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アジリティを追求することと急いでやることは同じようで全然違う。

こんにちは!2020年に東京から埼玉県に引っ越してきて、友達とスタジオサイタマという会社をやっている加藤といいます。

組織に属して仕事をしたことがある方なら誰でも一度は経験したことがあると思うのですが、「とにかく急いで実行しよう」というムードが先行して、ものごとが進んでしまう時ありますよね。

確かに、新しいことを実施する時など、多くの場合はやってみないとわからないことの方が多いので、正論のようにも思えますが... 実際そういった場面に直面すると「ちょっと待って、それは違くない?」っていう違和感を感じたりしたことありませんか?

この違和感は「急いで実行すること」と「アジリティを追求すること」を混同していることに起因すると思うんですよね。これが意外と起きている気がする...

「アジリティの追求」がビジネス的な成功をおさめる上で重要であると言われ始めた背景として、今のビジネスを取り巻く環境が不確実性が高いものであるということがあります。

市場のことはよくわからないのだから、Build(実装)・Measure(計測)・Learn(学習)のサイクルを素早く回し、市場から細かくフィードバックを得ながら成長するということを目指しましょうね、Buildの段階では検証を進めていくために必要な最小単位の施策・MVP(Minimum Viable Product)でスタートしましょうね。というリーンスタートアップの基礎的な考え方です。

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この考え方はソフトウェア開発の文脈で語られることが多いですが、今では業界職種問わず普遍的に信じられている考え方になったと思います。僕自身、新卒1年目からIT業界の開発現場で生きてきましたし、途中からVRスタートアップにいたので、いやというほど身に染み込ませようとしてきました。

ですので、ここで改めて言いたいのは、「急ぐこと」とはアジリティを追求することと同義でなく、もっというと、「急ぐこと」はアジリティを追求する上では本質的でないということです。

アジリティ追求の目的と本質

まずアジリティ追求の目的をもう一度端的にいうと、環境の変化に俊敏に反応できるようにして、プロダクトや事業の価値を最短距離で高めよう、というものです。

変化に俊敏に反応できるとは、結果に対しての正しい評価ができ、アクションが取れるということですので、実施事項の検証可能性をあらかじめ高めておく必要があります。(= Measure/計測指標の設計)

検証可能性を高めるには、検証したいことに直接結びつかない商品の機能や施策のプロセス、労力を取り除く必要があるので、検証目的に沿って実施スコープを限定的にする必要があります。(= MVP/実用最小限の製品の設計)

アジリティ追求の基礎は、「急いで行動しよう!スピード!もっと!」という速度を早めるアプローチとは真逆の、走る距離を短くしようとする設計作業に肝があるというわけですね。

アジリティ追求の基礎2ステップ
1. 実施事項の検証可能性の設計(= Measure/計測指標の設計)
2. 実施スコープを限定的にする(= MVP/実用最小限の製品の設計)

急いでやるとMVPを見誤る

「急いでやる」という状況の時には、設計プロセスが排除される場合が多いです。

納期が近いので、急いでやる。すでに時間をかけすぎてしまったので、急いでやる。など、ネガティブな因子ドリブンで「次のアクションを急げ〜い!」「とりあえず出せ!」となっている時が多くないですか?

こういうケースでは、「急ぐこと」そのものが目的化します。結果、作業や製品の製造をフルスコープで実施することになります。(MVPの見誤り)

急いでやると失敗した時に方向転換の仕方がわからない

設計作業をすっぽかしたために、フルスコープでしらみつぶしに作業を実施するという姿勢になってしまった場合、その時点ですでに最短距離を走れなくなっているのですが、次の段階の検証フェーズに移ることができたとしても多くのノイズを抱えてしまい、計測コストを積み増しすることになります。(Measure/計測の肥大化)

こうなってくると、計測難度も上がってきてしまうので後続のLearnにも支障が出てきます。色んなことがわかったんだけど、で、そもそも何がしたかったんだっけ?という次のアクションがわからなくなる現象です。

施策の実施目的や、提供するプロダクトで何を解決したいのかといった、到達したい理想状態が前段で描けていれば、何から検証していくべきかという順序性を明らかにすることができるはずなので、Aが失敗したら次はB(失敗時の方向転換)、ということが可能になります。が、目的定義と検証項目設計を怠るとこれができず露頭に迷います。

まとめ

きっと、そもそもはどんな経営者も(あるいはリーダーも)コスト感覚が優れているために効率的にコトを運ぼうということには前向きなのだと思います。

ですが、急いでやる(時間的に速く作業する)ことと、アジリティが実現されていること(走る距離を最短にする)を比べた時に、直感的に前者の効用が高そうに見えてしまうんだと思います。前者は後続の工程を犠牲にしたある一工程に対してのみの効用しかなく、後者はBuild(実装)・Measure(計測)・Learn(学習)の三工程に対して機能するものなのに、です。

繰り返し、急ぐことはアジリティと同義じゃないし、アジリティの本質的な要件でもない。そしてアジリティ追求の本質は検証方法の設計にある、という話でした。

なんか急がば回れってことわざってスゴイなと思いました。

以上です!

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