マガジンのカバー画像

特に何も起こらない話

9
私小説風の短いやつです。特に何も起こりません。
運営しているクリエイター

記事一覧

掌外沿を黒く塗れ

ボールペンを持つ手を止めてはじめて、ラジオの深夜放送が終わり、スピーカーからは微かなノイ…

SaiBoU
10か月前
4

短編【あれ以上のもの】

二九歳の今年、俺は不動産会社を解雇された。 新卒採用で営業職として七年間勤めた。会社は二…

SaiBoU
1年前
3

短編小説【大御所とはいえ、その攻め方は難しい】

七五歳にして三〇回目の来日。 その大御所アーティストは何度も武道館でコンサートを行ってき…

SaiBoU
1年前
4

短編【どこにいても素晴らしい、美しい】

日向にいれば半袖でじっとしていも寒くない季節になった。 桜は散ってしまったが、木々に緑の…

SaiBoU
1年前
1

短編【幸せになりたいだけなのに】

 なぜわたしがみんなに叩かれないといけないのか。  SNSにはわたしの悪口ばっかり。まったく…

SaiBoU
1年前
1

短編【自分の匂いを嗅ぎ続けた日の話】

 窓の外が暗くなってきた。日没はまだのはず。雨だ。急いで洗濯物を取り込む。  手に触れる…

SaiBoU
1年前
1

白骨の取り扱いに関する独白

 ほんとにあの子の骨をうちに持って帰らなくちゃいけないのかね。  まだ五〇歳だったっていうのに。なんでまたあんな死に方をしたんだ。あんな死に方じゃあこの世に未練もあるだろうし。そんなお骨を四十九日まで一人で暮らしている家に置いておくのは嫌だよ。  半年前に八十六歳で主人が死んだときだってお骨を持って帰るの億劫だった。だから分骨用の小さな骨壷にしてもらったんだ。寿命だったと納得できるくらいの年齢で死んだ人間のお骨だって気味悪かったのに、あんな死に方をした人間のお骨なんて、尚

短編【砂利道の音】

 八〇歳になった母はどれだけ説得しても運転免許の返納に応じようとはしなかった。高齢者が運…

SaiBoU
1年前
1

短編【熱いシャワーを浴びた話】

目が覚めて時計を見ると、いつも布団から出る時間の6時を20分ほど過ぎていた。 胃がむかついて…

SaiBoU
1年前
4