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#58【分析と演奏表現⑥】和声感のある演奏を探っていく練習方法の一例〜ブラームスの変奏曲を題材に〜

こんにちは、さいりえです。

今日のオンラインレッスンサロンのテーマは、「和声感のある演奏」について。

これまでも何度も取り上げているお話ですが、とくに「一見、和声がないように思える曲や部分でも和声的に弾く」というお話です。

「一見、和声がないような」…というのは、たとえばユニゾンや単旋律など、目に見える形で和音が目立っていないような曲や、音が多すぎてややこしい…!という部分など。

たとえば、バッハのインヴェンションの第2番の冒頭などもそうですね。

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(楽譜はIMSLPより引用。以下の楽譜も同様です)

今日はブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲 Op.35」のテーマを主に取り上げます。

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この曲を和声分析したり、動画内で練習、音出ししていきながら、

〈和声を感じて弾くことが難しい曲や部分も和声的に弾くためのポイント〉

というテーマで、お話と演奏していきます。

▼サンプル動画はこちらです▼

前半のテキスト部分はオンラインレッスンサロン会員の方以外もご覧いただけますので、あなたの練習のお供にぜひ一度ご覧ください。

【このnoteのポイント】
・和音を感じづらい曲も和声的に弾くためのポイントと練習方法の一例

【こんなお悩みに】
・和声分析が苦手
・和声的な演奏ってどういうことか、よくわからない
・シンプルな曲ならわかるけど、難しくなると和声を意識しづらい、する余裕がない
・ついつい「棒弾き」になりやすい

【このnoteの構成】
・テキスト
・動画解説(計20分の動画)
  ※有料部分の動画は vimeo のプライベートリンクを共有しています。

【例に取り上げている曲】
・ブラームス / パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 (主にテーマ部分)

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はじめに〜和声感のある演奏・ない演奏とは〜

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和声感のある演奏って、なんでしょう?

・色のある演奏
・美しい演奏

といった、表現面のイメージや、

・方向性のある演奏
・曲の構造がわかる演奏

などの理論的なイメージ、どちらが浮かぶでしょうか。

和声感とは、その両方を備えるものです。

演奏の背景に和声(ハーモニー)を感じられると、音楽は立体感を増し、曲に生命がふきこまれます。


さて、このパガニーニのカプリース第24番の主題ですが、

スクリーンショット 2020-08-03 10.37.49

1拍目にちゃんと分散和音があるので、本来は和声のわかりやすい曲ではあります。

ですが弾きにくいこともあって、ともすれば「非和声的な演奏」になりやすいんですよね…

さらに前打音を除いて練習したりすると、ますます和音がわからなくなってしまいます。

分散和音が荒くなる
ユニゾンが硬くなる、ばらつく、調和しない
ポジションの移動が難しいので、余裕がない
・ゆっくり丁寧に練習してみたけど、速くなるとただ弾いてるだけになる…

→和音を感じる余裕がない!

と、問題が生じてきます。

そんな方のために、考え方や練習方法を具体的にご紹介していきます。

まず分析する

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和声的に弾くために、「この和音って何?」がわからないと進められないので、まずは分析していきます。

※とは言え、複雑になってくると一つ一つが教科書通りの進行をするわけではありませんので、すべての曲を細かく和声分析しましょう!というわけではありません。この曲は難曲ですが構造は比較的わかりやすいので、題材に取り上げ、ここで分析していきます。

分析のポイントとしては、

・非和声音を見分ける
・転調や借用を見きわめる
・和声進行や機能も見ていく

などがポイントになってきます。

後半の動画内で、実際に分析していきます。


和声的な演奏のポイントや練習方法の例

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それでは、和声分析ができたら、実際の演奏にどう生かしていくか?というお話です。

