
アロマクエスト|(3)|異変−3
ある化粧品メーカーの研究室。
部屋の中で、ひとりの男が頭を抱えていた。
彼の職業は、調香師。
何百種類にもおよぶ香料を組み合わせ、さまざまな香りを作り出すのが仕事だ。
部屋の中には、数多くの香料が並べられている作業台がある。
香料がまるで鍵盤のように並んでいるので、オルガン台という。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
不思議なもので、香りと音楽には共通する言葉がある。
どちらも目で見ることができず、時間とともに変化していくという共通点があるからだろうか。
たとえば「ノート(Note)」という言葉は、その香りがどのようなものなのかを表す言葉でもあり、音符のことをあらわす言葉でもある。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝、いつものように出勤し、依頼されていた香りの調合を始めようとした。
しかし、目の前にある香料すべての香りがしない。
「い、いったい、どうなっているんだ…」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
後からわかったことだが、世界各地で同じ現象が起きていた。
この日、世界のあらゆる場所で「香り」が消えたのである。
それは、これから起こる出来事の、ほんの前触れに過ぎなかった。
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