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ボードゲーム・アートワーク5つのコツ

ボードゲームのアートワークはデザイン勉強案件の宝庫だ
フォーマットを一からつくる
これはデザイナーにとってやりがいのある仕事なんだ

今日は俺の知ってるボードゲームのアートワーク知識
これをレクチャーしようと思う


中身=アート=ターゲット

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ミスマッチを減らす

かわいい見た目でイカツい戦争ゲーム
美少女パッケージなのに美少女はオマケ程度
そもそもこれ何ゲーなんだ?

蓋を開けてみたら別ゲーだった
それだけでマイナス

アートワークの役目は、適切な相手に届けることだ


パッケージに正しい情報を載せる

オモテ
・タイトル
・人数、時間、推奨年齢
・(難易度、作家名、発売年、通し番号)

推奨年齢は14歳以上にすると無難
ヨーロッパで14歳未満の表記をするには審査が必要だ

難易度の表記の例
Family □□□■□ Expert
あっさり □□□■□ じっくり
ワイワイ □□□■□ もくもく

通し番号は格好いい
ユーザにとってのコンプリート要素

ウラ
・キャッチコピー
・説明
・内容物
・カードサイズ
・(バーコード)
・メイドイン◯◯

カードサイズの表記はスリーブのため
ボードやタイルのゲームなら不要

バーコードは小さすぎると読めない
国際標準規格を調べておこう

生産国を明記していない商品は海外販売できない
通販も難しいので忘れずに入れよう

側面
・タイトル
・人数、時間、推奨年齢

ゲームは横にして棚に差し込む
側面に情報があればゲームを探すときに便利だ


tips キャラメル箱と化粧箱とでは印刷のズレが違う

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キャラメル箱は1枚の紙に印刷する
それを機械裁断するのだ
だからズレが少ない

化粧箱は別名・貼箱ともいう
表面の紙は人の手で貼っているのだ
だから多少はズレる

化粧箱を印刷する際はズレてもいいようにしよう
特に枠ありの箱はズレが目立つ


アイコンか、数字か

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カテゴリによってデザインを統一する

多くのゲームには数値が登場する
それらを見やすくしよう

特に数値が2~3ほど登場するゲーム

数値をカテゴリで分けて考える

例1:コスト パワー
例2:お金 勝利点


フォントを変える

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これは『ヴァンガード』のカードだ
カードの左上の数値と中央下の数値を見比べてほしい

左上の数値はサンセリフ体
中央下の数値はセリフ体

ゲームのメカニズム上、どちらも数字の桁を変えられない
このようにフォントが違う


桁について補足
あるカテゴリの数値が別のカテゴリの数値に干渉する場合は桁は統一する
たとえば、パワーの数値がライフの数値に干渉するような場合だ

そのように数値同士で干渉しないなら桁を変えて見やすく出来る
『ヴァンガード』で言うなら左下の4桁がそうだ
さりげなくイタリック体で、左上の数値とも差別化されている


フォントをアイコン化する

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これは『ドミニオン(初版)』のカードだ
右がお金カード、左が勝利点カードになる

一見すると同じフォントだ
しかし、まったく違って見える
それはアイコンと数字の位置が違うからだ

お金カードの数字はアイコンの上に置かれている
一方、勝利点カードの数字はアイコンの隣にある

なぜか?

お金は上限のある数値で、勝利点は上限のない数値だから

お金は購入のタイミング以外ではほとんど使われない
購入では参照する数値は多くて11で、多すぎても無駄にする
ある程度の上限が決まっているのだ

勝利点の数値はゲーム終了時に使われる
30点や60点にもなり、回によっては天井知らずだ

では、どうしてお金の方がアイコンの上に数字を置いているのか?
それはお金カードをアイコン化するためだ

アイコン化すると、数字を数えるのではなく、アイコンの個数を数える
アイコンは数字と違って個数を数えるので、数字より確認時間が長くなる
つまり、数え間違いが少なくなるのだ

ゲーム中も「3金2枚と2金1枚で8金あるから属州買います」と動く
これを視覚的に表現した形がアイコンの上に置いた数字なのだ

数字は読むもので、アイコンは数えるものである


密度でシルエットに変化を与えよう

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シルエットにした時の密度に差異を付ける

アイコンをたくさん使うゲームがある
もしそれが色を変えただけの●だけだったら相当つらい
ひと目でわからないアートワークは失敗だ

差の付け方は色を変えるだけじゃない
形を変えるのだ
しかし、違う形でも似て見えることがある

ためしにこれを3秒みてほしい

▼■▲●▲●▼◆■

はい、では「■」と「◆」は合わせて何個あった?

パッと答えられた方はすごい
でも普通はパッと答えられないと思う
ならばこれはどうだろうか

次はこれを3秒みてほしい

◯■〒∃Ⅷ◎△◆■

はい、では「■」と「◆」は合わせて何個あった?