このとき、2つのポイントがあります。それは

1. 各和音【単独】の色合いやイメージ、性格

2.【 複数の和音】の関係性や機能性

です。

つまり、【ドミソの和音そのもの】について追求していくことと、【ドミソ→シレソの和音の繋がり】について追求していくこと、の2点です。

とは言え、関係性によって和音の性格も変わるので、この2点はまったく別のことではありません。

実際にこの後弾いている動画でも、どちらも行き来しながらお話しています。

ただ、何か迷ってしまったときや、どうすれば良いのかわからないときに、この【1】か【2】どちらがいま問題なのか?どちらに重点を置いて音を探してみようか?と考えてみると、少しクリアになるかもしれません。

ここから、【1】と【2】に分けてもう少しくわしく説明します。

1. 各和音単独の色合いやイメージ、性格

まず、和音そのものが美しく響くことです。

たとえば

・オクターブの調和

・完全5度の響き(もしくはそれ以外の音程)

・第3音の響きやバランス(長調と短調で違う)

・展開形や音の配置による、手のポジションやタッチの違い

・調性の中での、各和音の響き

などを、丁寧に聴きながら探っていきます。

「これでOK」と思わずに、どんどんあなたにとっての新しい響きや調和を探していくことが大事です。

ピアノという楽器は奥が深く、「このくらいしか出ない」と思っていると本当にそれ以上の音が出せなくて、「もっと素敵な音が出るはず」と、イメージをもって探し続けていると、いろんな音が見つかります(もちろんそのための知識や技術も必要です)。

わたしもまだまだ、探しています。


2. 複数の和音の関係性・機能性

つぎに、ある和音が前後の和音とどのような関係性になっているか?という点です。

これは、クラシック音楽では「和音の機能」とも言って、とてもとても重要な要素です。

その上で

・その場所での和音の機能を見きわめる(T-S-D-Tなど)

・カデンツの部分を見つける

・緊張→弛緩(解決)などの関係性を見る

・転調、借用などの部分を見つける

・和声や音楽の進行の特徴的な動きを知る(導音や主音に向かう、など)

など、ここには書ききれないほどのいろいろな要素が入ってきます。

動画でも、一部ではありますが具体的に解説しながら演奏していますので御参考になさってください。


練習方法の一例

手元

では、具体的な練習方法の流れの一例をご紹介します。

①まずは和音だけで弾いていく

コラールなど、「ザ・和音!」という形でない曲の場合は、まずは

・ざっくりと和音だけにして、流れをもって弾いてみる(要約弾きとわたしは呼んでいます)
・片手で和音を弾いて、もう一方の手でメロディを弾く
・個々の和音を、ト〜〜〜〜〜〜〜ンと伸ばして、響きを確かめる

など、和音の形だけで音にしていき、響きや個性、役割を確認していくのがオススメです。

そのとき、上でお話ししたように、【1】単独の響きと、【2】前後の和音との関係性の2つの面で作っていきます。

さらに、和音の方向性や、グループ分け(和声的なフレージング)も感じて考えていきます。


②実際の曲の中で、和音の役割を生かして落とし込んでいく

それから実際の楽譜どおりに弾いていくのですが、ユニゾンや単旋律なども和音を感じずに弾くのではなく、ひとつひとつの音の要素を丁寧に考えて聴いて、出していきます。

実際に楽譜の通りに弾くと、他の要素もたくさん入ってきますので、和音や和声だけのことを考えれば良い…わけではなくなります。

でも、和声をついつい忘れちゃいそうになる…という瞬間にも、背景にある和声(ハーモニー)を感じて、それが自然とにじみ出るように、丁寧に練習していきます。

(※補足)他の要素…というのは、たとえば
・非和声音
・メロディの音形や音程、リズム
・休符
・複数の楽器、パートの存在
・曲の中の役割の違い(たとえば主題と推移部との違いなど)
などのことです。

わたしの場合、①と②を練習の中で組み合わせ、分解しながら交互に確かめつつやっていきます。

(動画の中で実際にこの流れでやってみています)

ここまでを実際の動画で解説します

それでは、ここまでの内容を動画でもお話、演奏していきます。

動画はつぎの2本です。

①本日の概要と、和声分析(6分)
②和声的に演奏するためのポイントと練習方法の一例(14分)

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