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背骨のアーチと筋トレ【4】~シャーシとエンジン~


背骨のアーチと筋トレ【3】 の続きになります。

筋トレには、レジスタンストレーニングとファンクショナルトレーニングという二つに大別する考え方があります。

シンプルに表現すると、レジスタンストレーニングは筋肉を鍛えるトレーニング、ファンクショナルトレーニングは動作を鍛えるトレーニングと言えます。

今回の「背骨のアーチと筋トレ【4】」は、「背骨のアーチとファンクショナルトレーニング」と読み替えていただいても良いかもしれません。


前回の続きですが、アナトミートレインの筋膜のラインのほとんどは足部から頭部まで連続しているようで、

・頭部まで伸びているが足部まで伸びないもの=バックアームライン
・頭部にも足部にも伸びないもの=フロントアームラインとファンクショナルライン

となっています。


どちらも頭部から足部に伸びていないのですが、運動分野で考えれば、

・フロントアームラインは上半身(上胸部と上肢)で完結していること
・ファンクショナルラインは上半身と下半身にまたいでいること

この二つは大きな違いになるでしょう。


フロントアームラインに関してトレーニングではベンチプレスが思い当たります。

ウェイトトレーニングの中で特にベンチプレスは、懐疑的なアスリートや指導者がいるように感じますが、それはこのことを何か経験的に感じているのかもしれません。

当然ですが効果を出せるかは目的とやりかた次第で、筋膜経路が独立しているからといって、力の伝わり方が必ずしも独立するわけではなく、

その他の筋膜ラインやその他の要素と連結・分離して、身体は目的の動作を遂行しようとするでしょうから、それを踏まえたベンチプレスのやり方が大切になります。


ファンクショナルラインに関してですが、このラインは前後左右で収縮伸長を行いバランスを取ると考えられているようで、

確かに実際の指導の時に、上手にバランスが取れない、どこかの四肢などにウェイトを乗せられないという時、ダイレクトに体幹が捻じているケースが見受けられます。

その時はこのファンクショナルラインに関係した広背筋や大臀筋、内転筋が、また腹斜筋も上手にコントロールできてないことが多いかなと感じます。(細かい筋や関節はここでは割愛)


ステーショナリーランジの姿位で、身体をツイストするイメージをしてみましょう。

まず骨格が幹となり、それを補完するように足部から頭部へ伸びるアナトミートレインが、身体の構造を安定化させます。

この安定化した身体を幹に、前後左右のファンクショナルラインの筋肉が互いに収縮、伸長して身体をツイストさせていきます。

表面的な動きはシンプルに言うとこれだけです。


この一連の動作で、安定化させる筋群と動きを担う筋群の大部分は背骨(≠軸骨格)に付着していますので、相互に関連しバランスとりながら「シャーシ」となり、パワフルな「エンジン」の作用を伝えていきます。

(平衡感覚のための重要器官が背骨のトップの頭部にあることも忘れてはいけません)

もちろんどの部位がこの「シャーシ」と「エンジン」の役割を担っているかをスパっと切ってセパレートできるものでもないですし、動作の変化時に瞬間瞬間でその人の持つ個性を含めた動きを行うでしょう。


例えば、座位で能力を発揮できるのに立位で発揮できない場合、それは立位の安定を担うラインが崩れ「シャーシ」が崩壊し、重力線がずれ、「エンジン」エネルギーのエントロピーが増大してムダが多くなっている可能性があります。

この状態は言い換えれば背骨のアーチが崩れている状態とも言えますが、ファンクショナルトレーニングをチョイスするとき、目的はあらゆる面での動作の向上でしょうから、これでは目的の遂行にならないかもしれません。


この時に大切なのは、シャーシを安定させ、エンジンの力をコントロールし、目的の動作と、動作の目的をきちっと遂行することです。
(スナッチで80kg挙げることや、平均台の上でバク転スワンをすることは同じではない。またそれを競技として行うかトレーニングとして行うかでも違う。これは目的の動作も動作の目的も全く同じにはならないと言える)


ですので背骨のアーチの安定は、力学的にウェイトを担ぐためだけではなく、こういったためにも必要になってきます。

それは背骨のアーチが高重量でのバックスクワットの時とは違うかたちでも安定状態になる必要があると言えるでしょう。

ちなみにここでは触れていませんが、呼吸も非常に重要になります。




染谷 清行

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