AI開発に業務フローはどう役に立つのか
こんにちは。アカチセ代表の齋藤です。
アカチセでは「アセを、カチに。」をパーパスに、現場の知見・ノウハウを活かした生成AIx業務フロークラウド「ゲキカル」を提供しています。
1. AIと業務フローの関わり
今日のテーマはAIと業務フローです。
一見遠そうな2つのテーマですが、今後は切り離せない存在になっていきます。
5年ほど前からAIブームが到来し、多くのPoCが実施されました。
OCRなど実用化に至ったものもあれば、PoC倒れになったケースも多くあるようです。
続いて生成AIが誕生。chatGPT, Claude, Geminiなど、チャット形式の汎用的AIとして、個人はもちろん、多くの企業においても利用されています。
まずはMicrosft等の既存ツールを中心にCopliotとして支援に入り、FAQ系のチャットボットサービスから普及している印象です。
新しいAI技術がどんどん進化するなか、PoCを成功に導き、自社サービスの価値をあげるにはどうしたらいいでしょうか?
我々は「業務フロー」が、今後の重要な切り口だと思っています。
2. 生成AIと業務フロー
生成AIの活用イメージと言えば、どのようなものが思い浮かぶでしょうか?自社のデータを読み取ってなんでも回答をしてくれるチャットボットというところでしょうか。
ただ、この活用だとカスタマーサポートの補助を今までのルールベースと大した変化がないのではないでしょうか。
マッキンゼーのレポートでは、生成AIを活用したサービスとしてこのようなケースを例として上げています。
こちらは、航空券の予約変更プロセスです。
上記にあるように、業務フロー(サービスブループリント)で表記されています。
それぞれのプロセスで、顧客が何をしたいか、その時に何の情報を参照するかが記載されています。
実際に生成AIの設計はこのようになります。
ノーコードで生成AIのワークフロー設計ができるDifyの画面も見てみましょう。
XXをして、YYをして、ZZをするというようなプロセスが記載されています。ほかのワークフロー系のサービスも基本的にこのような設計が多いかと思います。
今回は生成AIに絞ってお話しましたが、LLM以外のAIでも同様のプロセス整理をする事が重要です。
3. 業務フローを無視したときの3つの課題
多くの生成AIサービスが業務フローをもとにした設計をしている事に触れました。
ではなぜ、そのような事をするのでしょうか。AIではなく、新しい人に一部業務を引き渡すことを考えてもらえるとわかりやすいと思います。
すごく優秀で何でもできる人がチームに加わったとしても、何も教えず、貢献して!とだけいって価値を出してもらうのは困難です。
顧客対応の例で言えば、会社としてサービスを提供した結果何を達成したいかを知り、サービス体験全体を知り、自らのプロセスの役割を知る、その上で顧客との双方向対話を通じ各人のニーズにあわせるプロセスが必要ではないでしょうか。
また、BPO企業にお願いする際には業務要件を整理し、業務内容や新しい分担を明確にしてから依頼するはずです。これをAIに依頼する場合は、なおざりにしてしまうケースが多いように思います。
業務フローが不在になることで、陥りがちな3つの課題を記載します。
A. 精度評価ができない
AIは生成AI含めて、なにかの基準で精度を評価して、それを改善していくためのアクション(チューニング、モデル選定等)をしていく事が多いのですが、その精度の評価の基準が安定しないことが多いです。
例えば、わかりやすい数量予測のケースを想定してみましょう。
「10日後の需要予測をして」という指示ひとつとっても、具体的に聞いてみると評価基準が人によってバラバラなケースがあります。例えば、日数の定義だけいっても
ちょうど10日後の数量
明日から10日後の平均
明日から20日後の平均(10日後は中間だからいっただけ)
といった事を言えますし、
10%以上のズレは絶対に出してはいけない
直近の数字を当てる事が大事だから、1日後の精度をより優先してほしい
実は、同じ商品でも内容が異なり、それぞれの数量の予測もしてほしい
などなど
なんでも当てられるスーパーマンのようなAIを期待されるケースが多いですが、評価基準が異なると取るべき内容も異なります
生成AIになると定性的な内容になるので、さらに評価手法があり、この精度評価だけでも様々な研究がされています。
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業務フローを介在させることで、この精度評価の前提・コンテキストを把握することができます。
開発者にとって、要件によって振り回されるより、前提となる業務全体と期待される範囲がわかればこれをベースに最適な評価軸を提案することができます。
実は同じ依頼者が複数の別の目的を1つのAIで解決しようとしていたということもあるので、この整理は非常に重要です。
B. 実用できるかわからない
AIによって結果を出すにはインプットが必要です。
一時期、chatGPTに自分の名前をきいて変な回答が出たとネタにするような投稿が多くありましたが、当たり前で、道を歩いている見知らぬ人に対して自分は誰か急に聞くようなものです。
汎用AIに含まれない個別情報を渡すために、RAGで情報を渡して回答精度をあげるという事がよく行われています。
AIでの結果を出すのに、事前情報をとして何を用意できるか、を定義する上でも業務フローは有用です。
既存のフローを整理することで、今まで取得できていたデータがなにか、それをどのように利用していたか把握することができます。
例えば、顧客が誰でどのような属性であるかもそうですし、顧客のニーズや、どの程度の緊急度なのかなど、定性情報も人間がやる場合は取得している可能性があります。
(A.精度評価で一義に評価基準を決めれないのは個々の顧客・タイミングにあせて、適切な予測内容がかわるからかもしれません)
AIが実施する場合、人間が解析しきれないデータをインプットとして加える事もあります。例えば、外部の統計データや衛星データなどを元に、人間ではできなかった分析をします。
ただ、このときも、どのタイミングでどのようにデータを取得するか設計する必要があります。
C. 人間との相互フィードバックができない
AIと人間の相互フィードバック、Human in the loopを作るうえでも業務フローが使えます。
最初から、AIが100点の答えを作るのではなく、60点の答えを出して、それを人間がフィードバックすることでで使えるクオリティにし、さらにそのAI自体の改善に役立てるものです。
これは昔からある手法で、リコメンドエンジン(Amazonなど)、売価推薦(メルカリなど)で使われています。
ただ、BtoBだと調整の幅が多く、意思をもって設計に組み込まないと実現が難しい印象があります。
前職(ラクスル)の物流マッチングサービス「ハコベル」では、価格設定の支援はもちろんの事、スマート依頼という形でプラットフォーム上のプレイヤーの反応から設定価格を調整していました。
いわゆるダイナミックプライシングですが、需要にあわせて大きく変動させれば良いというものではなく、業界商習慣・運用にあわせて利用されて、指示されるような方法を各産業ごとに設計する必要があります。
どこでフィードバックを得るかの設計、そして、デジタルで実施する場合フィードバックをするUI・UXの設計が重要です。その設計に業務フローが活用できます。
4. まとめ
以上、AI開発に業務フローはどう役に立つのか、を記載してきました。
AI時代にますます業務フローが使われる理由がお伝えできたのではないでしょうか。
AIを含む新しい技術で様々なプロセス設計が可能になり、自由度が広がりました。その一方、検討すべきことが増え、社内でも合意を得ることが難しくなってきたのではないでしょうか。
弊社のゲキカルは、AIにより業務フロー作成・管理を軽くすることで、新しいサービス設計を支援します。
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