今度はパッと答えられただろうか?
実は記号の総数と「■」と「◆」の場所は同じだ
どうしてパッと見てわかったのか

見やすさは密度で決まるからだ

密度差を付けると視認性が高まる
カードゲームでは、この考え方をアイコン以外にも使っていこう


イラストのシルエットを変えてみよう

カードゲームによく使われるのはイラストだ
では、イラストはどんな点でシルエットを変えるのだろうか

・ポーズ
・向き
・背景
・(性別)
・(デザイン)
・(主線)

ポーズと向きはセットで考えよう
ポーズ一つ取っても、アオリやフカンで見え方が変わる

このあたりは漫画が参考になる
同じページに描かれたキャラはあまり同じポーズと向きをしていないと思う
『ワンピース』のこのページはとても良い例だ

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背景の考え方は単純だ
シンプルなほど密度が小さく、複雑なほど密度が大きい

背景が複雑になるほど強いカードになるデザインをよく見かける
これは密度が大きいものほど注目されるからだ


性別、デザイン、主線はお好みで
デザインや主線はカードのカテゴリごとに統一すると良い
キャラカードは主線ありで、道具カードは主線なしみたいな


Zの法則

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人の視線は左上から右下に向かう

横書き世界の習慣だ

左上から右上
右上から左下
左下から右下

この視線の動きが「Zの法則」という
文字は左から右に読むので、右まで行った視点は習慣的に左下へ戻る
この法則で広告やWEBページはつくられている


他にも「Fの法則」がある
同じく視線の動きだ

左上から右上
左中央から右中央
左下

どこから見始めても良い場所で使われる目線だ
カードのみならFの法則で問題ないと思う


最後に「グーテンベルグ・ダイアグラム」がある
均等に配置された同種の情報を見るとき、人の視線は左上から右下方向へチラチラ横動きしながら遷移する
そのメカニズムを考慮したレイアウトだ

グーテンベルグという名のとおり、本で使われる手法だ
カードのみならあまり使わない


なぜ3つも挙げたのか
メディアに合わせたレイアウトをすることが大事だからだ

何枚も手札としてカードが必要なら、右下は必然的に見えなくなる
それを意識すれば重要な情報の配置場所は左上になるだろう
もし左利きに対応するなら左右対称に情報を配置しよう

あるいは場に出しっぱなしのカードなら全プレイヤーから見えた方が良い
情報を点対称的に表記してもいいかもしれない

そのコンポーネントがどういう状態で使われるのかを意識してアートワークをつくるのだ


tips カードの外枠は白がよい

カードは薄いので簡単に折り目がつく
時には印刷面が割れてしまうことも
このとき、カードの外枠を白にしておくと割れが目立たない

カードの見た目に共通するが、外枠なしのデザインもよい
そういうカードは場に出しっぱなしのカードになる
割れていようが関係ないからだ


「デザイナーさん、入稿までお願いします!」

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ある程度の知識がないと印刷の話がわからない

印刷の知識は専門的な勉強が必要だ
デザイナーは、大学、専門、独学どれでもある程度は勉強している

印刷所に依頼すると、時おり入稿ミスでデータが戻ってくる
どんなミスをしたか知識のないクライアントを通してデザイナーに伝えようとすると、伝達ミスが起こる

印刷所との連絡を含めてデザイナーに任せた方が、早いし安上がりだ
クライアントは印刷代さえ振り込めば良い

ちなみにだいたいデザイナーの料金の内訳はこうだ

作業代 1時間2000円~
やりとり 1往復1万円

メールのやりとりや打ち合わせが最も大変
いつしかデザイナーはやりとり込みで10万円から仕事を請けるようになったのだ(民明書房『黎明期のデザイナー史』)

クライアントはゲームを完成させてから仕様書を用意し、リテイク0レベルでデザイナーに依頼しよう
その方がデザイナーは安く見積もってくれる……かもしれない


tips 説明書のデザイン

アートワークを出来る人でも説明書のデザインが出来ない人は多い
これは説明書の作成には違った技能やソフトが必要になるからだ

Adobeのソフトで例えてみよう
イラスト:Photoshop
ロゴや数値、アイコン、枠:Illustrator
説明書:InDesign

……InDesign!?

書籍専門のレイアウトソフトだ
知識的にはノドとか小口とかノンブルとか……
とにかく本の知識が必要になってくる

まあ、PhotoshopやIllustratorでも説明書はつくれる
手っ取り早く済ませたいなら既存のゲームを参考にしよう


まとめ

・アートワークの役目は、適切な相手に届けること
・パッケージに正しい情報を載せる
・カテゴリによってデザインを統一する
・数字は読むもので、アイコンは数えるものである
・シルエットにした時の密度に差異を付ける
・シンプルなほど密度が小さく、複雑なほど密度が大きい
・人の視線は左上から右下に向かう
・メディアに合わせたレイアウトをすることが大事
・デザイナーに任せた方が、早いし安上がり


画像引用元
旧市街に流れ着くタイル「アズレージョ」から学ぶボードゲーム的思考 http://notebookers.jp/?p=40426
これ詐欺でしょって言いたくなる食品(パッケージ詐欺ほか) | ailovei https://ailovei.com/?p=75377
ドミニオンのインデックスに基本2版を追加しました。 http://ovelay.blog.jp/archives/1069127362.html
紙箱 貼箱のパックスエム https://www.packsm.jp/hari-bako/
WEBデザインの動線と導線 https://junonet.biz/web-design/web%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%8B%95%E7%B7%9A%E3%81%A8%E5%B0%8E%E7%B7%9A/