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テイスティングしたのは、バロン・ミカエラのシェリー8種。

#先日の余談

普段、「シェリー酒」を嗜む機会はほとんどないんだけれど、スペイン料理に関わることが多いこともあって、近くで開催されていた「シェリーの飲み比べ 〜Tasting Party〜」に飛び込みで参加した。

シェリーはワインである。

「酒精強化」という言葉があるが、英語にすると、Fortified とされ、一般的なワインよりも強化されたものにはなるけれど、単純に酒精(アルコール)が足されたワインという理解だけでは説明不足だと再確認できたので、セミナーで見聞きしたことや、その資料を元にまとめ直しておく。

講師は「BAR QUINTA」の萬川さん。
インポーターの「株式会社キムラ」さんがサポートされており、テイスティングしたシェリーのプロモーションも兼ねての実施。


今回、選ばれたボデガ(醸造所)は「バロン」

バロン(Barón)
スペイン・アンダルシア地方、サン・ルーカル・デ・バラメダにあるボデガ(醸造所)で、原産地呼称制度は DO ヘレス・ケレス・シェリー および DO マンサニージャ=サンルーカル・デ・バラメダ 。10世代、350年前からの歴史があり、今も家族経営で自分たちが納得できるシェリー酒造りをされている。(DOとは:Denominación de origen)

シェリーはスペイン語で「Jerez(Xerez)」と表記して「ヘレス」と発音する。英語表記が「Sherry」となり、その音が日本で認知が広まっている。原産地呼称制度によって管理されており、その産地はスペイン南部のアンダルシア地方、ジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸とも近く様々な交易にて発展した地域である。イベリア半島の歴史にはイスラム圏の影響も受けた時代もあって、この地が「Sherish」と呼ばれた時代もあった。

アンダルシア地方では、温暖な気候から安定してブドウが生産できたため、ヴィンテージという価値付けよりも効率的なワインの生産を目指した。その中で、継ぎ足しながら熟成させることで、大量で均一した製品を生み出す仕組み「ソレラシステム」が生まれたとされる。

その歴史はヨーロッパのワイン史と重ねられるほど古く、スペインは多くのワインをイギリスに輸出しており、ヘレス産ワイン(Vino de Jerez)がシェリーとして確立していくようになる。

シェリーの3大産地
・サンルーカル・デ・バラメダ
・ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ
・エル・プエルト・デ・サンタ・マリア
ブドウは3種のみ
・パロミノ
・モスカテル
・ペドロ・ヒメネス

熟成工程では、ブドウの糖分が酵母菌によってアルコール発酵していく。その際、シェリーは樽の中に空気(40%程度)の層を持たせて酸化熟成を行う。シェリーの表面にはフロールと呼ばれる酵母の膜があり、シェリーと空気を遮断し熟成をコントロールしている。

酒精強化の工程、同じくブドウで造られる蒸留酒(ブランデー)を加えて、アルコールを高め発酵を止めて調整する。ブランデーはスペイン語ではAguardiente と呼び、燃える(Ardiente)と水(Agua)が合わさった言葉。


テイスティングしたのは、バロン・ミカエラの8種。

下記の上段は辛口、下段にいくほど甘い(パロ・コルタドは中辛口)
アルコール度数は15〜17度ぐらい(パロ・コルタドは19度)

1)マンサニージャ
・ブドウ品種:パロミノ100%
・熟成期間:3〜4年
・辛口、すっきりとした味わい。
・酸化熟成していない。
・一般的な白ワインに近い色合い
サンルーカル・デ・バラメダで作られたシェリーのみとなる。
つまり「マンサニージャ」と「フィノ」の違いは産地が異なるということ。マンサニージャは風土が異なることでフロールの厚みにも差が生じるようで、継ぎ足しの分量にも影響して味わいに違いが生まれるとか... (飲み比べてわかるのか♪)

