。


そうやって、いくつもあるドアのカギを解いて開けて行き、今回の最後に残っていたのは……やはり大腰筋でした。


この臨床の内容と、クライアントの主訴とを照らし合わせると、なるほどな、というものです。


施術中にお話を伺っていると、ご自分でもいろいろな健康法や治療法を試しているようで、


おそらくそれが残念ながら良いほうへ作用せず、筋膜や靭帯が、また筋肉も、生活習慣などで予想できる範疇を超えた機能不全を起こしたのだと思います。


ただ、セルフケアは大事ですし、私はやるべきだと思っています。
しかし不必要なケアをあまりにもグリグリと続けてしまうと、シワ寄せのようにシワがシワを生んでしまい、混沌としたゆがみになってしまいます。


そういった時の人の身体は、エントロピー増大の法則のように「無秩序で安定」した状態になっているといえるかもしれません。


もちろんなにもせずにじっとしていてもエントロピーは増大してしまいます。
(マウスの実験で、不活動状態が長いと筋膜の結合組織の線維の統一性が失われるという、顕微鏡ベースでの研究報告もあります)


逆にエントロピーの少ない状態。
それは秩序を持ち不安定(=良い意味でゆらぎがある)状態。動的な平衡状態とも言えるでしょう。


人は構造物の側面もありますが建造物ではなく、このことを私たちアプローチ側も、受け手であるクライアント側も、より理解できると良いのだろうなと感じました。


その後、クライアントの方から「気になっていた腰痛は無くなり、快適にアーサナーを行えている」というご連絡をいただきました。


今後オステオパシーと並行して、重力と調和を持たせシントロピーを増大させるようなフィジカルトレーニングを行い、


身体の安定感と動作を洗練させていければ、ヨガを含め公私ともにより良いライフスタイルへつながっていくでしょう。


時節柄、体調や環境に気をつけなければいけない時期ですが、一人ひとりがやるべきことのためにエネルギーを使えば、エントロピーの増大もいずれ収束をします。


そのエネルギーを上手く使うために、自分たちの心身のエントロピーが高くなりすぎないよう、あまりストレスを感じない安全な場所で、軽い運動や深い呼吸をしましょう。


どうしても自分で上手くできないような時は、オステオパシーなどの徒手療法や、適度な運動量のピラティスやヨガで心身の調和をとるのも良いでしょう。


当然こんな時だからこそ、指導者側も「医者の不養生」にならないようにすることも大切です。


また、運動をあまりやったことのない方も、今は多くの方が動画配信などをしてくれています。ぜひチャレンジしてみましょう。


もちろん私に聞いていただいても結構です。




染谷 清行

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