2)アモンティリャード
・ブドウ品種:パロミノ100%
・熟成期間:4〜5年
・コクがある辛口、酸化熟成工程が深い。
・色味に琥珀色が少し掛かってくる。

3)オロロソ
・ブドウ品種:パロミノ100%
・熟成期間:4〜5年
・まろやかな辛口、酸化熟成工程を少し行う。
・色味は深い琥珀色。

4)ミディアム
・ブドウ品種:パロミノ90%、ペドロ・ヒメネス10%
・熟成期間:4〜5年
・中甘口
ミディアムとクリームはその名が英語であることもあって、製造工程は他と異なっている。アモンティリャードをベースにペドロ・ヒメネスとのブレンド(イギリス人の趣向に合わせて生産された品のひとつ)

5)クリーム
・ブドウ品種:パロミノ85%、ペドロ・ヒメネス15%
・熟成期間:4〜5年
・中甘口
ミディアムとクリームはその名が英語であることもあって、製造工程は他と異なっている。オロロソをベースにペドロ・ヒメネスとのブレンド(イギリス人の趣向に合わせて生産された品のひとつ)

6)モスカレル
・ブドウ品種:モスカレル100%
・熟成期間:4〜5年
・上品でバランスの良い甘口。マスカットを感じる
・色味は濃いマホガニー色。
モスカテルの語源に「ムスク(香り)」を意味する言葉がある。マスカットも言葉のルーツは同じかな。

7)ペドロ・ヒメネス
・ブドウ品種:ペドロ・ヒメネス100%
・熟成期間:4〜5年
・非常に甘口、バニラアイスにトッピングしてスイーツとしても楽しめる。

8)パロ・コルタド 25年
・ブドウ品種:パロミノ・フィノ100%
・熟成期間:25年
・中辛口
アモンティリャードやオロロソにも似ているが、僕の印象は繊細で上品なテイスト。


シェリーセミナーを終えてからの雑感

テイスティングでは、上記の全種を飲み比べたのだけれど、始めはマンサニージャアモンティリャードがすっきり旨いと感じていたが、酔いも深まっていくとモスカレルペドロ・ヒメネスの甘みの刺激がちょうど良くなっていった。ミディアムクリームは人の好みだろうが、僕は選ばない。同じくパロ・コルタドは上品過ぎるようで、僕の好みではない。

テイスティングの後、グラスで飲み直したのはモスカレル

モスカレルやペドロ・ヒメネスの甘みは、ブドウを天日干ししてレーズンとなった状態で搾汁される伝統的な手法で造られている。(そりゃ甘いわけだわ♪)

醸造所において、ソレラシステムで分類された樽からシェリーの状態をチェックする道具はべネンシアと呼ばれ、その職人はベネンシアドールと呼ばれる。たまにバーやレストランでシェリーを注文すると、ベネンシアを使ったパフォーマンスを観ることができる。

数年前、女性のバーテンダーによるベネンシアを使う所作が美しかったのが、シェリーを気にするキッカケにはなったんだけれど、今回のセミナーを通して、シェリーの奥深さ・豊かさを知ると、そんなパフォーマンスはなくても良いかと思えるようになってしまった♪...。


シェリーとのペアリング

ちなみに今回、シェリーセミナーが行われた会場は「パエリア&グリル バラッカ」。セミナー後半はシェリーに合わせた様々な料理をいただいた。料理を詳しく聞く時間がなかったんだけれど、アンダルシア地方の料理がメインだろうかねー?


そして余談

振り返ると僕が20代の頃、「TIO PEPE」と呼ばれるお酒を飲む機会が多かった。もっともメジャーなシェリー酒らしい。当時はシェリー酒が何であるかわかっていなかったし、バーの棚(常温)から出してもらって、オンザロックでいただいていた。同じように「CINZANO(ベルモット)」も同じように飲んでいたのを思い出した。

講師をされた「BAR QUINTA」の萬川さんによると、ご自身のお店では冬になると、熱燗で提供することもあるという。確かにシェリー酒は紹興酒っぽい雰囲気もあるわぁ〜♪

#シェリー #ワイン #テイスティング #セミナー #スペイン  

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